# 01

1年の歳月を一緒に過ごしてきた仲間の中に、「ミスター隙なし」の人物がいる。
それが今、俺の左隣で、口いっぱいにサンドウィッチを頬張っている人物を右隣から眺めて「翔陽は旨そうに食べるなぁ」と一言もらしている人物、北信介である。
ペットに赤ちゃん言葉でしゃべってるくらいの弱みが握れればいいなぁと思ってたらそれよりも規模のでかい弱みを握ってしまった気分だ。
俺は人間観察が趣味兼生業みたいなものだから俺以外は多分気づいてないはず、気づいてたら冷やかし盛りの男子高校生が黙ってるわけないし、特に双子。
その弱みとは、北さんがこの俺の左の太陽こと、日向翔陽と他の人間とでは対応が全然違うということ。
もしかしたら、このミスター隙なしはこの太陽が好きなのかもしれない。

練習終わりにごくたまに監督とコーチのおごりでラーメンに行くとき、日向が車道側を歩いてたら突然にゅって日向の隣にやってきて、ずいっと自分が車道側に乗り出して、内側に日向の体を押してそのまま歩き出した。
最初の頃は日向も動揺していたり、そっち歩きますって抗議してたりしてたんだけど、いつの間にかそれが当たり前になって、俺はその度に歩道体当たりカウント(ネーミングセンス・・・)をつけてる。
もちろんそれだけじゃない、食堂でバレー部で集まって食堂で昼食を食べる時だって隣こそは死守!ってほどはないんだけど、いつも日向に箸やスプーン、更には水まで持ってきてくれてる。
いつも日向がご飯ばかりをよそって箸とかを忘れちゃうからだ。
それを考慮して北さんがあらかじめ日向の分持ってきてくれてるから優しいなぁとみんなは思ってるけど、あれは絶対に違う。
現に双子が「「あ!!箸忘れた!!」」って声をハモらせてとりに走っても席から一切動くことなくきつねうどんを味わってたし。
その隣で、相変わらず日向はもぐもぐと美味しそうにサンドウィッチを頬張ってた。
日向のトレーには北さんが頼んだであろうcランチセットのデザートが中央に置かれている。
北さん、日向が隣に座るとびっくりするくらい餌付けするんだから。

「北さんのくれたプリン美味しい!ありがとうございます!」
「そうか。ちゃんと食べぇや」

口いっぱいにプリンを頬張りながら北さんにお礼を言う日向。
そんなプリン怪獣を横目で見てフフッて笑ったのも俺は知ってるからな、見てたからな。
見てないふりを装うのにスマホを使ったけど、平常心があれば写真くらい撮れたんだから。

朝部活に行けば、

「北さんの方のボールめっちゃ綺麗!!」
「翔陽の方のボールも汚れとれてんで」
「いや!北さんのボールがドバーンって光ってる!!」
「なんやそれ」

二人がいつも誰よりも早く来て、一緒にいること。

俺は寮生で、学校の敷地内のはずれの稲荷崎寮に住んでる。
日向も寮生で、朝早く来れるのはわかるけど、いつから来てるんだろう。
去年とか北さんいつから来てるのか気になって早めに来てみたけど、今日こそは一番乗りって思ってもいつもいるから体が追いつけなくなっていつもの時間に来るようになったのは絶対夏より前だ。
上に述べた根拠から、もしかしたら日向は北さんと同じような時間に来て一緒にボール磨きや掃除をしてるのか、はたまた北さんと一緒に来てるのか・・・?
後者だったら観察せざるを得ない。
すまない、これは戦略的観察だ、ゆるしt

「角名来とったなら挨拶くらいしてや」

全てを見透かすような目で、北さんが俺を見てくるから。
俺は軽ーく挨拶して、北さんのルーティーンを邪魔しないようにストレッチを隅で始めた。
そのうちに騒がしくなって、二人が隣り合って座ったいたところから息ぴったりに立ち上がって、別々に動き始めたのもちょっと匂いがプンプンするよね。
これが匂わせってやつ?
いや俺が勝手に嗅いでるだけだからかがわせ?日本語難しい。

