白布と日向


久しぶりに、昔の戦略を使った事で、こんな戦い方をしたいと思うようになった。

「日向、ナイスキー!」
「よっしゃ!」

ガッツポーズを取る一年、今年に入学してきた新たな新入部員の意外な才能に、白布は口元を緩める。
中学生の時は、どちらかというと強気な攻め方をする事が多くて、速攻に間に合わせるために速いトスを上げていた。
その際に、一つ上の世代で県内で有名になっていた白鳥沢と北川第一の戦いを見て以来、白鳥沢で戦いたくなって進学して、バレー部でセッターの座を手に入れる事ができた。
スパイカーが飛び抜けて高いチームで、一番目立たないセッターでいるのも悪くない。

そう思っていたのに。

日向という、新しい一年が入って来て、実力を図るための練習試合をしていた矢先、意外な実力が発揮された。
瞬発力と脚力による動きに、速くトスが上げられて決まるスパイク、速攻を見て、自分も日向にトスを上げてみたくなったのだ。
ゆっくりと分かりやすいオープントスよりも、素早くブロックがいない場所にトスを上げて、スパイクを決めさせたい。
そんな事を思わせる日向に、白布は高校に入ってからずっと封じていた感情を、引きずり出されていた。

一年との練習試合が終わり、月日が流れてインターハイ予選が終わって、次なる大会に気合いを入れ直している頃、白布は休憩中の日向の元へと近づいていく。

「日向、今いいかな」
「はい!いいです!」

元気よく返事をして、日向が白布の所へ移動すれば、さっきまで一緒に話していた同じ一年で、唯一のスタメン入りした五色が眉を寄せる。

「白布さん、日向ばっかり構ってますよね」
「なんだ、嫌か?」
「そりゃそうですよ。俺だって、セットアップしたいのに、白布さんは日向とばっかりしてるし…」
「悪かったな」
「別に瀬見さんが嫌な訳じゃなくて!」
「冗談だよ」

後ろで話を聞いていたらしい、三年のセッター、瀬見が茶化すように口を挟めば、五色が慌てて弁明する。

「まあ、でも白布が日向を構う理由が分からなくもないな」
「え?そうなんです?」

腕を組んで、瀬見が白布がそうしたくなる理由が何となく分かるらしく、うんうんと頷きながら話を続けた。

「あれだろ?五色は若利にやたらと対抗意識持ってて、エースになるって言ってる。片や日向はエースになりたいけど、若利とは違う形での戦い方でエースになろうって思ってるから構いたくなる。それだろ?」
「ええ、そうですね。日向は五色とは違って素直ですから」
「白布さん!?」

叫ぶ五色に、瀬見が大きな口を開けて笑い出し、日向がオロオロと二人を交互に見るのを見つけて、白布は日向を引き寄せて場所を移動する。
いいのかな、と心配そうにする様子に笑い、彼の背後から肩に両手を乗せて歩くよう促しながら、白布は笑みをこぼす。
今は、牛島を中心とした戦い方でいいが、彼らが卒業してしまえば、日向と五色を中心とした戦い方に変わるだろう。
ならば、今の内に日向の基礎を安定させて、更には自分が彼にとってのセッターになりたいと考えていた。

「ほら、五色は放っておいていいから、練習するよ」
「はい!」
「こら待て、賢二郎」

瀬見に呼び止められ、白布は日向に先に行くよう促してから、背後に振り向く。

「お前ばっかりが翔陽を構うな。ついで、気に入られるような真似もすんなよ」

周りに聞かれないよう、押さえた声で言われて、白布は肝に命じときます、と返して、まだまだ青い雛鳥の元へと駆け寄るのだった。