人生ってのは一難去ってまた一難の繰り返し
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「え?麻薬の一種ですか?」
「そ。タチ悪ィやつらしいわ」
クラブ・モエモエ事件から数日後のこと。銀さんは珍しくパンを数個買っては表の腰掛けに座ったので、牛乳を差し出した。
あの日は銀さんの胸で馬鹿みたいにわんさか泣いたあと、騒ぎを聞きつけた真選組が乗り込んできて、楊枝さんは脱税と不法薬物の所持でその場で御用となった。
どうやらあの日私の身体に起きた異変は、楊枝さんが取引している薬によるものらしく、その薬は私が烏龍茶から目を離したスキに入れられたのを銀さんが見ていたとのこと。真選組のゴリラ局長に事情を説明し病院で診てもらうことになり、1日入院するこことになったが、もうすっかり回復してまたこうしてパン屋で働けている。
ちなみに万事屋の依頼案件は何だかんだツーショットを撮れていたみたい。依頼者に報告して報酬を受け取ったみたいだけど、本人は浮気調査どころでは無く、楊枝さんが逮捕されたことに愕然としていたらしい。
「ま、一回だけなら身体に悪影響はねェってよ」
「そうですか…」
その言葉に胸を撫で下ろし、「じゃあ、ゆっくりして早く帰ってきてください」と言って店内に戻ろうとすると、腕を掴まれる。
心当たりがある人なんて一人しかいなくて、後ろを振り向く。
「なん、「なぁ」」
「はい?」
「お前、なんかあった?」
「…は?」
銀さんがいつになく真っ直ぐとした目で見つめてくるものだから、思わず目を逸らしてしまった。
「別に言いたくねェなら無理強いはしねーけど」
「変な人…」
パッと私から手を離した銀さんは粉砂糖塗れのあんぱんを頬張った。 あれ?なんか掴まれた所、すっごい粉砂糖ついてるんですけど。
―――――
「…うげ」
玄関を開けて可愛げのない声が出た。目の前には数枚の封筒。この中身は開けなくとも何となくわかっている。
最近多いのだ。これが俗に言うのストーカーってやつだろう。
「…気持ち悪い…」
家に入る前に周りを確認し、人気が無いのを確認してから入室し、しっかり鍵を閉めた。
足元に散らばった封筒を拾って居間の卓袱台の上に置いた。
「…いつ撮ってんのコレ」
「ずっと見ていました」「あなたの事が好きで好きでたまりません」と言った類のラブレターに、パン屋で銀さんと話をしている時の写真、沖田さんにお盆で叩こうとしている時の写真、銀さんのスクーターに乗せて貰っている時の写真、私が自宅に入ろうとしている写真付き。
コレを受け取った当初はゾッとしてすぐゴミ箱に捨てたが、最近適応能力が付いてしまったのか、「どこで撮ってんだろ…」と逆に関心さえし始めている。
「…ストーカー撃退ってことは、真選組…?」
ここはひとつ武装警察に相談してみよう。
―――――
「よォ、どうした?」
からりと襖が開いて土方さんが現れた。私は証拠のブツを持って真選組に相談しに来た。
「突然すみません、ストーカーが仕切ってる此処に相談しにくるのは間違ってるとは思っているんですが」
「…否定はしねェけど…」
吸い込んだタバコを天井に向けて吐ききった土方さん。かくかくしかじかで今までの経緯を説明すると、いつの間にか襖の側に寝転がっていた沖田君が目元の不気味なアイマスクを額に押し上げて口を開いた。
「ストーカーですかィ?貧乳に纏わりつくったァこいつは相当なマニアック野郎らしいな」
「黙りやがれ総一郎。…とにかく、心当たりも特になくて、困っているんです」
この人は殴ったってひらりと躱してしまうので、とりあえずキッと睨みつけておいた。
「ポストに入れられるのは写真や手紙入りの封筒だけか?」
「今んとこは…」
「ひでェケースは、自分の体液を付着させたティッシュなんか送りつけてくる変態もいる。用心しとけ」
「…た、いえき…」
たいえきって、体液?
よくニュースで見るアレのこと…?
「あばばばば!!!総一郎君手拭かせてェェエエエ!」
「ンなの土方コノヤローに擦りつけてくだせェや」
「土方さんんんんん」
「うおおおお!ちょ!一旦落ち着けェェエエエ!山崎ィ!!今すぐ除菌シート持ってこいィィイイイ!!」
「ハイ副長ォオオオ!すぐお持ちしますゥゥウウ!!」
山崎さんという方が除菌シートを持って来てくれて、私は手がカッサカサになるまで手を拭きまくった。
―――――
「あ、俺に名案がありやすぜ貧乳」
山崎さんが持ってきてくれた新品の除菌シートを空にするまで手を拭いて落ち着いた私。
その後に沖田君はぽん、と手を叩いた。
「貧乳言うな」
「ちょいと待ってくだせェ今連絡してきやす土方が」
「オメーじゃねェのかよ!!!」
「チッ、面倒くせェ」
「言い出しっぺはアンタだろうがァァア!」
「土方さん、貴方此処でどういうポジションの人間なんですか…」
沖田君がその場で携帯で何処かに電話を掛けた数十分後に現れた天パに私はげんなりした。
「どーもー万事屋銀ちゃんでーす」
「…え?名案てコレ?」
「え?何?人呼んでおいてコレって、コレってのは無くね?」
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