「角名!翔陽君が俺のことまだサムって言うてくる!」
「宮治さんおはようございます〜」
「やかましいわサム!」
「ちょ!侑さん!!謝ったじゃないですか!」
「許さへん!翔陽君からの愛のハグがあらへん限り許さへん!」
「侑うるさい。コーチが来たからもうすぐミーティングすんねん。早うストレッチしろ」

聞いていましたと言わんばかりの北さんのベストタイミングに周りの背筋が凍ったところで、今日も稲荷崎高校バレー部の一日が始まった。


少しして、稲荷崎学生寮「通称キツネ寮」の毎月恒例の掃除日が近づいてきた。
寮を綺麗に使うために毎月課されているもので、部を問わず色んな寮生が参加をしなければいけないものだが、俺たちはその日朝から大阪の強豪と伝統練習のため日程を動かせず、また男バレ寮生は一応スカウト組だから試合に出れないことは補習以外は許されていない。
特別な書類に記入して期日までに寮長に出さなければいけないのだが、

「角名さん、一緒に行ってもいいですか?」
「いいよ」

寮の挨拶のときに、寮長の強面っぷりに慄いた日向が俺に一緒に行こうと言ってきたのだ。
実は男バレの寮生は俺と日向しかいなくて、他の生徒はみんな兵庫を中心に一応通える距離で声掛けをしてきた生徒らしい。
一番遠い奴は超端っこだけど大阪から通ってるし。
正直そいつには寮使ってほしい(本音:掃除の人員増やしたい)けど、家族からの希望で通学せざるを得ないと。
そんな中で日向は同じ部活の寮生仲間の俺に声をかけてきたと思われる。
待ち合わせは、放課後すぐに俺の教室に来るようにメールをしておいた。
稲荷崎の伝統的に3年のホームルームは少し長めに設定されていて、きっと部活命の寮長(野球部)とすれ違うことはないだろうと仮定してそうした。
ホームルーム時から、視界の端っこにオレンジの頭がぴょこぴょこしてて担任は気が散ったのかすぐに解散が言い渡され、一緒に3年7組の教室に向かう。
廊下で、日向に抱いていた疑問をぶつけた。
キツネ寮は部活の強化選手がメインに住んでるから、選手のプライバシーを尊重して一人部屋である。
部活ごとにまとまって部屋が決まるから、日向と俺は隣同士の部屋だけど、帰る時間も異なれば(こいつの体力底なしだからいつも遅くまで自主練してるらしい)、朝起きる時間も違うからあんまり鉢合わせることもない。

「日向、お前いつも何時に練習に来てるの?」
「へぁ?えーと、北さんがいつも迎えに来てくれるから時計見る暇がなくて・・・」
「北さんが迎えに来てくれんの?」
「はい!モーニングコールをしてくれてそれで急いで起きて支度してご飯食べて・・・ってしてます!
早く上手くなりたいから誰よりも早く来たくて・・・!そしたらいつも北さんが俺より早くて・・・
一緒なら負けはしないかなって!」

いや、競ってるのかよ。絶対にやめとけよ。
しかも話の内容的に日向が北さんにモーニングコール頼んでる・・・?それを容易に受け入れる北さん・・・。
これ絶対黒でしょ。
いや悪いことじゃないし、むしろピンク・・?いやピンクだとなんかエロくなっちゃうじゃん。
えーと・・・。
そうこうしていたら、目的地に着いた。
一緒に教室の中から見えない位置でホームルームの終わりを伺う。
少しして、吹奏楽部の部長がスタートダッシュのごとく教室を飛び出したのを見て、教室の後ろのドアから寮長を探していると、いち早く俺たち、というか日向に気が付いた北さんが俺たちの方にやってきた。

「翔陽、と角名。どうかしたん?」
「あ!北さん!」
「北さんすいません、キツネ寮長呼んでもらえますか?」
「わかった」

北さんは強面寮長に声をかけると、俺たちの方に連れてきてくれた。
俺たちに気が付いた大耳さんもやってきた。
というか、俺の方が日向より身長高いのに真っ先に日向に気が付くところが北さんだな・・・。
あとなんかおまけっぽく言うのやめて。ちょっと傷ついたよ。
いや慣れてる、さ・・・。

