五日
男子バレー部に新入部員として入った者が、練習についていけなくて脱落者が出て、少なくなった一年生を含めての合宿が始まった。
五色は下手くそながらも、有り余る身体能力でレギュラーを狙う、同じ一年の日向に戦々恐々としていた。
五色は元々、スポーツ推薦で入学したようなもので、一年の中で唯一スタメン入りした実力者でもある。
日向は一般で入学して、バレー部に入ったと知った他の部員は心配そうにしていたが、一部を除いての実力を知って、彼の成長を楽しみにしていた。
サーブレシーブは下手くそだが、それを補うだけの能力を持っている。
サーブレシーブは、毎日の反復練習でしか実は付かないため、それを日課にしつつも、他の実力にスタメン入りでなくても控えには入れてもおかしくないため、スタメン入りした者達は後ろから追い抜かれる恐怖を感じながら、練習に身を投じていた。
そんな訳で、五色もまた日向をライバル視している。
彼は牛島をライバル視していて、自分の方がエースに相応しいと豪語して真っ向から対抗意識をしているが、牛島に相手にされなくて苛立ちが強くなっていた。
日向もまた、エースである牛島に憧れていたが、五色と違い、尊敬の念が強く、彼みたいなエースにはなれないが、エースと呼ばれるくらいに強くなりたいとはっきり宣言していた。
それは全員の前で言っていたため、二種類の違う視線が牛島に向けられるのを、チームメイト達はひそかに楽しんでいる。
そして現在、合宿中の深夜。
五色は腹に重みを感じて、目を開いて確認すると、日向の腕と頭が乗っているのに気づく。
確か隣で寝ていたはずだが、と思った時、彼から寝相が悪いから先に謝っとくなと言われた事を思い出して、なるほどと納得する。
布団は蹴飛ばされていて、日向を端にして正解だなと思いつつ、五色は彼の上半身を横にずらして下ろした。
…こうして見ると、本当チビだよな…
クラスが違うため、部活でしか会う事はないが、小さな体で童顔のためか、もしくは周りがやたらと大人びた同年ばかりのためか、日向が中学生に見えてならない。
初めて見た時は、リベロ希望と思っていただけに、裏切られた時の驚愕はバレー部の歴史に残るくらいに、かなり大きなものだと先輩から聞いた。
寝ていると、練習している時の表情より更に幼く見える。
体を丸める姿に、何だか猫みたいでくせ毛の髪をそっと撫でれば、日向の口元がわずかに緩んだ。
ますます猫みたいで、噴き出しそうになるのを押さえて、頭を撫でた手をずらせば、不意に日向が手を伸ばして五色の手を、正確には人差し指を握りしめた。
何で指、と胸の内でツッコミを入れてしばし眺めていると、彼はそのまま顔の近くに引き寄せて、離してくれた。
理由は分からないが、手を離してくれた事にホッとする。
何だか目が離せない日向に、五色も練習相手になる事が多いが、こうして寝ている彼を見ると、やたらと庇護欲が出ていた。
それが今現在の理由であって、五色は何でだろうなと思いつつ、離された手で日向の頭をまた撫でた。
…お前は頑張り過ぎるんだよ…
人一倍、練習しているのを見て知っているだけに、ちゃんと休むよう面倒を見るのは五色の仕事になりつつある。
寝転んだ体勢に戻った途端に、定位置でもあるのか、日向はもそもそと動いて五色の腹辺りに頭を突っ込む形で落ち着いていた。
だから、何でそこなんだ、と頭痛を覚える五色だったが、面倒くさくて目を閉じて寝ようとすると、シャツを引っ張られる感覚がした。
恐らく日向だろうと、何となく分かってしまい、振り払わずにそのまま意識を手放すのだった。