東京にて


「と、いう訳で。よろしくお願いします、火神くん」
「意味わかんねーよっ!?」


 兄にメールを送った頃には、朝一で東京行きの列車に乗っていた黒子。やって来たのは誠凛バスケ部のエース、火神大我の住むマンション。京都と東京、全く違う場所に居ながらなぜこの二人が知り合いかと言えば。話しは去年の夏に遡る。
 全中終了直後の実は女でしたショックで大混乱していた黒子、家に居ればお洒落だなんだと母親が煩く。逃げ出すために選んだのは、バスケ馬鹿を証明するものだった。
 今思えば図書館や本屋巡りでも良かったものを、なぜに見たくもないと封印したはずのバスケットボールやバッシュを引っ張り出したやら。それはもう、混乱していたせいで本能が出たと言う他ない。
 そんなこんなでフラフラとやって来た、とある公園のストバス場。そこで不機嫌そうに、一人でバスケをしていたのが火神であった。その後なんやかやと夏休み中は毎日のように二人でバスケをし、少しずつ様々な話しもするようになった。具体的にはカラフルな連中のこととか、火神がなぜふってくされていたかとか。
 とどのつまり救いようのないバスケ馬鹿二人である、打倒キセキの世代をぶちあげたりそのためにどの高校に行くかを議論してみたり。休みが終わる頃にはすっかり相棒関係になっていた。
 その頃は、火神と共に誠凛高校を目指すことにしていたのだが。黒子母の暴挙により、火神のみが誠凛に行くことに。遠く離れてしまったが付き合いが途切れることはなく、割と頻繁にメールなどでやり取りをしていた。
 そして今回、黒子が東京くんだりまでやって来た切っ掛けも火神からのメール。なのでこっちに居る間は面倒みろと、アポなしで強引に押し掛けたのが今の状況である。


「今更ですが火神くん、部活はどうなってます?」
「ホントに今更だなっ。来週末くらいから二回目の合宿で、それまでは普通に学校で部活。因みに明日は午前練だな、他の部活のとの関係で」
「なるほど、それならお邪魔してても大丈夫そうですね」
「オイッ! まあ、良いけどよ。つーか、なんで来たんだ?」
「火神くんからのメールのせいです」
「はっ!?」
「紫原くんが準決勝を欠場した理由、メールしてくれたじゃないですか」
「したな?」
「それで、おもいっきり赤司くんと口論になっちゃいまして。頭冷やそうとここまで来ちゃいました」
「すんげー行動力!?」
「自分でもそう思いますけど。かといって京都に知り合いはいませんから、行くところがないんです」
「あー、それもそーか。しっかしなんでまたそんなに頭に血が上ったんだ?」
「紫原くんが言うには、『赤司くんに言われたから』出なかったんですよね?」
「あぁ、アイツはそう言ってたな」
「それを赤司くんに問い詰めたら、『ボクは知らない』と言われまして」
「あれ? 紫原の勘違いか?」
「さあ、それはどうでしょう。あれで紫原くんは、嘘や適当なことを言うタイプではないと思うのですが……。まあ、色んな意味でぶち切れましてね、ボクが」
「色んな意味?」
「赤司くんが言ったというのが本当なら、陽泉は彼のせいで全力で戦えなかったことになります。紫原くんは一年ですから来年もありますけど、三年生には最後のチャンスでした。それに横槍をいれたとなると、どうにも腹が立ちまして」
「でもよ、赤司は否定してんだろ?」
「そうなんですよね、それもあって余計に頭に血が上ったので少し冷却しようかと」
「なるほどなー。オレにはどっちが正しいのか分かんねぇ。妙なメール送って悪かったな」
「いいえ、火神くんは悪くないですよ。ここに来るまでに桃井さんにも聞いてみましたが、やはり赤司くんが紫原くんに言ったのは本当ぽいです」
「ふーん? で、そんな白々しい嘘を付くようなヤツなのか? 赤司って」
「まさか、自分のすることは全て正しいと信じているような人ですよ? 下手な誤魔化しなんてする訳がないんです。と、気付いたのは頭の血が少し下がってからですけど」
「どーなってんだ?」
「さあ?」