「おう、何や?」
「寮長ごめんなさい、今度の掃除日参加できないので紙渡しに来ました」
「す、すいません!!おおおおお、オネシャス!」
「日向嚙みすぎやろ」

大耳さんは日向のキョドリっぷりを見て、珍しく笑みを見せた。
北さんも温かそうな笑みを見せて日向を見てる。

「把握したで。バレー部の用事ならしゃあない。
来月はしっかり参加してや!」

強面寮長はニカッと笑うと、北さんの方を一瞬向いてから日向の方を見て、

「俺初めて北が笑顔で話してるの見たで。
自分、北が相当気に入ってる後輩なんやな」

と、荷物を背負いなおしながらとんでもないこと言い放った。
大耳さんはほーんみたいな顔して北さんを見た。

「え?北さん笑顔で話さないんですか?いつもどんな顔してお話してるんですか?」

と、きょとんとした顔で北さんと寮長を見てる。
どんな顔って・・・普通に真顔だろ。
てか、日向の前では基本笑顔なの?北さん。
いかんいかん、ここでなんか言ったらケガする。
心の中でマスクを用意して、そのマスクにバッテンに黒いテープを付けて出方を伺った。

北さんはいつもの何も読み取れない表情で、

「特別な事情はあらへん。
翔陽はいつも笑わせてくるから笑うてまうだけやしな。
ええ[後輩]やで」

北さんは、[後輩]ってワードを意識的に声色を少し強くして言った気がした。
多分、この場で気づいたのは俺くらいしかいないと思う、北さんも無意識だったんじゃないかな。
なるほどって調子で3年生は納得して、寮長とはそこで分かれて、4人でバレー部の使用している体育館に向かった。


ブレザーからカーディガン、いやそれでも暑く感じるぐらいの季節になった。
相変わらず北さんは日向を可愛がってるからか、俺以外にも気づく人が増えた。
・・・アランさんだ。
ちなみにずっと苗字で読んでたけど、双子のせいで名前の方が慣れてしまって、本人の許可をとれたのでこう呼んでる。
今では部の大半の人がアランさんって呼んでる状況だ。

アランさんは練習終了後、駅を向かう集団から外れて俺の後を追ってきてた。
今試合ですか?って言いたいくらい普段のツッコミマシーンとは別人な表情をしてた。
すごい顔が真剣そのもの。

「なぁ・・・北のことやけど・・・」

口に出してアランさんは辺りを見回して人がいないのを確認し、俺に耳打ちしてきた。

「北と日向、付き合うてる?」
「いや、わからないです」
「角名、男バレの噂話詳しいやんか、なんか聞いてへんか思てな」
「いえ、北さんと日向なんか特に流れてこないですよ。
なんかあったんですか?」
「おん・・・」

返事をするとアランさんは黙った。
いや、断言はできないけど日向は恋愛っ気はないはずだ。
他校の女子マネ見て赤面したり、双子や銀が恋愛トークすると照れて逃げだりする。
でもアランさんがそこまで言うとかなると、北さんやるなぁくらいしか思ってなかった自分を数秒後には殴りたくなる。

「もしや、なんかありました?」
「・・・昨日手をつないどる二人が駅近くの繁華街に行くの見てんけど」

絶句した。
もしやそこまで言ってるとは思ってなくて、俺は口あんぐり。
駅近くの繁華街は、日本でも結構有名。
カップルが休憩をするための施設がいっぱいで、というかいかがわしいものの叩き売りみたいな場所だ。
俺が何も言えないでいるけど、アランさんは汗を拭うようにして正論を続けた。

「高校生がそういうとこ出入りしとったら大会出れへんようになると思うねん。
別に個人の恋愛に口出すつもりは最初からあらへんけど、俺たちも出れへんようになるし。
大事になる前にしっかり聞いときたいねん、明日北に事情聴取するから手伝うて」

