# 01
五色が偶に手作り弁当を食べている。
そんな噂を聞いたのは白鳥沢バレー部の2年生レギュラー、川西太一であった。
白鳥沢で弁当といえば、売店で売っている冷えた弁当しかない。
別に不味いわけではないが、どこかの弁当チェーン店から下ろしているだけありチープな味と、保存が効く様に常に低温で置いてあり、食べる際は食堂や広間の電子レンジで温めて食べるものなのだ。
基本的に教室や中庭で食べたいだとか、食堂の気分じゃないだとか、そういう時に食べるもので、大半は食堂のメニュー豊富な暖かいご飯を食べる。
その他に弁当となると、調理室で自分で作る他無いのだ。
だが、わざわざ白鳥沢に入って律儀に弁当を作る生徒など見たことがない。
白鳥沢ではバレンタインの手作りチョコは禁止だし、毎日お弁当を作ってあげるね!と言う彼女がいたとしても、もともと偏差値の高い学校故に勉強に割く時間の方が優先され、結局三日坊主になるのが関の山だ。
とは言え三日坊主だとしても、それでも五色に弁当を作ってくれる様な人がいるとは信じられない。否、信じたくない。
もしも彼女だったら。
バレー一筋、部活に心血注いでいる白鳥沢バレー部には、彼女がいるレギュラー陣は1人もいない。
その1人目が、先輩達を差し置いて1年の五色になるなんて、川西はそんなこと許せなかった。
「最近あいつ、たまに弁当食ってるらしいぜ」
かと言って、後輩に彼女ができたことを1人で悔しがるのもなんだかみっともなく、旅は道連れとばかりに白布に話を持ちかけた。
「売店の?」
「違う違う、まじで手作りっぽいやつ」
「……」
白布は上げかけたトスを辞め、ストンとボールをキャッチすると川西を見た。
「手作り?」
「おう」
「誰の?」
「知らねぇから気になるんだろ」
「女?」
「さぁ?」
「一年坊主が?」
「本当な」
「…白鳥沢舐めてんの?」
「……こわ」
川西は白布がここまで怒るとは思っておらず、若干引いた。
「女にうつつを抜かして、牛島さんの足引っ張ったら殺す」
「怖っわ」
川西は白布の理由を聞いてさらにドン引きした。
かくして真相を探るべく、次の土曜日に調べようと言うことになったのだ。
そうして土曜日、川西は1人で五色の後をコソコソとついて回っていた。
(結局俺1人…)
あろうことか当日、白布は法事で実家に帰ってしまったのだ。
白鳥沢学園と白布の実家は近いので、すぐ帰ってくるとは聞いていたが、なんと五色はこの土曜日に弁当を持ってきた。こんな好機を白布がいないからと逃すのは惜しい。
結局川西は1人で五色の後を追うことになったのだ。
白鳥沢では土曜日は午前中に授業があり、午後から普通科は休み、部活動がある者は部活となっている。昼にコソコソ弁当を食べる五色を見かけ、午後の部活が終わると、その空の弁当箱をどこに持って行くのか注意深く着いていく事にした。
途中(自分何やってんだろ…)と正気に戻りかけたが、やはり、後輩に彼女がいた時の方がムカつくので、現場を押さえて3年のレギュラー、人をいじり倒すことに長けた天童覚に情報を流すと改めて決意した。
なんとも天童もびっくりのゲスな思考である。