冬の少女とブラウニー。ちょっと白熊

擬似サーヴァント。
端的に言えば人間という名の器を依り代にした英霊の事を指す
器に宿るサーヴァントは、その人間と相性の良い神霊であったり、些か霊基が複雑あるいは一騎の英霊として顕現するのが難しいもの等、在り方は様々である。

「その中でも、私は聖杯と影響があるせいかかなり特殊な方。何体かの女神達が複合したハイ・サーヴァント。メインはシトナイの方だから、私はシトナイと名乗ることにしたの」
「へえ」
歩幅を揃えて廊下を歩きながら、シトナイと士郎は話し続ける。
「……私ね、あなたとこうやって話をするととても不思議な気持ちになるの」
シトナイは寂しげな声色で言葉を続ける。
「本来、こうやって話す機会なんてないと思っていたから……こうやってサーヴァントにでもならない限り」
「……俺もだ」
士郎は頭の中で自身の経験した聖杯戦争を思い出す。
戦争中に出会った、巨体のサーヴァントを引き連れた白銀の髪の少女。
そして、士郎が救う事の出来なかった一人。
本来ならば二度とこのように会話して歩く事など決してないと思っていた士郎は、この現状をどう受け止めていいか分からずにいた。
「ねえ、シロウ」
シトナイは前を向いて歩きながら士郎の名を呼ぶ。それはかつて自身を殺すと言いながらもお兄ちゃんと懐いていた彼女と同じ声で、しかしどこか姉のようだと感じる凛々しい表情だと士郎は感じた。
「シロウはまだ、正義の味方になりたいの?」
「……ああ」
それは、曲げる事の出来ない本音だ。
カルデアが襲撃され、あの爆発の中で多くの仲間達を救えずに自身が助かってしまったという事実を何度も悔いながら、それでもこの現状をどうにかしようと士郎は今日も必死に動いている。自身の力は微々たるものながらも、それが人理を救うためだと信じて。
けれどいつか元の世界に戻り、自身が正義の味方だと胸を張って活動できるようになりたいと、心の片隅では常に考えてしまう。
「……そう」
ポツリ、とシトナイは声を漏らす。
「結局シロウはどういう状況であれ、その選択をし続けるのね」
「ああ」
「ふうん……そっか」
トトト、と士郎の先を遮るように士郎の前に立ち、前屈みになりながら上目遣いで士郎を見つめる。
「じゃあせめて、お兄ちゃんがここにいて私がサーヴァントとして現界している間ぐらいは一緒にいるぐらいはいいでしょ」
「……まあ、それぐらいなら」
偶然が重なり、もう二度と叶う事のない奇跡のようなこの時ならば構わないだろう。
士郎は苦笑いで返事をすると、シトナイはうんうんと頷く。
「それじゃあお兄ちゃん、このカルデアを案内して欲しいな。あ、そうだ」
シロウ!とシトナイは虚空に向かって名前を呼ぶと、どこからともなく白熊がノソノソとシトナイに近づいて来た。
「こっちのシロウも一緒にお願い!」
よいしょ、と白熊に跨り士郎に笑顔を向ける。
「……あんまり他の人の迷惑を掛けないならな」
シトナイと巨体の白熊の円らな瞳を向けられた士郎は、何故だか既視感を覚える白熊の毛をひと撫でしてからカルデアを案内し始めた。


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今更ながらシトナイ実装&召喚記念。
本当は白熊シロウと士郎さんをモフモフさせてやろうかと思ったけど、話が膨らみませんでした。
SNではどのルートを辿ったとしても長生き出来ないイリヤちゃんですが、せめてこの話の中では時間が許す限り士郎さんと一緒にいて欲しいという私の我儘から出てきた話でした。
プリヤのイリヤちゃんのお兄ちゃん大好きっ子な妹ちゃんキャラもいいですが、SNの妹であり姉的存在の小悪魔(物騒)イリヤちゃんも好きなんです。

しかしまさか村正爺さんの前に士郎さんにそことなく似てる白熊シロウが来ると誰も思わんじゃろ……実装決定時はびっくりしたし、なんて言われようと絶対引いてやろうと思いました ( ˘ω˘ )