# 01
「ぐぬぅぅぅぅ…」
「…自分、いい加減うるさいで」
スマートホンを片手に唸り続ける片割れに治は重い溜息をこぼした。
かれこれ数分はこんな状態なのだ。勘弁して欲しい。
こうなった原因は自分たちを負かした、小さな烏…ちっこいくせに異様な存在感。
そんで、コートの中を縦横無尽に動き回って掻き乱してくれた烏野の10番_日向翔陽にある。
(ホンマに、厄介やなぁ…)
敗北し、コートを出る際、お互いに満身創痍の中、侑は翔陽くんに向かって「いつかトスを上げる」宣言をした。
それは、負け犬の遠吠えにも見えたが、俺には、何となぁく、これからもバレーを続けていくだろう侑が「この先のコートで待っとる」…要は、将来、プロ選手としてか、はたまた、日本代表か、自分は上まで行くから、当然そこまで来い、と言っているようにも聞こえた。
翔陽くんから明確に返事はなかったし、その応えを待つよりも早く、侑は言うだけ言って翔陽くんに背を向けたから正直、言葉の意味を翔陽くんがどこまで理解しているのかも分からない。遠目から見ていたが、翔陽くんは俺と侑の区別もイマイチついとらんかったのとちゃうやろか。
まあ、自分の言いたいことを言うだけ言って北さんらと合流し、着替えて、汗だくのユニホームを見つめながら、「あぁ、北さんらとコートに立つんは最後やったんや」と柄にもなく感傷に浸っとり始めたら、横で着替えていた侑が呻き出したのだ。
「なんや、腹でも下したか?」
「…アカン」
「は?」
「俺、翔陽くんの連絡先知らへんねん!!!」
この世の終わりだとでも言うように膝から崩れ落ちた侑に思わず、「こいつはアホか」と思った。
そら、そやろ。
逆になんでさっきの試合で会ったばかりの選手の連絡先知っとんねん。…周りを見ればもう各々バラけ、集合場所に向かった様で近くには誰もいない。
この面倒臭いのを押し付けられた感がビンビンしよる。
「…セッターのヤツは?合宿一緒やったんやろ?」
黒髪の、目つきの悪いセッターを思い出す。物怖じしない、好戦的なセッター。
あれで1年だと言うのだから、末恐ろしいものだ。
アイツ経由で連絡取ればええやろ、と言うと侑は小さく首を振る。
「飛雄くんとも交換してへんねん…」
なんや、合宿中距離置かれてもうてなーと、唸りながらユニホームを脱ぐ侑にまた、余計なこと言いよったんやろなと思った。
「普通に喋っとっても煽りよるからな…自分…」
こいつと同じDNAだと思うと頭が痛くなる。
替えのジャージを着て、ちんたら着替えとる侑に置いて行こうかと思ったが、人格ぽんこつを放っておいて何かあっても面倒臭いので大人しく着替えを待つ。
侑がジャージを羽織ったところではよ行くで、と声をかけさっさと北さんたちとの合流を目指す。
(これ以上、コイツの面倒みるのは、かなわん)
チラチラと向けられる人の視線が鬱陶しい。
「翔陽くんと連絡先、交換したいわぁ…」
「次会った時にすればいいやろ」
「次っていつやねん、明日会えると思うか??」
「知らへんわ、次は次やろ」
交換したいと、何度も続ける侑にイライラしてくる。
なんや、コイツ。
ホンマにめんどくさい。いや、知っとった。1度興味を持ったおもろいもんへの、こいつ執着はめんどくさい。
特に、バレー関係はそれが顕著や。
俺の足は、さらにスピードを増していく。
人混みをひたすら前に進む。
後ろの侑がなんや、まだブツブツ言っとるが無視や。
もう、ホンマに知らん。
「だいたい…あれに興味持ったんは自分だけとちゃうで…」
自分だって出来ればお近付きになりたい。
あんな、腹が減る試合をした相手だ。
(興味を持たん方が、おかしいやろ…)
考えていることが侑と同じということに、若干の不満を感じるが。