アランさんは要件を伝えると、足早に正門の方角に消えて行って、今日も遅くまで練習したからか辺りは暗い。
もうすでに姿は闇に溶けて、追いかける気力もないし、あと普通の時でも追いかけはしないけど。
でもなんとなく追いかけて無理ですって言いたくなった。
いくら出場停止を免れたいからって、あの正論パンチはまともに食らったら反動で動けなくなる。
てか正論パンチを食らった反動で動けなくなるってなんだよ、ポ〇モンだったら攻撃した方が反動で次のターンで動けなくなるだろ!
そういや、日向昨日なんかいい匂いしてたな。
昨日はいつもより少し早めに練習終わって、すぐに体育館から姿が見えなくなったからどっかに行ったとは思ってたし。
風呂入るときにばったり会って、すれ違う時にこうふわっと香水みたいな・・・・・やめだやめだ!!

こういう時ってやっぱり会っちゃうんだよなぁ・・・。

「あ!角名さん!おつかれっす!」
「お、おう日向」
「今から戻ったんですか?食事まだでしたら一緒に食堂行きませんか?」
「行こうか」

動揺が隠せてないぞ俺。
日向は部屋から食券を取ってきて、俺に「さ、行きましょう」と促した。
階段を降りて一階に行けば、キツネ寮専用の食堂がある。
寮生が使えて、格安で美味しくて大量。
しかも夜8時までやっていて、それ以降は余りものを冷蔵庫に入れておいてくれるから夜遅くに帰ってくる生徒でも食べられるようになっている。
夜間は人がいないから、その日の昼とかに予め夜間用の食券を買っておかなきゃいけないんだけど。
大きくて何個もある冷蔵庫から、自分の食べたいものを取り出してレンジでチンして、日向のいる席にまで持って行った。
周りには誰もいない。
広い食堂には俺と日向しかいなくて、今ならさっき増えたあの気になったことを聞けそうな気がした。

「日向ってさ、北さんと付き合ってるの?」
「へ!?な、何でですか!?」

食べるぞと意気揚々の日向だったけど、その言葉を聞いて目の前の定食より俺に顔を向けた。
俺はもう言ってしまったならいけいけと自分にエンジンをかけて畳みかけてみる。

「昨日アランさんが、繁華街で北さんと日向が手を繋ぎながら歩いてたの見たらしいんだけど、それガチ?」
「え!!アランさん居たんですか?居たなら言ってくださいよ!!
「は?」
「へ?」

いやそういうワーオ♡なことしに行ったんじゃないの?
もしかしてアランさんも交えて3人でとかのほうが?こいつもしかして意外とむっつり?
双子がダントツで変態だけど、ノーマルだと思ってる。
こいつそういうのが好きだったならアブノーマルじゃね?
俺の中で男バレむっつりランキングが更新されかけたけど、一応の保険として何してたか聞いとくべきだろと良心がやってきた。

「えと、昨日何してたの?」
「妹の誕生日プレゼントを買いに行こうと思って!
おませさんだから可愛いの買ってあげたいなぁって思って、その日の朝の段階で北さんに相談したら一緒に行こうって言われて行きました!
アランさんもいたらえーと、三人寄ればアンズの知恵?みたいな感じで色んなアイデア提供してくれるかもじゃないですか!」
「お、おお・・・」

俺は突っ込みも忘れて、その回答を聞いて全神経が「よかった」と叫んでる。
日向は年の離れた妹を結構可愛がってるらしく、きちんとしたものをあげたくて北さんを頼ったという。
確かに繁華街は奥に行けば行くほど危ないけど、駅側には女子に人気の店ができ始めてるってニュース番組で言ってたな。
俺は緊張と安堵感で大きくはぁとため息を吐いた。
っていうか何で俺がこんなに緊張してたんだろ。

「じゃあ何で手を繋いでたの?」
「北さんが危ないから繋ごうって言ってました!
俺、携帯とか持ち歩かなくて昨日も部屋に忘れちゃって、はぐれたら連絡取れなくて大変だから繋ごうってなりました」

