心機一転の高校生活最初の日、高尾和成は色々な意味で興味深い人物と出会った。その人物とは、言うまでもなく黒子テツヤのことである。
淡い空色のショートヘアに、同色の大きな瞳、シミ一つなさげな白い肌。身長百六十八センチのスレンダーな体型、バストはCカップ。なぜバストサイズまで知っているかと言えば、冗談んで聞いたらあっさり答えられてしまったから。顔色一つ変えず淡々と答えた黒子は、随分と男前な性格のようだ。だが、その直後に緑間から説教を喰らっていた姿は記憶に新しい。
そんな黒子は中学までは男の子、高校からは女の子になったらしい。事実は小説より奇なりとはよく言ったもの、いまだに信じられない気もするが本当だそうだ。中学時代は男子バスケ部に居たと言うからまた驚かされる、しかもレギュラーで。だというのにパス以外のプレイは並み以下。聞けば聞くほど黒子テツヤとは、高尾にとって摩訶不思議な存在である。
気になること、知りたいことは山ほどある。それらを謎のままにせず、とにかくまずは聞いてみようと思い即実行に移すのは。ある意味、高尾の良いところかもしれない。答えてくれるかどうかは分からないけれど。
高尾和成の疑問
「なあ、テッちゃん」
「何ですか、高尾くん」
「中学時代に部活で男子に交じって着替えてたってマジ?」
「マジですってば。何度も言いますが、その頃のボクは男だったんです」
「それは気持ちの上でであって、実際は女の子だろ? テッちゃんはともかく、周りが気づかねーてどゆこと?」
「ボクが一軍に上がってからは、大抵カラフルなメンバーと着替える時間がかぶってたんですよ」
「うん?」
「緑間くんと黄瀬くんは、あれで考え方は常識人なんです。なので男バスに居るのだから、男と信じて疑うことはしません」
「ブハッ、分かる気がする」
「紫原くんはお菓子に夢中で、人を気にすることがなかったですね」
「菓子って、お子ちゃまかっ」
「青峰くんは、女性イコール巨乳ですから。当時ぺったんこだったボクを、女と疑問に思うことはありませんでした」
「ブフォオオオオオオオオ!? んじゃ、今のテッちゃん見たら、喜ぶんじゃね?」
「イエイエ、彼の巨乳基準はDカップからです」
「ギャハハハ、どんだけっ」
「唯一、気付いていたように思うのは赤司くんですね。彼とは滅多に着替えで一緒になることはありませんでしたし」
「おいぃいいいい!! ちょ、気付いてたんなら何とかしようと思わんかったのか? そいつ」
「ボク自身が男のつもりでしたしねぇ……。それに紛れもなく『男子生徒』でしたし。多分、面倒臭かったんだと思います」
「おい、キセキぃいいいいいいいいいいいい!?」
「煩いです」
「なあ、テッちゃん」
「……何ですか」
「宮地さん兄弟を名前呼びなんだな、オレも呼んでいいのよ?」
「エンリョシマス。宮地家とはボクの家庭教師をお願いした縁で、家族ぐるみのお付き合いがあるんです。なので名字呼びだとややこしいんですよ」
「なるほど。しっかしまー、あの宮地さんがよく家庭教師を引き受けたよなぁ」
「そうなんですよね。当時の清志さんは丁度レギュラーになったかならないかって頃でしたので、最初は忙しくてそれどころじゃないと断ったそうです」
「あー、だろうね。でも引き受けたんだ?」
「どこの家も母は強しでして。両家の『母』がタッグを組んだ結果らしいですよ」
「ブフォ、それは凄い。で、どうだった?」
「え?」
「宮地先生はどんな感じだった?」
「それはもう……。とても熱心に、懇切丁寧にご指導頂きました」
「ちょっ、テッちゃんてば。顔色が青くなってるー! 冷や汗まで!?」
「キノセイデス」
「なあ、テッちゃん」
「またですかっ」
「テッちゃんのストバス仲間って、やっぱ男?」
「そうですよ、宮地ご兄弟とかです」
「あ、なるほど。他は?」
「他校の友人が数名ですね」
「えっ、それてキセキの……、じゃねーよな?」
「えぇ、違います」
「オレらと同級? オレも知ってたりする?」
「一人は中学では部活に入ってなかったらしいですし、他はバスケを始めたのは高校からだそうで。知らないと思います」
「へー、あれ? んじゃ今はバスケ部なんだ? そいつらも」
「はい」
「ふーん。強い?」
「さあ、どうでしょう」
「うへ、教えてくれても良いじゃん! ケチー」
「そのうち会えると思いますよ? 同じ都内ですから」
「つーか、オレや真ちゃんはストバスに誘ってくんねーの?」
「そろそろ授業が始まりますね」
「ブハッ! おもいっきりスルーされた!!」
どこまで本当かは知らないが、聞けば答えてくれるのが楽しくて。今日も今日とて自身の疑問を解消すべく、黒子に質問の嵐を浴びせる高尾であった。
「緑間くん!」
「何なのだよ、黒子」
「高尾くんが煩いです、何とかしてください」
「なぜオレにフルのだよ!」
「貴重な君の友人でしょう! 責任もって回収してくださいっ」
「人に押し付けるんじゃねーのだよ!!」