それが、三年前。モブは目の前を歩く二人を見た。あの二人とは一年の時だけ同じクラスで二年も三年も少し離れたクラスになってしまったから話を聞くだけになってしまったが、改めてみる二人は、なんか、パワーアップしている。
ちなみに今は朝の登校中だ。ただの道端ともいう。稲荷崎高校に向けての最寄り駅から稲荷崎までの数十分の道のり。
朝の登校を共にするなんて珍しい光景じゃない。でも、手を繋ぐ必要性はない。思わず二度見した。え? 手を繋いでますね。なんか騙されそうになったけど、手を、繋いでいますね。すごい自然に繋いでるから気付かなかった。
「あそこで信介のスパイクが見れたのめっちゃわくわくした! 狙い通り打ててたから、うぉぉぉ! って思った」
語彙力が小学生レベルの日向は、一年の時から変わっていない。今にも動き出しそうな勢いで話している。けれどその右手は確かに北の左手に繋がっている。
「俺は翔陽みたく飛べへんからコース狙って打たんと点に繋がらへんからな。でも昨日のはよおできてたと自分でも思うわ」
あぁ、またバレーの話か。バレー部だから当たり前っちゃ当たり前なんだが、それでも、二人の手は繋がっている。さりげなく車道側を歩く北に平伏したくなる。こういうところスマートにやるのが北なんだよな……。
なんて眺めているところモブは何かを受信した。あ、ちょい待って。モブは心の中で自身にストップをかけた。俺、大事なことを見逃している気がする。めちゃくちゃ大事なことを。
そうして、先ほどの会話を頭でリプレイする。俺は何を、何を見逃しているんや!?
「ん? 坂田じゃん! おはよー!」
「お、ほんまや。おはよう」
「あ、おはよう……」
モブは日向に挨拶されて二人が名前呼びにいつの間にか変わっていることに気が付けなかったのである。そしてその日一日もやもやしながら授業を受けることになった。
「もしかして、付き合うた、とかか!?」