ちゃらんぽらんがかっこよく見えたら負け

◼︎


「旦那に護衛について貰うのが一番でさァ」

さも「俺チョー良いこと言った!」みたいな空気感を出す沖田君に全身全霊で突っ込んだ。

いや、突っ込まずには居られなかった。

「いやいやいやいや!何故あなた方警察に相談したとお思いで!?」
「よく考えてみなせェ。俺らは他の仕事に全うできるし、旦那は収入入るし、アンタは護衛について貰える。皆んなハッピー万々歳でさァ。ハッピーエンドでィ」
「善良な一般市民の安全を守る仕事はアンタらの中に入ってないのかい」

バンザーイなんて棒読みで手を挙げる沖田君。そのうちそのサラサラな頭の毛むしり取ってやるからな。たった今決意したから。

「オイオイ、主人公差し置いて何勝手に話進めちゃってくれてるんですかァー?」
「あー、そのですね、かくかくしかじかで…ぐっ」
「それで伝わると思ってんじゃねェぞコノヤローいだだだだ」

銀さんに適当に説明しようとしたら顎をガッと掴まれたので、その手をちみくってやった。

「ンですかィ…、アンタら何だかんだ仲良いじゃねェですか」
「アララ此れが仲良く見える総一郎君はよっぽど目が悪いらしい」
「旦那、総悟でさァ。何回言わせるんでィ」
「アレ、いつ改名したのかなァ総一郎君は」

…こっちからしたらアンタ達の方が仲良さそうに見えるわドSコンビめ。
視界の隅で土方さんがメモ用紙に何かを書いていて、それを千切って私に差し出した。

「まァ、アンタの家周辺のパトロールは強化しておこう。何かあったらすぐ連絡寄越せ」
「あ、ありがとうございます…」

ほう、土方さんの携帯番号…!ちょっと感心していると左右から銀さんと沖田君が私の手元の紙の覗き込むようにしてくっついてきた。

「多串君ったらスミに置けないねェ!!年頃の女の子に連絡先教えるなんてよォ!心配するフリして襲いに行こうってワケェ?男はみんな狼だもんなァ」
「万事屋テンメェ…!!」
「土方クソヤローに先越されちまいましたね旦那ァ」
「な、なんの話かなぁ総一郎くーん!?」
「総悟テメーはさっさと持ち場に戻れやァァアアアア!テメーらも用が済んだらとっとと帰れ!!」


―――――


「ったく、オメーはなんなんだよ。次から次へと厄介毎引っ張ってきやがってよー疫病神ですかァ?」

あれから銀さんと屯所を後にした。銀さんはスクーターに跨りながら、足で蹴って私のスピードに合わせて進んでいる。

「此間のはそっちが引っ張ってきたんでしょう。私巻き込まれた方ですからね。頭おかしいんですか?…あっ、すみませ、今のは中身の話で、決して毛の方では」
「おい、誰が毛がおかしいって?」
「毛の方ではないって言ってるでしょうが」
「ったく素直じゃねーなお前は」
「この状況に素直もクソもあるんですか?ていうか何でこっち付いてくるんですか?家反対じゃないんですか?」
「ですかですかうるせーな。現場確認に決まってンだろーが。別にオメーんち好きで行くわけじゃねーからな」
「いやだから頼んでないからな」

「さっさと行くぞ」と言ってスイスイ私の家の方へ進んで行く銀さんの背を、私は小走りで追いかけた。

「ちょ、マジで上がる気ですか?」
「ストーカーっつったら定番だろ?盗聴よ」
「…は?」

アパートの駐輪場にスクーターを止めて、銀さんはぐんぐんと二階へと上がっていった。その途中の会話に盗聴というキーワードに急に血の気が引いた。

鍵を持ったまま呆然と立ち尽くす私の手から鍵をひったくった銀さんは我が物顔でドアを開ける。

「定番中の定番だろーが。邪魔するぜー」
「…っ」

いつものこの出掛け先から帰ってきた後の玄関がちょっとだけ怖い。

玄関先に落ちていたハガキにドキリと心臓を跳ねらせると、銀さんはそれを手に取り「今月の光熱費請求だとよ」と言って私に渡してくれた。良かった…。

「…そんなにこえェなら依頼すれば?」
「…99パーセントオフ行使します」
「ァアアアアア!おまっ、それ覚えてたのかよ!!」

99パーセントオフの件は9話を見てくれ。そこに証拠がある。

ちょっとビビり気味の私に気を遣ってくれた銀さんに、ちょっとだけ安心したのは内緒だ。死んでも本人に言いたくはない。


―――――


「ーーあの、あんまりジロジロ見るのやめてもらえます?」

多分、盗聴器や監視カメラと思わしきブツを探しているんだろうけど、何故か部屋をじっくり見られている気がしてちょっと恥ずかしい気もする。
いや、盗聴器や監視カメラがある方がヤバイのだけれど。

「…お茶どうぞ」
「名前」
「、え!?」

銀さんがどのくらい居座るのか分からないので、取り敢えずお茶を出したところ、不意に名前を呼ばれた。
顔を上げると腕を引っぱられて、気がついたら目の前には天井をバックにした銀さん。

そこで押し倒されてことに気がついて、顔がカッと熱くなって、頭がパニックになった。

「ちょっ…!!」

銀さんの小豆色の瞳が、いつもに増してギラ付いて見えて。顔がグッと近づいてきたので思わず目を瞑った。

何この展開!聞いてない!

「ジッとしてろ」
「!」

耳元でそう言われて、パニック状態の頭は只々言う事を聞く事しかできず。
何が起きてるの?て言うか、銀さんこんな良い声してたの?いつものちゃらんぽらんどこ行ったの?なんてどうでも良い事が頭の中をグルグル駆け巡る。

「〜〜ッ」

多分時間的には数秒だったのだろうけど、何分にも感じれて。さっと身を引いた銀さんは、多分この上ないくらい顔を真っ赤にした私を見下ろしてニタリと笑った。

「あらあら、お顔が真っ赤ですよォー?もしかして銀さんに惚れ…ぶふぉ!?」
「お願いだから一回だけちょっと死んでみてもらって良いですか?」
「…て、てめっ……一回だけって、死んだら人生コンティニューできるわけねェだろ…」

いや、それはない。ありえない。
心臓がバクついて五月蝿いのは、急な事でびっくりしたからで。

鳩尾を抑えて蹲るこの人に、そんな感情は無いのだ。私は再三自分に言い聞かせた。


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