# 04
食べ終わると川西と五色は洗い物をし、日向は何やらノートを書いている。
気になった川西は五色に尋ねた。
「何書いてんだ?」
「今日の料理日記です。日向料理の研究とか好きみたいで色々記録してるんですよ」
「ふーん、すごいな。…てか、五色。お前いっつもこんな美味いもん1人で食ってたのか?」
ジトリと睨まれ五色は、うっ、と詰まる。
「でも、こんな美味いもんばっかり食べてたら太らないか?」
「それが太らないんですよ、むしろ調子良いっていうか…、見てください」
五色はまくった腕にグッと力を入れた。元々バレー部で育ち盛りなのもあり筋肉は十分ついているのだが、背が高い分細く見られていた。しかし今はバランスよくがっしりした様に見える。
「確かに、お前最近調子もいいもんな」
「日向のご飯食べる様になってからです。聞いたら日向の奴、料理検定一級持ってて、栄養士と調理師の資格取るために勉強しまくってるらしいですよ」
「すげぇな」
川西は最後のお皿を洗い終わると水切りカゴに入れ、日向の近くに寄った。
五色に習い、前からひらひらと手を振り、視界から気づかせる様にする。
「終わったぞ」
[お疲れ様です!]
聞き手ではないのが幸いだが、親指の大きな絆創膏についつい目が行ってしまう。
それに気がついたのか日向も親指を見て、グッとサムズアップした。
[大丈夫ですよ!見てください!]
そうノートに書くと、川西の前に両手を差し出した。
手を見ればいいのかと覗くと、日向の小さな手にはいくつもの傷痕があった。切り傷や火傷の痕もある。
川西はギョッとした。
あまり目立つ大きなものはないが、薄っすらと痕になっている。虐待もかくやだが、日向は笑って[料理するのに、たくさん怪我したので慣れてます!]と書く。
それから川西の手を取り、さわさわと握るとパッと離す。
[川西さんの手もたくさん練習してるから、こんなに大きくて厚いんですよね?同じです]
川西はドキリとしてニシシッ!と笑う日向を見た。夜なのに向日葵でも咲いた様に明るく眩しいと感じる。
川西の手は身長に見合って大きく、ブロックやスパイクを打つために皮膚が厚く節くれだっていて、その節には青あざや切れた傷がある。バレーボーラーの手だ。
日向はだんだんと羨ましくなり、そっとノートを閉じた。
耳が聞こえない、ただそれだけでバレーをするには人より数倍難しいのだ。
だから、自分にできる自分の好きな事への手助けをしたい。料理で支えられるならそれが一番いい。
何だか少し気落ちした日向だったが、川西は気が付かずノートを閉じた手をグイッと握ると。
「かっこいいなお前」
と言い、続けて。
「俺も食費払うから、たまにメシ食わせてくれないか?」
「えっ!!?」
日向が答えるより先に五色が反応した。
「俺の分減るじゃないですか…」
ボソッと言う五色に、またヘッドロックをかけた川西。
「2人分食費払うなら今日みたいに2人分作るまでだろ。な、日向、俺もこれから一緒に食べていいよな?」
前半は五色に、後半は日向がわかる様に言う。
日向は「かっこいい」と言われたら事が頭から離れず、少し胸を抑えながら頷いた。
何だかとても嬉しくて、泣きそうな気持ちをギュッと胸で捕まえて抑える。
「じゃぁまたな、ごちそうさま」
川西は喚く五色を連れて廊下を出て行った。
「五色、また誘えよ」
「…うう、わかりましたよ」
先輩ゆえに逆らえない五色は渋々頷くしかなかった。