流れ星見た事を一番に伝えた人が大事な人

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その日はまァー、朝から騒々しかった。

朝の7時頃。まだ良い子は寝てる時間だっつーのに遠慮なしにけたたましく鳴る電話に叩き起こされ、シカト決め込むも神楽に寝ぼけながら「うるせーから早く出ろヨ」なんて起き抜けに腹パンかまされて止むを得ず電話に出た。

「はいはい万事屋銀ちゃんでーす。ただ今睡眠中につき電話に出れねェんで、後ほどお掛け直しやがれでーす」
『ふざけたこと抜かしてんじゃないわよ!!』
「あ?おたく誰?」
『大江戸病院の田中よ!!苗字名前さん!そっちにいない!?』

あー、あのドロップキックかましてくれたババアね。その節はどうも。
ババアは妙に切羽詰まった声で名前の名前を挙げるもんだから、嫌な予感がした。何言ってんだ。

「…は?いるわけねェだろ、おたくんとこで入院してんだからよー」
『それが…、居なくなったのよ…。最初は病室の鍵が閉まっていて…返事もないから管理鍵で入ったのよ。そしたら姿も無くって…!』

このババア夜勤明けかなんかのせいで寝ぼけてんのか?勘弁してくれよ…。

「……オイオイ、そんな映画みてェな話ある?真選組いたんだろ?」
『…実は病室の窓からベッドシーツが外に出てて…きっと窓から抜け出したに違いないわ!』
「…」
『院内もくまなく探したけれど見つかってないの!…アンタ、心当たり無い?』

無ェことは無ェ…。クソ、昨日のあの他愛ねェ話の中で腹決めてたってのかよ…あの女。

「…ションベンでも行ってんじゃねーのか?」
『窓から抜け出してまでかァアアアアア!!』
「…チッ、分からねェけどよー。取り敢えず手掛かりがありそうな場所には行ってやらァ!」
『あっ…ちょっと…!!』

無理矢理電話を叩きつけた。…何考えてんだあの馬鹿女…。


―――――


「ーーおい、いんのか。俺だ」

安っぽい鉄製のドアを叩いた。

インターホンを鳴らしても中から誰も出てきやしねェ。まー、嫌な予感がしながらドアノブに手を回してみりゃ案の定すんなり開いた。

「名前チャーン?入りますよー?」

不法侵入!!だなんて殴られねェように構えながら部屋を進むが、奥の寝室に行っても人気はなかった。

「…こいつァ……!」

ベッドの脇にあったのは血塗れの包帯と病院服。と、大量の麻酔テープの空袋。
反射的にあの刀袋を探した。思考がどんどん最悪な方向に向かっている自分にそろそろ本気で嫌気が差してきた。

「…ねェ…」

それと同時に部屋を飛び出た。

とりあえず思った以上にヤベェことが起こってるのは分かった。原チャのエンジンを掛けながら次の場所を考える。どこだ?アイツならどこへ行く?

「銀さん!こんなところに!!」
「うお!」

俺の隣に降り立ったのは紛れも無くさっちゃんで。いつものふざけたような雰囲気はなく、こいつもやけに切迫した様子。勘弁してくれよどいつもこいつも。

「名前を助けて…!」
「場所は!」
「江戸墓地よ…!」
「乗れ!」

普段ならぜってェこんなことねェが、非常事態だ。
さっちゃんを後ろに乗せ、墓地へ向かいながら後ろに話しかける。

「オイ!なんでオメーがそれを知ってんだ!」
「依頼があったのよ。…辻斬りの暗殺依頼が」
「…暗殺依頼が出るまで大事になってんのか」
「仲間の情報を元に江戸墓地に向かったら名前が先に居て、…そしたら手を出すなって…!あの子きっと…刺し違えてでも……きゃっ!!」
「…させるかよ…っ!」

アクセルをぶっ放した。


―――――


「銀さんあそこよ!」
「!!」

真剣が弾き合う音の方に駆け寄れば、墓地のど真ん中で斬り合う2人の姿を捉えた。名前は刀を弾かれ丸腰の状態で、相手の男、名前の部屋にあった写真の男は容赦なく刀を振り上げた。

ーーーさせるかァアアアアア!!!


――ガキィィイイイン


名前の身体をしっかり抱き込み、右手に木刀を持ち、ヤツの刀を受け止めた。消毒液臭いような、血生臭いような、そんな匂いの塊をしっかり抱く。

病人臭さの中に有るコイツ自身の嗅ぎ慣れた匂い、小さな体、その体温に正直もうこのままずっと離したくねェと、強くそう思った。

「な、…なん、なんで…!!」
「…兄貴ってのが…どうして一番最初に生まれてくるか知ってるかァ…?」
「あァ!?誰だオメーは!」
「後から生まれてくる…弟や妹を守るためだっつってんだよコノヤロー!!」

力任せに刀を押し上げた。


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