荷物は一人より二人で持とう
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妖刀に取り憑かれた業とのケリをつけてからは早かった。
さっちゃんのケータイを借りて真選組のパトカーを呼び、俺と名前は病院行き。
「何怪我増やさせて来てんじゃコノヤロォオオ!!」と名前の主治医から意味不明の罵声と荒療治を受け、おかげで身体は更にズタボロだ。
「治す側の人間が傷作ってくれちゃって…何考えてんだかあのクソジジイ共」
増えた傷に不満を抱きつつもベッドの上へとチラリと視線を上げれば、名前は窓を見上げていた。
不意にまた何処かへ勝手に消えるんじゃねェかって焦燥感に駆られ、柄にもなく焦って話しかけた。
「今度こそ抜け出すんじゃねーぞ馬鹿女」
「いたっ」
ポケーっとしているコイツに「人の話聞いてんのかコノヤロー」とビシッと指で額を弾いてやった。
「じゃ、俺ァけーるからな」
「さっさと帰れ」
いつものような減らず口だったが、やはり何処と無く覇気が感じられねェ。
「次はガキ共連れてくるわ」
ベッド周りのカーテンを閉めると、出入り口へ向かい、スライド式の扉を開けた。けれど何故かそれから先は足が動かなくて、開いた扉は自動的に閉まった。
何か、このまま帰ってはいけないような気がして身体が動かねェ。
「…っ……ぐずっ……」
「!」
わずかに聞こえたその声に耳の神経が全部其方に持っていかれた。よく考えたら兄貴が死んでからまだ一度もアイツの涙を見てねェことに気づかされた。
静かに声を殺して泣くその声に身体は自然とアイツの所へ動いていた。
「…兄さん…!!」
絞り出したかのような声に俺はカーテンを荒々しく開いた。見下ろせばベッドの上にはちいせェ身体をさらに丸めて、包帯だらけの腕で口元を覆った名前の姿。
こちらの気配に驚いたのか、顔を上げるより先に手が動いて、名前の身体を引き寄せた。
「……え、…」
「…ちっせー身体で全部背負い込みすぎんだよ。俺にも荷物分けろや」
「ぎ、ん…」
細くて折れちまいそうなその身体をしっかり抱き込めば、震え始めた。
「がえっだんじゃ、ながっだんですが…っ」
「ンな俺よりも死んだ魚みてーな目ェしたヤツほっとけるかってんだコノヤロー」
「うぅ…っ」
鼻水をグズグズ啜るコイツの頭を軽く叩いて、後頭部に顎を乗せた。
「…今な、銀さんの男前な胸、レンタルサービスしてっから、黙って借りとけ」
「…ははっ、…こんなイチゴミルク臭いやつの…何処が男前なんだか」
イチゴミルク臭いって、洗濯したての服なんですけどォー。
ゆっくり力を抜いて遠慮がちに俺の方に身を預ける名前がどうしようもなく愛しくなっちまう。
「…っ、わぁあああああっ!!」
全部俺が受け止めてやっから、取り敢えず泣いとけ。
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