石が流れて木の葉が沈む?


「マネージャー部、なんて初めて聞きました」
「だろうねぇ」





石が流れて木の葉が沈む?






 入学式から数日。帝光と同じ匂いのする洛山バスケ部に、関わる気の全くさっぱりこれっぽっちもなかった黒子テツヤであるが。諸事情により兄共々関わることとなってしまった。諸事情とは、ぶっちゃけ賄賂に釣られたとも言う。
 黒子がゲットした賄賂は一年分、兄が洛山に居るのも後一年。なので一年間だけは、赤司の言いだしたことに渋々協力することに。女生徒として入学したので選手にはなれない、当然マネージャーということになるのだが。そこで洛山のぶっ飛んだシステムを知ることになった。
 即ち、運動部のみならず文化部も交え総括する『マネージャー部』なるものが存在するらしい。とはいえ、入部届けはそれぞれ希望する部に提出するのだが。ぞれが受理されると同時に、マネージャー部にも在籍することになるようだ。
 基本的には希望の部でマネージャー業に勤しむのだが、本人の資質や向き不向きも鑑み。向いていると思われる部へ回されたり、掛け持ちしたりと指示されることもあるそうな。
 黒子は入部条件として、赤司の希望通り兄にミスディレクションとパス技術の伝授はするが、それ以外に関わる気はないことを認めさせている。だが一応マネージャー扱いになるため、マネージャー部への在籍も致し方ないということで。ただいま男バスのチーフマネである三年の樋口正太より、様々な説明を受けている真っ最中だったりする。


「しっかし、黛にこんな可愛い妹が居たとは!」
「去年まで弟だったんですがね」
「えっ!?」
「まあ、お気になさらず。それより、兄と親しいんですか?」
「アイツとはずっと寮で同室だからねー」
「それは、ご愁傷様です。あの変態と一緒ではさぞご苦労なことでしょう」
「ブッ、断定!? ま、否定はしない。面白いから良いけど」
「サヨウデスカ」
「それより君は、赤司主将と同中だったんだって?」
「不本意ながらその通りです」
「不本意って、ホントに歯に衣着せないねぇ」
「それはそうと、赤司くんが幾ら厨二病とはいえ入学した途端に主将とはどういうことですか?」
「あぁ、春休みと言うか。中三の三学期はほとんどこっちに居て、部活に参加してたからね。ほんの二〜三ヶ月で誰も赤司が主将ってことに違和感なくなっちゃった」
「……不甲斐ない」
「ブハッ、返す言葉がないっ」
「それで退部者が続出ですか?」
「うん、そう。特に三年がね。二年に無冠の五将が三人、そんでキセキの世代の赤司がやって来る。チート四人でスタメン枠は確定だし、レギュラーになれたとしてもあの四人と一緒に試合に出されるのも根性いるでしょ?」
「滅べと言いたくなります」
「ホントにスパッと言うねぇ。まあ、そんな訳で。黛もそうだったけど、三年はこぞって受験を盾に辞めちゃった」
「兄は逃げ損ねましたけどね」
「ね。赤司様に目をつけられるとは……。ざまぁ!! とか言っちゃったりして」
「樋口先輩も、良い性格なご様子で」
「ありがとう。よく言われる」


「ところで、具体的にマネージャー部とはどんなことをするんですか?」
「あぁ、その話しだったっけ。とりあえず全部活のマネージャーを把握して、その中からマネージメントやらトレーナーやらに向いた人材を強化するのが目的。かな?」
「はぁ……?」
「マネージャー業って言っても、内容は色々あるでしょ? 文化系で言えばスケジュール管理や、展示やら発表会やらの会場確保とか。運動部はお馴染みな内容にプラスして、情報収集や選手の体調管理も入るかな」
「なるほど、そういう意味でのマネージャーですか」
「そそ。あとマネージャー部の方で月に数回プロを招いて講演会をやったりね」
「プロ、ですか?」
「うん。マネージメントのプロとか、スポーツカウンセリングやトレーナーとか」
「何考えてるんですかね? 洛山は」
「ホントにねぇ、高校生のするこっちゃないよね。でもそれを切っ掛けに進路を決めるヤツも居るから、一概に良い悪いを決めらんないかな」
「幾ら私立校といってもやり過ぎと言いますか。NBAも真っ青になりそうなスポーツジム紛いの設備とか、コーチも教員ではなくてプロの方ですよね? どんだけ資金をつぎ込んでるんでしょうか」
「まあ、その分恐ろしくシビアだけどね。好成績を残す部にはそれこそ湯水のように金をつぎ込むけど、ダメなところは情け容赦なくスッパリ切り捨てるから。実際、去年全国へ行けなかった部が二つ、今年に入って廃部にされてる」
「え゛っ!? マジですかっ」
「マジもマジ。凄いのは去年一年だけの成績でそうなったこと。一昨年は全国行けててもお構いなし」
「……学校と言う気がしなくなってきました」
「だよねー。まあ、それでもこの学校を選んで来るのは生徒本人だし。嫌なら他へ行けって感じが凄い」
「ボクは是非とも他へ行きたかったんですがねぇ……」
「ブッ、そーなの? まあ、あんまし深く考えないで」
「廃部になったところは、もう復活できないんですか?」
「そんなことないよ? サッカー部なんてこれまで三回ぐらい廃部になってる。グラウンドの使用権や部費が無きに等しくなるけど、全く活動できなくなる訳じゃないから」
「頑張って結果を残せば、また昇格されるということですか?」
「そーいうこと」
「何だかもう、聞いてるだけで疲れてきました」
「そんなこと言わないで! 女子マネキタコレー!! て、ウチの野郎共が浮かれてるからっ」
「兄に教えるだけで、男バスのマネ業をする気はないんですけど」
「えー、そんなこと言わないで。特に赤司様を重点的になんとかして」
「もっと嫌です」
「まあまあ、そー言わずに」
「嫌です」
「よいではないか、よいではないか」
「……あの変態と同室でやれるだけはありますね、樋口先輩」
「そう? 褒められると照れる」
「褒めてません」


 あの兄にして、この友ありなのか。はたまたこの洛山にして、この生徒ありなのか。極端な校風のところで、普通にやって行くにはどこかしら突き抜けた性格でなければ勤まらないのかも知れない。自分では到底無理、なんて黒子は胸中で溜息をついたりして。
 だがしかし、傍から見れば黒子も十分に図太いと思われているのだが。幸か不幸か本人だけが気づいていなかったりする。