何食わぬ顔で当時の状況を説明して、やっとご飯にありつき始めた日向。
きっと北さんにとっては、危ないって意味ともう一個意味があったんだろうな。

「日向は北さんのことどう思う?」
「うーん、優しくしてくれる先輩ですね!あとレシーブかっけえし、なんでもできるのソンケーです!
俺も北さんみたいになりたいです!」
「そっか」

ふわっと笑みが湧いてきて、ご飯をいっぱいにかきこむ日向を見ながら俺も豆腐に手をつけた。
アランさん、心配するようなことなかったじゃん、と思って。
俺はその時、日向の顔がほんのり赤くなったことに気が付かなかった。


「で、話って何や?」

昼休み。
北さんとアランさんに今日だけ3人で食べませんか、大事な話があるので。
場所は旧校舎の旧1年1組教室で。と連絡を一斉に送った。
同じクラスの治にも食堂には行けないと言ったし、まあ怪しまれたけど。
そういえば、昨日日向から聞いたことをあえてアランさんには誤解だとは言わなかった。
いや面白そ・・・本人の口から聞いた方が納得すると思ったから。

「北さ、日向と付き合うてるん?」
「いや、付き合うてへんけど。何でそう思たん?」
「この前北と日向が手ぇ繋ぎながら繁華街歩いてるとこ見たんや」
「それでなんで俺と日向が付き合うてることになるん?
ラブホテルに入るところでも見たんか?」
「いや見てへん・・・」

怒涛の北さんからの質問に、アランさんがタジタジになっている。
俺は自分の出番はないと、朝購買で買ったパンの包みを開けて齧りついた。

「なら、証拠にはならへんやろ。
俺はええけど翔陽に迷惑やろ、好きでもあらへん男と噂を立てられるのは」

涼しい顔をして爆弾を落とすのが、この北という男である。
今の口ぶりからすると、まるで自分は噂を立てられてもいいと裏返しされても問題がない言葉が投下された。
アランさんもこめかみをぴくっと動かして感づいたみたいだった。

「自分は噂立てられてもええみたいな言い方しよって」
「ええで」
「ほんまか!?」

それってつまり、

「翔陽が好きやから」

認めてるようなもんじゃん。
アランさんも信じられないような顔をして、箸を止めた。
俺も思考が停止した。

「いつから?」
「・・・多分翔陽が入学する前には好きになっとった思う」

確か、北さんは日向が入学する前に色々と日向にサポートしてくれてたらしい。
宮城にも行ってたし。

「告白はせえへんの?」
「でけへん。
まず、男から好きやら言われたらきしょいやろ。
それに、俺の恋愛は古いからすべて日に日に新しなる翔陽には俺はついていけへん思う」
「恋愛が古い?どういうことですか?」

俺は思わず突っ込んでしまった。

「俺、好きになったらずっと好きで、振られても忘れられへんのやんな。
それから連絡携帯も全然見ーへんし連絡もすぐに返せへんし。
恋人同士ってラインすぐ返した方がええんやん?
あと、流行やらに疎いから今時の恋人同士が何してるのかわからへんし。
中学の時に一人と付き合うたけど、振られるときに[あんたの恋愛観は古い]って捨てられた。
そいつはすぐに新しい彼氏もできて、何なら何人かとようわからん関係ができとった。
それ聞いた時もまだ好きやったさかい結構きつかったなぁ」

その元カノ、多分侑より人でなしでは・・・。
アランさんを見ると、同じこと考えてるのが伺える表情をしていた。

「北、それ一途って言うんやで。古いも新しいもあらへん。
素敵な恋愛観やん、そいつがあかんかっただけ」
「慰めありがとな。やけど、翔陽に告白することはあらへん。
折角うちの高校に入ってくれて、やっと近いのが当たり前になってきた。
この当たり前を壊したない」

夏のじんわりとした湿っぽさが、この教室の空気にも入り込んできてじめっとした空気になった。
俺とアランさんは何も言えなくて。
予鈴が鳴ってそそくさと帰った北さんを眺めながら、俺とアランさんは目を合わせて頷いた。
北日大作戦を決行しよう、と。