電波なヤツには関わらない方がいい
首根っこをつかまえてヒョイと持ち上げ、ソファまで運んで行って座らせる。
向かい側のソファにどっかりと腰を下ろし、頭を掻いて。
「……で、なんだって?」
「以前助けていただいた犬です。恩返しに来ました」
「…………あー、うん、あれね。犬ね。あれか、この前依頼で探したバーさんとこのペットのポピーちゃんか。いやーあん時はヤバかったよね〜、お前いくら迷子になったからってうっかりヤクザの家に上がり込むんじゃねェよ、俺まで殺されかけただろーが」
「全然違ェよ犬違いだ。なんだよポピーって、かわいい名前しやがって。どうせあれだろプードルとかだろ」
「いや土佐犬」
「センス!!」
「おいおい人様のネーミングセンスに文句を付けるなよ。テメェのペットにどんな名前やろうが飼い主の勝手だろーが」
「でもぶっちゃけお前もどうかと思っただろ?」
「まああの子確かにポピーって面じゃなかったけどね。しかもオスだしね」
「オスだって分かってんのに俺をポピーちゃんとか言ったのお前??」
「まあまあまあまあ。……で、おたくはドコの誰だって?」
「以前助けていただいた犬です。恩返しに来ました」
「君それしか言えないの????」
頭が痛い。
目の前の少女はどこをどう見ても人間だ。犬ではない。まさか鶴の恩返しよろしく犬が人間に化けて来たとでも? いやいやまさか。ありえない。
これは、あれだ。世に聞く「電波」というやつだ。関わらない方がいいアレだ。
「あー、まあ、どっから来たのか知らんけど、取りあえずおうちの人が心配するから今日のところは帰んなさい」
これが無難な大人の対応だろう。多分。本音、取りあえず帰って欲しい。
「野良犬だから家も家族もねェよ」
「……あ、そう」
「お前が俺を覚えてなくても、俺はお前を覚えてる。ずっと感謝してて、恩を返したいと思ってた。だから来たんだ」
真面目な顔だ。それは嘘を吐いているとか、妄想を語っているとか、そういうのとは明らかに違った。犬云々はよくわからないが、銀時に恩があるというのは本当かも知れないと、信じさせる顔だ。
だが、果たして恩返しとは。具体的に何をする気なのか。というかそもそも誰なんだ。恩って何だ。助けたって、いつだ。
かなりの美少女だ。一度見たらそうそう忘れないだろうと思う。しかし見覚えはない。
もしかしてマジで犬とか? そんなアホな。
「ひと月」
「あ?」
いつの間にか、少女はピンと指を一本立ててこちらに示していた。
「ひと月の間だけ、ここに置いてくれ。それ以上は迷惑かけない。ここにいる間は家事でも仕事の手伝いでも何でもやる。それでもお前がしてくれたことに釣り合うとは思ってねェけど……。これは、単なる俺の自己満足だ。どうか付き合っちゃくれねェか」
ひと月。
長い、けれど意識すればあっという間に過ぎる期間だ。
色々と疑問は残る。が、ある意味これも依頼だ。ひとまず、頷いてみせた。