# 01


「侑、新喜劇とM-1どっちがいい」
昼休憩時、まもなく午後練を開始しようかと言うときだった。いつものようにスマホをいじっていた角名が唐突な質問を投げかける。腰を上げかけていた侑は半端な姿勢でいったん止まった。
「俺ボケがええ」
「やらない」
「なんや急に。観覧チケットでもくれるんか」
 中腰で角名の顔を見上げると緩く口角をあげた、いかにもな表情がそこにある。
「誕生日プレゼントあげようかなって」
「ひと月前やけど?????」
 既に十一月半ば。宮兄弟の誕生日は十月の初旬。
「っは!せや!あん時ケーキ治の分しかなかった!」
「もうちょっと根に持つかと思ってたけど案外忘れててくれて良かった」
「思い出したわ!今っ!」
「食いもんは治に渡した方がいいかなって思って。あとは懐具合だよね」
しれっと角名が言えば、ぴたりと言葉を止めた侑は数秒思案し「せやな」と素直に頷いた。この前盗み食いがバレてケンカになった事を思い出したのかもしれない。傍から見ればしょうもない事だが、こと飯や食い物に関してはわかりやすい逆鱗になっているのでわざわざソコをピンポイントで狙いに行く侑にはM疑惑がたまに持ちあがる。
「で、どっちがいいの」
立ち上がった侑は腕を組んで首を捻る。存外真剣に悩んでいるようだ。
 体育館内にコーチや監督の姿がまだない上、主将の侑が練習開始を号令しないため部員達も体育館内にはいるもののまばらに散らばっている。なんや、と治と銀島が寄ってきたところで「M-1…M-1にする! 新喜劇は距離的に普通にいけそうやし」と侑が宣言したところで角名が素早くスマホの画面をタップした。
 途端、大音量で流れる聞き覚えのある出囃子。「うるさ」と本人が顔を顰めた事に侑はツッコもうとし たが、それより先に派手な金属音が体育館内に響き渡った。思わず背後を振り返る。ガンッと端に当たった体育館の扉が反動で戻って喧しい音を立てた。
「烏野高校2年 日向翔陽です! 宜しくお願いしァス‼」
「影山飛雄、セッターです。よろしくお願いシャス!」
「いやボケへんのかい!」
「さすが銀。ナイス反射神経。尾白さんの後を継ぐもの」
「継がんわ!やめぇ‼」
拍手する角名と必死に否定する銀が騒がしい。治がやけに静かな兄弟へ視線を向けると、なんともまあ可哀想な位に間抜け面をさらして二人を見ていた。