動物って動作表現で済むから小説に練りこみやすい

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今日も一日子どもの面倒を見ていて疲れていたからか、突然銀さんに腕を引っ張られた私は踏ん張ることも出来ずにそのまま銀さんに倒れ込んでしまい、抱きすくめられる。

「あの、銀さん…?」

ふわふわの銀髪が頬に当たって擽ったくて身をよじるが、それ以上に銀さんが力強く抱きしめてくるから動くにも動けなくなってしまった。

すっかり吹っ切れてもう踊らされることがないと思った心臓が騒ぎ始める。

「あのな、お前の兄貴に言った言葉。忘れた?」
「人の心は移ろいやすし、とも言いますしね」
「冗談じゃねェぞ。俺ァお前だけだコノヤロー」

後頭部を押さえつけられてもうこれ以上距離を縮めようがないのに、ぐっと距離が近くなった。極め付けになんたる落とし文句だこのやろー。

…あ、銀さんのシャンプーの匂い。

「だって、こないだお妙ちゃんに…」
「あーそれな、ちょっと聞いてくれる?」


ポンポン、と私の頭を撫でて身体を離してくれた銀さんはベンチに座るように指差した。私は熱くなった頬をぺちぺち叩きながら素直に座った。

それから私は銀さんから土方さんと魂が入れ替わってしまったこと、その為にはお妙ちゃんの飼っていた猫がいること、あの告白は銀さんの身体の中に入ってしまった土方さんがやったこと、などを色々聞かされた。


「ーーってな感じなんだけどよ…。信じてもらえるかわかんねェぶっ飛んだ話だけど…」
「…信じますよ」

不思議とそれは嘘とは思えなかった。

あの時お妙ちゃんの家を出た時に真っ先に駆けつけて来てくれたのが銀さんだったと思えば、腑に落ちた。

「え?マジ?ホントのホントに?」
「ホントです」
「マジか!え?嘘?ホントに信じてくれんの?ホントのホントにィイイぶべらっ」
「うるせェエエ!!!」

うっかり飛び出る右ストレート。騒がしい奴に自然とセンサーが発動して反射的に飛び出るようになってるのかな。

「で?」
「はい?」
「実際のとこ、どーなの?」

間が空いた。こ、これは、

「…うーんと…どう、と言いますと」
「オイオイ、俺ばっか言わせといてそりゃねェぜ名前チャンよー。小悪魔じゃねェか」

銀さんが組んだ足の上で頬杖をつき、右手がゆっくりと私の頬を撫でて、そのまま耳に触れてくる。

「…そろそろ銀さんのものになってくんない?」
「…い、いろいろ分かってるクセに何を…」
「気持ちってェのはな、目に見えねェ分ちゃーんと口にしてやんねェと存外わかんねェもんなんだぜ?…だからよ、名前の気持ち、教えてくんね?」

ニマニマと笑っているのだが、優しいような、色っぽいような、そんな眼差しで見つめられて一度はおさまったはずの心臓がひっきりなしに騒ぎ立て始める。

は、腹、くくろう。

「す、…すき、です、よ」

あれ、こういう時ってどこ見たら良いんだろう?顔?いや、恥ずかしくて見れるか!!ちょっと下…って鎖骨こんにちはしてるけどいいの!?さ、鎖骨に言うの私!?

「よく言えました」

本人をしっかり見れなくてそわついていたら、ふと銀さんが笑ったような声が聞こえた。

耳に触れていた手が首の後ろに回ってきて、銀さんの顔と私の顔の距離がぐんと縮まる。その後に起こるであろう出来事に私はぎゅっと目を瞑った。

「っ、」

首の後ろに回った銀さんの手の感触と鼻にはシャンプーと甘いお菓子のような匂い…じゃなくて………血の臭い。

「ア"アァァァア"!!!」
「!?」

あともう少しで触れるだろうと言う時に突然悲鳴を上げる銀さんに驚いてビクリと身体を震わせ見上げると、顔面血塗れの銀さん。

「あれ?定春、くん?」
「オイ定春ヤメロ!!!今マジですげェ良いところだった!!頼む!今度ちょっと高ェドッグフード買ってやるから!頼むから待って!」
「あれ?銀さんと名前さんじゃないですか」
「こんな所で何してたアルか?」
「新八くんと神楽ちゃん!」

銀さんの頭にかじりついてる定春くんに気を取られていると、酢昆布を咥えながらこちらに神楽ちゃんに買い物袋を提げてる新八くんの姿。
銀さんが視界の端で頭を抱えて俯いている。

「名前、いつになったら晩御飯食べに来てくれるネ?ベビーシッターはまだ終わらないアルか?」
「は?え?何、神楽お前知ってたの!?」
「あ、今日で終わったよ」
「そうだったんですね!お疲れ様でした。子どもの面倒って、大変ですよね」
「え!?3人してスルー!?」
「マジか!じゃあ、晩御飯一緒に食べようヨ!名前が来たら少しは晩御飯豪華になるアル」
「私単品じゃなくって、そっちが目的なのね」

まだちょっぴり熱い頬をさり気なく冷やす。
目の前で神楽ちゃんとあーだこーだ言い合う銀さんはつい数分前の大人の男の人と同じ人とは思えなくて、なんだか笑えてきた。

「ま、いっか」
「なにも良くないよね!?夢小説的に良くないよね!?後もうちょっとしたら読者待望の展開だっぶべら!」
「うるせェエエエ!!!」



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