# 06

えらいことになってしまった。
日向はシャワーを浴びながら、呆然と目の前の鏡を見た。
首筋に赤い点がひとつ。いつの間にと思わざるを得ない。
ランニングの途中であんな事をしてしまったその羞恥心が、今頃になって猛烈に襲ってくる。

ウェットティッシュで簡単に清められて、気づけば普段どおりの侑が踵を返すのに慌ててついていった。
余韻から上手く足が動かないのを察してか、いつもよりゆっくりとしたペースで走り、気づけば店に戻っていた。
「先シャワーつこうてええよ」と促され素直に風呂場に行き、今に至る。

汗を流し、風呂場を出る。
着替えのTシャツとハーフパンツを身に着けて、肩からタオルをかけてゆっくりと廊下を進んだ。
さっきは混乱していたから素直に侑の後ろをついてランニングを終えたが、今更どんな顔をして喋ればいいか分からない。
ひたひたと裸足で歩き、そっとリビングを覗くとそこには治が一人、何やらノートに書き物をしていた。
「ん?日向でたんか」
「あ、シャワーお借りしました」
日向に気づくと、治はさっと手元のそれを閉じて声をかけた。
「べつに好きにつこうてええよ。」
侑と同じ顔なのに、彼とは違う穏やかな治の顔に安心した。
その場に侑の姿がないことに少しほっとして、部屋に足を踏み入れる。
治が手招きして、隣を示す。勧められるまま、そこに腰を下ろした。
「仕事してたんですか?」
「ん、仕事ちゅうか…まあ仕事やな。試作品の考案しとった」
試作品の言葉に、好奇心が擽られる。
そわっと揺れた体を一瞥して治は楽しげに「日向はどんなん食べたい?」と聞いた。
楽しい話題に今まで頭を締めていた悩み事は追いやられ、ふむ、と顎に手を当てる。
卵が入ったやつはすでに作ってもらったから、あとは何が食べたいだろうか。やっぱり肉々しいやつがいいかもしれない。
いやしかし。そこで日向ははっと目を見開いた。
(卵と肉が入ったら最強なのでは!?)
妙案をすぐに伝えようとばっと横を向くと、すぐそこに治の顔。もはや条件反射のようにビクッと体が揺れる。
「っ、あ。おさむさん」
「…どないしたん」
「いえ、なんでも…」
ないです。と続くはずだった言葉は、唇で塞がれ出ていくことはなかった。
「なっ!っ、あっ」
舌が入る前に急いで身を引く。
後退りするように距離を取ると、自分の唇を舐める治と目があった。
「日向、なんやすっきりした顔しとるやん」
四つん這いの様な格好で、畳をしならせながら治が近づいてくる。
座った体制のまま後ろに下がったせいで、あっという間に組み敷かれる様な姿勢になってしまった。
「で、今度は侑に何されたん。教えて」
「な、…何も、ないです」
ここまできて、どうやらあの二人は情報を共有しているらしいことに気づく。
咄嗟に否定したが、もはや嘘が通じる相手ではないことくらい学習していた。
またなし崩しにえっちな事をされてしまいそうで、何かないかとあたりを見渡すが、しかし待ったをかけられる何かが見つからない。
日向は背に腹は代えられないと、ここにいない人物の名前を出した。
「あ、侑さん、どこいったんですか?戻ってきちゃいますよ」
そう言えばやめてくれるだろうと考えて言葉にしてみたが、その瞳が揺らぐことはなかった。
「侑ならしばらく帰ってこおへんよ。おかんに呼び出しくらって今でとる。」
肝心な時にいない!と、理不尽に苛立ってみたが、目の前の顔はどんどん近づいてくる。
「なあ、外で何してきたん。…初心そうな顔して案外変態なんやなあ」
広角を上げて、目は弓のようにしなっている。
そういえば狐も肉食だったと、思ったときには体は完全に押し倒されていた。

