死出の山から


彼の人は、ただじっと待っていた。
 蜘蛛のように糸を張り巡らし、獲物を狙ってただただ、じっと。
 張り巡らせる糸は強固である必要はない。どんなに脆く、危ういものだったとしても構わない。この糸に求められるのは柔軟さだ。
 何が起こったとしても、対応出来るように努める強さだ。
 そのための準備にどれだけの時間をかけたかなんて、そんなことはどうでもいいものだった。
 今はじっと、動き出すタイミングを見計らっている。
 仕掛けは上々。この時のために揃えた駒を動かすタイミングを、そして自らが動くタイミングをただ、じっと待っている。