○○券


「なにこれ」

「空欄に好きな言葉書いてください!」

 日向が渡してきたものは、紙きれの束だった。

「肩たたき券みたいなもの?」

「はい、そうです! 角名さん誕生日近いので、一日一枚消費してください!」

「強制かよ」

 ちがいますー、と口を尖らせる日向にひとまず頬を掴んでむにむにしておいた。

「いはいっ(痛い)」

「はいはい」

 手を離し、ソファーに背を預けながら、ゆっくりと考える。その隣で日向はまだかまだかと身体を揺らす様が視界の端に映っていた。

「じゃま」

「うわっ!」

 手でその肩をあちらへ押しやると、力に負けて日向がうつ伏せとなったが、無視しておいた。ぶつぶつと恨み言が聞こえるが、聞こえないふりをして、この券をどうするか考える。
してほしいこと、ほしいもの。なにかあったか? 数秒考え、俺はボールペンを手に取り、紙に書き込んだ。

「はい、これでよろしく」

「できましたか! どれどれ〜」

 券を日向に渡し、どんな顔をするのかと少し座り心地の悪くなったソファーで待つ。すると、すぐに吹き出した声が返ってきた。

「角名さんらしい〜! はい、どうぞ!」

 腕を広げ待ち構える日向に俺は言う。

「……そっちから来るべきでしょ」

「もー、素直じゃないっすね!」

 締りのない日向の顔が近付き、俺は抱きしめられた。

「ハグする券、なんてこれに書かなくてもいつでもしますよ!」

「こういうのがないと恥ずかしいから」

 日向の匂いがする肩口に擦り付きながら話すと、くすぐったいのか身を微かによじった。

「なら、残りのチケットもハグする券にしますか?」

 背中をぽんぽんと優しく叩いてくれる日向の手が温かい。俺は油断しきってる日向の耳に唇を寄せて囁いた。

「今度はエッチなやつにする」

「なっ!?」

 小刻みに身体を震わせる日向に合わせて、俺も背中を揺らした。