「だって、侑さんが、人こないからって」
治の圧に、たどたどしくも言葉が口から出ていく。
「うん?」
「恥ずかしかったけど、触られて。大きいままじゃ帰れないからって」
木々に囲まれたあの空間でされた事が鮮明に浮かんで、下半身に熱が集まる。
バレてしまわないようにもぞもぞと動かすと、足の間に膝を差し込まれてしまった。
「ほんで?イかされたん」
「うぅ、…はい」
恥ずかしくて涙が出るなんて経験、今までしたことなかったのに、昨日からどうしてこうもこの涙腺はゆるいんだろうと日向は目尻を擦った。
治はその手をすっと掴んで、所謂恋人繋ぎで日向の頭の上に縫い付ける。
「目え擦ったらあかんよ」
蕩けそうな程優しい声で耳元に囁かれ、腰がぞくぞくと浮き立つ。
治の唇が、耳、おでこ、頬と順にキスを落としていき。唇に合わさると、そのまま舌を差し込んだ。
やめさせなければと思う反面、舌を入れたキスの気持ちよさを知っている体が勝手に受け入れて、舌を絡ませる。
次第に酸素が足りなくなって頭がぼんやりしてきた頃、Tシャツの裾からするりと手が侵入した。
引き締まった腹をなぞるように滑り、胸の突起に到達する。
普段触らない場所を触られる擽ったさに見をよじると、いきなりぎゅっとつままれた。
「んぁっ!やっ、いたい、です」
「ほんならこれは?」
痛みを告げると今度は先をこねくり回すようにいじられる。
痛くはない、けれどむずむずする。
「おさむさん、なんか、へん!あっ、あぁっ」
「ふっ、日向はこっちの才能もあるんやなあ」
「んんっ、あぁ」
治はTシャツをするするとまくりあげ、顕になった突起に吸い付く。それに合わせて日向の口からも嬌声が漏れる。
舌で乳首を愛撫され、いつの間にか固くなった中心が苦しげに布を押し上げて、覆い被さる治の腹にぶつかりその存在を主張していた。
治は空いた手を日向のハーフパンツに差し込み、下着越しにそれを握り込む。
「男なのに乳首いらわれてちんこおっきくしてるん」
「うぅっ、いわな、いでっ」
「安心してええよ、俺もこんなやし」
そう言うと、治は日向の手を取り自分の股間に押し付けた。
「ひっ、あ。おっきぃ…」
自分のそれより一回りは大きい感触に、ビクリと体を震わせる。
人前で着替えるのなんて日常茶飯事だから、他人の下半身なんて見慣れてはいるけど触ったのはもちろん初めてだ。
おっかなびっくり、しかし好奇心に負けてそのサイズを確かめるように擦る。
付け根から、先っぽまで。
指先で辿ると、頭の上から「んっ」と微かな声が降ってきた。
「っ、おさ」
呼ぼうとした名前は、荒々しくぶつかった唇に遮られた。
「んんっ、…あふっ、は、あっ!」
「…はっ。その、触り方はあかんやろ」
反り立つそれを乱雑に扱かれる。
頭の上にあった手はいつの間にかほどかれ、治の日本の手が性急に日向の服を剥ぎ取っていく。
Tシャツもズボンも下着もなくなって、外気に触れた肌が震えた。
「うぁっ、おさむさ、っ」
「ひなた、…ここ使うたことある?」
治の指があらぬ所に触れる。
「え、え、」と意味のない声が震えて、彼がなぜそこに触れているのか、考えて、想像して、顔がさっと青ざめた。
「な、なに、」
「なんやえらい気持ちええらしいで」
縁をぐるりとなぞり、窪みを押す。
乾いた指がひたひたと肌を触るのがなんとも言えず、日向はただ首を降った。
日向の拒否が見えているのかいないのか、どちらかというよりどうでもいいのかもしれない。
治の瞳は日向から外れて何かを探している。
「ん…多分あいつ」
涙目の日向を置いて、治は何やら後ろをごそごそと漁っている。
このすきに逃げてしまおうか、そんな事を考えて、もはやそんな余裕もないと唇を噛んだ。
「お、あった。あいつほんま準備ええな」
治の手の先に、侑の鞄が見えた。
メインポケットの奥の方を探り、袋を取り出している。
ぼんやりと見つめながら袋の中身を目で追うと、小振りなボトルと
「…うそ、やっ。むりっ!むりです!」
「あいつとちんこのサイズ同じなんは、仕方ないけどやっぱり嫌やなあ」
新品のゴムの箱を開けながらそうのたまう姿に、涙が一筋垂れた。
この人は本気で挿れようとしていると、自覚した途端恐怖が襲う。
体を反転させて逃げようと、ぐるりと体を回すとその腰をぎゅっと掴まれる。
「ローションでぐっちゃぐちゃにしたるから、心配せんでええよ」
なにも心配しなくていい要素がないと突っ込みたいのにやはり言葉がでない。
治はローションを掌にだし、指に絡ませながら日向の窄まりにあてがった。
「ひっ!やっ、やめ、あっああぁ!」
ひくつくその穴に、治は躊躇いなく指を一本するっと差し込んだ。
ローションのおかげで抵抗なく侵入した指を、馴染ませるようにグニグニと動かす。
体内で動く感覚に、ほんの少しの吐き気が日向を襲う。
「まっ、て、きもちわるっ、うぁっ!」
「んー、ここらへんやと思うんやけど。ようわからんな」
日向の静止の言葉もどこ吹く風で、治は何かを探すように指を動かす。
2本目の指が追加され、じわじわと感じる痛みに日向は苦しそうにふうふうと肩で息をした。
「もうや、め」
苦しくて、痛いだけ。どうしてこんな事をと、唇をかみしめて耐えていると、不意に治の指がその箇所に触れた。
掠めた瞬間、日向の体が大きくはねる
「っ!?なっ、なに、や」
「あったあった」と呟く治に、何がと問いかけるまもなく指の腹でそこをぐいっと押し上げられる。
「んんんっ!あっ?や!、なにこれ、やだあっ!」
何も考えられなくなる。経験したことのない快感が、背筋を電流のように走り抜け、口からよだれを垂らしながら感覚に酔う。
ひっひっ、と漏れる自分の声すらどこか他人事のようだ。
いつの間にか3本になった指が、そこを掠めひっかきながら中をぐちゃぐちゃと蹂躙する。
自分で処理するより何十倍もの快感で、あっという間に高みに登りつめていった。
「おさむさん、も、だめっイきたい!」
先走りを垂らすそれはもう限界で、見上げて懇願すると、治は「ん」と言いながら片手で反り立つものを扱き、もう片方の手で中を犯す。
ぐちゃぐちゃと聞こえる水音を聞きながら、双方からの刺激に日向はあっけなく性を吐き出した。

