# 05

「ここら辺で一回休憩しよか」
そう言うと、侑はペースダウンしながら公園を指差した。

どうにか沈めて急いで着替え、朝のロードワークにでてからもうじき30分程たとうとしている。
なかなかのスピードで走り抜けてきたので、額から汗が零れ落ちていく。
侑の提案に頷くと、日向もまたペースを落とし二人連れ立って公園へと入っていった。

朝の公園は実に清々しい空気で満ちている。近くの案内板を何気なく見ると、案外中は広いらしい。
「子供の頃おかんに連れてきてもろうて、よお遊んだ公園やねん」
そう言いながら迷いのない背にくっついて、あたりの景色を見渡しながら進む。
休憩、と言いながらも止まらぬ足を少しだけ疑問に思いながら、どこかいいスポットでもあるのだろうと、足を動かし、話題をふった。
「お二人が子供の頃ってどんな感じだったんですか?」
「ふっつーの腹立つガキやで。ほんでまあ、双子やからなんかな、好きになるもんも一緒でよお喧嘩しとった」
懐かしそうに笑うその横顔が、なんだか幼く見えて日向も微笑む。
まだ誰もいない遊具の横を抜けてその先の坂道を登ると、朝日に照らされた木々が視界の端に増えてきた。
「それ、最後はどっちが勝つんですか?」
幼少期は治の方が一枚上手だったと、どこかで聞いたことがあった。
少し意地悪な質問だったかと思ったが、昨日の意趣返しとばかりに聞いてやる。
しかし侑の表情の変化に、それをすぐに後悔した。
「どうしても好きなもんはな、いっくら喧嘩しても勝敗つかんねん。せやからな、そういう時は」
そう言うと、侑は足を止め、くるりと日向へ向いた。
いつの間にか周りは木々に囲まれていて人気は無い。よく見ると、先は行き止まりとなっている。
さっきまでの明るい雰囲気とは異なり、ここは朝なのに薄暗い。
侑は笑みを崩さず一歩踏み出す。それに応じて一歩下がった。
人の良さそうな顔のその裏で、肉食の瞳が顔をのぞかせている。
迫る侑に一歩ずつ後退して、背中に木の感触がとん、と当たった。
「半分こすんねん。」
ぐっと近づいた体。左足で足の間を割り開き、手は日向の顔の横へ。ゆっくりと耳元で囁かれ、そのまま耳たぶに噛みつかれた。
「ちょ、…あつむさん!ここ外ですっ」
飲み込まれそうな雰囲気に抗おうと、苦し紛れに分かりきったことを伝えたがそんな事で止まるわけもない。
前歯で耳たぶをやわやわと噛み、そのまま唇だけでつつつと縁をなぞる。
ぞくぞくとしたものが背筋を駆け抜けて、膝が笑いそうになるのを必死にこらえた。
「ここな、治と見つけた場所やねん。滅多に人なんか来おへんよ」
その台詞に目を見開く。
誘導されていたことに今更気づいて、口をパクパクと動かした。
低い声でそこで囁かれると、昨日のキスを思い出してしまう。柔らかくて気持ちのいい唇が、今は耳を這っている。
その事実だけで、下半身に熱が集まっていった。
侑の体を押し返そうと両手をその体にかけるも、服を握りしめるだけでなんの効果もない。
「なあ、翔陽くん」
ぴちゃぴちゃと、今度は音をだしながら耳の穴をなぶりながら侑に名前を呼ばれて日向は顔を上げた。
「なんで朝布団から出てこれへんかったん?」
「あ、ぅ、べつに」
「ここ、勃っとったんやろ?」
そう言うと、侑は日向の緩く立ち上がりかけたそこに手を伸ばした。
「んっ、や、やめ」
優しく撫でるように擦り上げ、その形を浮き彫りにするかのように手のひらで押し上げられて、侑の服を掴む手に力が入る。
「あ、あつむさ、だめっ」
「だめやないやろ、翔陽くんはえっちな子やん」
「えっ、ちじゃない。です」
するすると撫で回され、あっという間に完全に大きくなってしまったそれが恥ずかしい。しかし止まらない手が気持ちよくて、それでもやっとやっと否定した。
面白そうに侑は鼻で笑う。
「営業中の店ん中で店主とべろちゅーしとるのにえっちやないっちゅうのはどうなんやろ」
カッと顔が熱くなる。
見られてなかったはずなのに、どうして知られているんだとその顔を見上げた。瞬間ぶつかる柔らかい感触。
ぬるっと入ってきた舌に咄嗟に反応できず、いとも簡単に舌を絡め取られた。
「んんっ!んー、んぅっ」
「はっ、」
「ふぁ、あ、やぁ…」
歯列をなぞられ、口蓋を舌で擽られ、いよいよ力が抜けていく。
しゃがみ込んでしまいそうになって、とっさに侑に縋り付いた。
息の仕方が相変わらず分からない。
「治のキスと、どっちが気持ちええ?」
離れた唇から糸が引いて、侑はそれをペロリと舐めとった。
意地悪な質問に答える余裕などありはしない。
キスだけでいっぱいいっぱいなのに、下をまさぐる手は変わらず動き続けていた。
「それいじょうされたら、おれ、も、はしれない、から」
すでに走れる状況ではないが、とにかくやめてもらいたい一心で懇願する。
しかし侑はその手を止めるばかりか、日向のハーフパンツと下着を躊躇いなく膝までずり降ろした。
「あつむさんっ、やだ!」
「大丈夫やって、誰もおらんし」
「そういうもんだいじゃ、あっ、あぁぁっ!」
熱のこもった手で直に扱き上げられて嬌声があがる。
堪えたくても堪えられず、その手が上下するたびに漏れる声。今置かれている状況、快感、全てが限界で涙が伝う。
日向の必死の抵抗なぞ気にもせず。侑は日向の快感を追い込むように扱き上げた。
「おれイっちゃうからあっ!んあっ、はぁあ」
「外でそんな声出してえっろい顔して。えっちゆうより、変態やなぁ」
「ちがっ、んん、う〜、やだぁ」
感情がはち切れそうで、どんどんと侑の体をたたく。
ぽろぽろと溢れた涙に、侑がちゅっと軽くキスをした。
「翔陽くん泣かんでや、いじめすぎたな。お詫びにイかしたるから、ちゅーして」
もう早く終わりにしたい、イったら終わりと日向は縋り付くその手をぐいっと引いて侑の口に自分のそれを押し付けた。
キスというには拙すぎるそれに侑は嬉しそうに笑って、扱く手に力を入れる。
「あっあっ、あぁっ、イ、く!」
「ええよ、イって。」
許しの言葉と共に先をぐりっとこすられ、日向はあっけなくそこから精液を迸らせた。


目の前がちかちかする。
局所的に差し込む太陽の光をぼんやり眺めながら、大きく息を吸って息を整えた。
性的な事なんてほとんど経験なかったのに、外でイってしまった衝撃をどう受け止めればいいのか。
原因の人物は、楽しそうに日向の頬や首筋にキスをしている。
しかしもはやリップキスには動じなくなってきた事に、遠い目をした。
「フッフ、すっきりしたなぁ」
「…ティッシュください」
侑は「はいはい」と言って、ポケットからウェットティッシュをとりだし散った精液を拭き取っていく。
お互いの服にも飛び散ったそれをごしごし拭いて、若干残ったシミには見ないふりをした。
「落ち着いたら帰ろな」
最後とばかりに鼻の頭にキスを落とす侑に何を言うべきか、今の日向には考えられない。
結局何を言うこともなく、息が整う頃ようやく公園の出口に向かい、ランニングを再開した。