# 01
秋分の日もいく日かを過ぎ、半袖で外に出るには寒くなってきた十月の半ば、まだ人影も見えない稲荷崎高校の校門では早朝から賑やかな声が響いていた。
「もっとはよ起こせ言うたやんけ! クソサム!」
「一回起こしたやん。ガタガタぬかすなクソツム」
「俺に聞こえてなかったら意味ないねん、今度からもっと声張れや!」
「やかましいわボケ」
仲良く並ぶ二つの影――宮侑と宮治は、その大きな身体を揺らして第一体育館へ競うように駆けていた。怒号で朝の乾燥した空気が割れるようにびりびときしむ。本来であれば双子の喧嘩をどやす稲荷崎高校男子バレーボール部の面々が横にいるはずが、その日は静寂が二人を包んでいた。
なんら不思議ではない。
「来るの遅かったら北さんに会ってまうやろが。この前のテストん時も朝練して怒られたの覚えとらんのか?」
「怒られたのは一緒にいたアランくんやけどな」
二人は勉強する時間も寝る時間も犠牲にして、テスト期間中は禁止されている朝練をしようとしていた。
前回のテスト期間中も、ホームルームや部活で自主練を厳しく禁じられたにも関わらず朝練を敢行して結局北に見つかった。「バレーと勉強は関係あらへん」という信条を貫き通し、北だけでなくアランからも説教を受けた記憶はまだ新しい。しかし、その説教も虚しく二人の信条は変わらず、本日に至る。
息を切らした二人は、まだ人気も感じられない第一体育館の入口にたどり着いた。とたん、違和感に気付く。
固く閉ざされているはずの鈍色の扉は、何故か僅かに開いたままだった。その隙間からは聞き慣れたバレーボールの弾む音が聞こえてくる。
侑と治は、思わず顔を見合わせる。「俺ら一番やんな?」「他の奴見とらんしな」というアイコンタクトが通じるのは付き合いの長さ故か。不思議に思った侑が、治の前に進み出て中の様子を覗く。
――――ドンッ
硬い床を踏み台にして、何かが高く高く上がる音。
体育館の高窓から漏れる薄く眩い日差しが、それを照らしていた。
「………あれ、なにもん?」