「はうっ、はっ…はっ、っ」
力が入らない。
気持ち良すぎて頭がどうにかなってしまいそうだ。
しかしようやく終わったと、振り返り、視界の外にいる治を見ようとするが頭が重い。
息を整えていると、後ろからかさかさと音がした。
そしてキャップを外す音、ぶちゅっという品のない水音。
「…?おさむ、さん?」
ぐっと腰を持ち上げられ、ぐずぐずになった穴に硬いものが押し付けられる。
「気分的にはいただきますっちゅう感じやなぁ」
「へっ?、あ、あ゛ぁぁああっ!ン゛ッッ!」
押し入って来た、指とは段違いの重量感に、半ば悲鳴に近い喘ぎ声が漏れた。
「な、な、にぃ゛ぃ、やめっ!」
入ってきたものが治のそれだと気づいて、抜こうと腰を撚るもしっかりと掴まれ叶わない。
再び襲ってくる吐き気をこらえるように、上半身を床に伏して耐えた。
一気に押し込まれたそれは、そんな日向にお構いなしに抽挿を開始する。
ずちゅずちゅとローションの音がして、ぎりぎりまで引かれたと思ったら奥をえぐるように突いてくる。
「やだあっ!こわいっ、おさむさんっ」
「大丈夫、こわいことあらへん。おっきく息して日向、ほんで吐いて」
ゆるやかだが腰の動きは止めず、言葉だけは蕩けるほど優しくかけられる。
言われるまま息を吸って、吐き出す。
酸素が入りパニックになった思考が徐々に落ち着きを取り戻す、しかしそうすると体内に入り込んだ治の形をまざまざと感じてしまい、ナカをきゅうっと締め付けた。
「っ、ひなたちょおゆるめて」
「むりに、きまってるじゃないですかあっ」
苦しげに呻きながらも、治は日向のナカを搔き回す。
気持ち悪いだけだったそれも、繰り返される抽挿に気持ち悪いだけではなくなって、萎んでいた日向のそれが緩く立ち上がり始める。
荒い呼吸の中に艶のある声が混じり始めた頃、動かすだけだったそれがいきなり角度を変えた。
「ぁっ、あぅっ、んんんっ」
「さっきんとこ、どこやったか」
「ああ、アッ、ひぃあ、だめっ」
「ここか?」
そう言うと、のしかかるように突きあげられた。
指で押されイかされたそこに、思い切り当たる。
「あ゛あぁっ!だめ、そこしないでぇっ」
「そんなゆうて、顔とろっとろやんか」
「あぁっ、んぅっ!あっ、ぁっ」
ずんずんと突き上げられ、もはや喘ぐことしかできない。
こんな所に入れられて気持ちいいなんて思うはずがないと思っていたのに、いつの間にか引き抜かれる度、奥をこすられる期待で体が震える。
「はぁ、ひなた…」
気持ちいいのと苦しいの狭間で、治の気持ちよさそうな声が聞こえてきた。
「っ、アッ……きもちい、ですかっ?」
「…きもちええよ、さいこうや」
甘く低い声が耳をくすぐる。
それに何故か喜びを感じて
ならいいか、と、思ってしまった。
「おさむさんっ、そこ、きもち、っあ、おれまた、」
「おれもそろそろあかんわ、ひなた、っ」
抽挿が早くなる。
ナカで治が大きくなり不意にえぐられ、あっと思う間もなく日向は本日3度目の精を畳に吐き出した。続くように治は最奥を突き上げ、体を震わせて動きを止めた。