# 02


治のことを意識するようになったのは何時だったか。侑とチームを組んでから、侑と治の性格や考え方の違いに気づいた。
最初は世間話のつもりで栄養学の話を振って、そこから食に対する真剣な態度に惹かれていった。
おにぎりを頬張る翔陽を見守る視線は熱く、見つめられてドキドキした。
甘酸っぱい想いを味と食感として記憶に刻みこまれる気がした。
「侑さん、おれ、また治さんのおにぎり食べたいんです!異常でしょうか?」
と侑に聞くと
「は?そりゃ、サムのおにぎり気に入ったってだけちゃうんか?」
と不思議そうな顔をされた。
「そう、デスね」
言われてみたら、そんな気がした。
その後も何度もおにぎりを食べに行き、その度温かい目で治に見られて、息苦しくなるような気持ちになった。
食べれば食べるほど、味わいたくなる。
もっと、もっとおれが食べるのを見て欲しい。そんな気持ちが募り、侑無しでもおにぎり宮に通うようになった。
たまごおにぎりを「特別に」提供されたことを知った時、あわよくばという気持ちがあったことは否定できない。
特別って、どう特別ですか?と聞けれないままに触れ合った手のひらから自分の下心が伝わる気がした。

「ん〜美味しいっ!」
誰も居ない時間に2回目の特別なおにぎりを提供してもらえた。
食べ終わってぺろりと手についた卵黄を舐めたら、カウンター越しに治に見られた。その視線に自分の抱く慾と同じものを感じて、じぃっと見返す。
「あの、おれ…治さんのおにぎり好きです。何だかバレーボールしてるときと同じ感覚になるんですよね」
もっと食べたい、味わいたい。満たして欲しい。練習すればするほど、もっとバレーボールがしたくなるのと同じだと告白したら、呆れた顔で「侑と同じくらいバレー馬鹿やなァ」と笑われた。
伝わらなかった…。一世一代の告白をしたつもりだったのに。
「あはっ、変ですよねぇ」と笑って誤魔化して「ご馳走様でした!」と会話を断ち切って帰ろうとした。
「翔陽くん、待ってや」
カウンターから出て、触れ合うくらい近くに来た治に「笑って堪忍な。変なことあらへん。俺も翔陽くんのこと、好きやねん」と告白された。
「バレー馬鹿の血肉になる食べ物を作るのは得意やから、オレに翔陽くんのこと満たさせて」とキスをされた。
初めてのキスは海苔とたまごの味がした。
◾︎
更衣室にて。
「あのおにぎり、たいして難しいもんやないで」
試作品をしこたま食べさせられた侑は、改良前後のレシピを全て知っている。手間がかかるとはいえ、工程としては難しいものではない。
それにも関わらず『特別なおにぎり♥』と、治と翔陽がイチャ付き合ってるのを端で見せられている。侑が多少意地悪を言ったとしても、許されるだろう。
「知ってます、こないだ一緒に作ったんで」
少しムッとした様子の翔陽が無愛想に答える。
「なんや知っててん?それで特別や〜♥とかよう言えるなぁ」
にやにや笑いながら煽ると、翔陽が目を細め睨んでくる。睨んだところで可愛い系童顔では怖くない。
「…侑さん、また彼女に振られたんですか」
「はァ?振られてへんし!振ったんやし!」
事実に近いことを言われ、思わず声が大きくなる。すかさず「五月蝿い」と佐久早から冷静に怒られる。
「いやいや、オレのことは関係ないやん?なんで」
「たいしたことなくても、治さんがおれの為だけに作ってくれてるんですよ?それで特別だと思わないから、だから…恋人が長続きしないんですよ」
大好きな翔陽に痛いところを突かれて黙り込んでしまった侑に、まわりのチームメイトは憐れみの目を向ける。
「日向、それくらいにしてやれ」

侑に幸あれ。