『トモダチ??』
「おはよー!けんじろー!」
風も冷たくなってきた10月。
朝練を終えた白布を見つけて後ろから声をかけた日向の鼻は寒さから真っ赤である。
「日向、はよ。鼻赤いぞ。」
「え!まじ!」
恥ずかしぃぃ。
自分の顔をペタペタ触る日向。白布は未だ赤い日向の鼻を摘んでは、拗ねる日向を笑った。
「あれ、白布のオキニじゃん。」
白布の隣から顔を出したのは一緒に部室を出た川西であった。日向は30cm近く高い位置にいる川西を見上げては少しだけ警戒したが、すぐにたこ焼きの!と思い出した。
「おーよく覚えてるね。」
「うん!けんじろーに名前で呼ばれてたから覚えてる!」
日向の言葉に首を傾げる川西。
確かに川西は白布に太一と名前呼びされている。だがそれは特別な訳では無く、同じ歳の友人には白布はだいたい名前呼びである。そんなに新鮮でない光景で覚えているとはどういうことか、川西は白布に視線を向けた。
「あー、そっか。なんか日向は日向で定着しすぎて名前呼びじゃないからな。」
「それは全然いいんだけどさ!なんか俺からしたら珍しくて覚えてんの!」
ニシシと笑う日向を横目に川西は、コイツら恋人かよと思うばかりであった。
キーンコーンカーンコーン
チャイムと共に終了した4時間目。次は昼休みだと言うのに、白布の隣の席からはいつもの元気な声は聞こえない。それに珍しいと視線を向けると、小さなオレンジは机に突っ伏していた。
「日向?」
白布は先程までの元気はどうしたと、日向のドンヨリとした空気感に心配で声をかける。さすれば日向は、ヨロヨロと無気力に顔だけ白布の方に向けてため息をひとつつく。
「うー…」
「なんだよ。」
「だってー…もうすぐテストじゃんかー」
あぁ。そういうことか。
白布は日向の言いたいことが分かった。日向は見た目通り、頭の出来があまり宜しくない。授業中は頑張って起きようとはしているが結局寝ていることが多く、小テストの点数も壊滅的だ。数学の教師に白鳥沢に15年務めているが初めてこんな点数を見たと言われる程で、何故白鳥沢に受かったのか不思議で仕方ないのだ。
日向曰く、マークじゃん!らしい。
「まだ2週間あるんだからちゃんと勉強したら大丈夫だろ。」
「お、俺、ホントに1個も分かんないよ…?」
ワナワナと震える日向は、先程まで使っていた教科書を開いてはナニコレと頭を抱えた。
今にも泣き出してしまいそうな日向を見て、白布は仕方がないと日向の机に自身の机をくっつけた。
「とりあえず弁当食べたら数学、教えるから。暗記は自分でなんとかなるだろ。」
「!!けんじろーーー」
「はいはい。」
さっきとは打って変わって周りに花を飛ばす日向。そんな表情がコロコロ変わる日向に、白布の口元が緩んだ。
「おぉー!!分かったかも!」
「かもじゃないから。完璧にしろ。はい、もう1回。」
「おす!」
白布は白鳥沢を一般で受かっただけあり、頭が良い。さらに言えば教えるのも上手いため、頭の悪い日向もなんだか頭が良くなった気分である。
昼休みが終わるまであと5分ほど。日向が解いている間に日向のワークに丸を付け、この丸を付けた問題を何回もやるように言い伝えた。
「けんじろー!おはよー!」
またまた朝練を終えた白布と遭遇した日向。
そんな日向は、白布の前まで行くなりノートを開いて見せた。
そこには、日向らしい字で解かれた問題全てに赤丸がついていた。
日向は大きな瞳をキラキラとさせ、そこに白布を映した。
「昨日けんじろーが丸つけたところいっぱい解いてさ!ほら!全部合ってたんだ!けんじろー教えるの上手いから頭悪い俺でもできるようになったぞ!ありがとな!」
ドキリ
白布の胸が脈打った。そんな感覚に白布は困惑する。日向の笑顔が眩しくて、ただただ逃げたい気持ちになった。顔に熱が集まる。それを見られたくなくて、白布は日向の顔にノートを押し付けると、まだテスト範囲終わってないからなと歩みを始めた。