屯所にお邪魔しに行ったら
◼︎
「名前ちゃんじゃねーか。奇遇だな」
お店に銀さんたちが遊びに来て次の日のこと。店長は用事があったので、お店は今日はお休みになった。
突然道端で後ろから声を掛けられて体が盛大に跳ねた。
「………万事屋さん!!」
「なんでそんなに間があんの」
「ちょっと…びっくりしちゃって名前がぱっと出てこなくって…!」
「ふーん。今日は店休み?」
「ハイ。店長が急用だとかで」
びびびびっくりした。幽霊よりもビビった。銀さん!!ってめっちゃ言いかけて危なかったマジで。
振り返ったらバイクに跨った銀さんで。なんだよヘルメット被っててもかっこいいなコノヤロー!!!
「…乗ってくか?」
「…へ」
「銀さん暇だし、付き合ってやってもいーよ」
「えっと…屯所…ですよ?」
「いーっていーって。乗んな」
自分が被っていたヘルメットを投げて寄越す銀さん。…あれ?このヘルメット…さっきまで銀さんが被ってたってことはアレじゃん。てことは銀さんの匂いまみれ…?
さらにはこの流れで行くと、その銀さんのバイクに2ケツ…。夢小説かァアアア!!これ本当に夢小説なんだァァアア!!
「オイィィ!!!鼻血!!!こっちの既視感もだいぶやべぇよ!!」
「大丈夫です!!あれから学習してポケットティッシュとマスク常備してます!!」
「そういう問題かよ!!」
「ていうか、あの!私よければ走りますが!」
「血行促進で鼻血止まんなくなるぞ。さっさと乗れって」
「…ハイ」
自転車すら2ケツしたことない私が乗っても良いのだろうか。とりあえず恰好が着物なので座面に横向きで腰かけさせてもらう。…手は、シート掴んでおけば良いか。よし、準備万端。
「…名前ちゃん、あの、せめて銀さんのこの辺掴んでくれるかな…?すげー心配なんだけど」
「…ハイ?」
後ろを振り返った銀さんが「この辺」と言いながら指指してきたのは、あろうことか銀さんの腰の横。ちょっと待てェェエエ!!あと落ち着け私の鼻!!
―――――
「どうしたんでィまた屯所にまで来て」
「土方君、元気かなーって思ってさ!な!名前ちゃん!」
「そ、そうです!」
「…アンタの方が具合悪そうに見えるけどねィ。…ま、土方のヤローは相変わらず寝込んでまさァ。旦那の顔でも拝めばちったァ直るかもしれねぇや。上がっていきなせェ」
鼻にティッシュを詰め込んでマスクというフル装備で屯所にお邪魔させていただくことになった私と、鼻をほじくる銀さんを見て沖田くんは物珍しそうにこちらをジロジロ見てきた。
どうやら、銀さんもなんだかんだで真選組内で何かが起きているのが気になっているみたいだ。
屯所の門先で警備の人に要件を伝えると、それを沖田くんに通してくれたらしく、まさかの沖田くん直々で出迎えられた。
沖田くんの後を追うようにして屯所邸の敷居を跨ぐと、その瞬間にゾワリとした寒気に襲われた。
「…!」
同時にいつものあのめまいがして草履を脱ぐフリをしながら近くにあった靴箱を掴んだ。
神楽ちゃんのぼんぼりについてたオタク幽霊ほどではないが、今回もなかなかの怨念がありそうな幽霊みたいで。
「あの、来て早々申し訳ないんですけど、お手洗いってどちらですかね…?」
「そこの戸開けて、縁側沿いに歩いた突き当りでさァ」
「すいません、すぐ戻ってきます」
そそくさと女子トイレの扉を開けて扉に持たれて呼吸を整える。吐き気まではいかないけれど、目がくらくらしすぎてちょっと目を瞑りたい気分だった。
これはもうアレだ。幽霊確定だな。ついてに鼻に詰めていたティッシュを取って、鼻血が止まっていることを確認する。うん、もう大丈夫そうだ。さっさと原因探して対処できそうならちゃちゃっと成仏させとこう!私は意を決して女子トイレのドアを押し開けた。
「…わ、すみませ…んっ!?」
ドアの目の前に人がいるとは思わなくて、ぶつかりそうになって思わず扉を閉めようとしたが、逆に開かれて。目の前に白っぽい影が迫ってくるもんだから思わず一歩下がった。閉じられたドアの音に目の前を見上げるとそこには一緒に屯所に来た銀さん。
あれ?なんで銀さんここにいるの…?と思ったあとにすぐ思い出したのが、ここ女子トイレという事実。
「さ、坂田さ…!?」
「しーっ」
「んっ」
するりと銀さんの顔が近づいてきて、あっという間にお互いの唇が重なった。待って意識ぶっ飛びそう。いや、飛ばしたい。
「コレ絡みだろ?」
「は、い」
…できることなら気絶したい。
「わりー待たせたな」
なんでもなかったかのように玄関先に戻ると、沖田くんともう一人。
「あれ、旦那珍しいですねこんなところに」
「おお!久しぶりじゃねぇか!元気にしてたか?…えーと、」
「覚えてないんかい!!山崎です!!……そちらの方は…?」
「あ…苗字名前です」
「苗字さんですか。山崎退です」
ザ、ザキィィィイ!!!
すごい。人気投票1位2位がいる空間にザキがいると確かに地味だ。でもジミーファン結構多いし、うん。今後とも活躍期待してるよザキ。
「ザキ、今は客がいるんでその話はまた後にしてくれィ」
「そうですね。改めて会議の場で説明します。あと、沖田さんチャック開いてますよ」
「あり」
ザキは沖田くんとそう話をすると、こちらに頭を下げてその場を立ち去った。真選組に来てるから遭遇してもおかしくはないけど、まさかこんな早く会うとは思わなんだ。
「土方さん死んでますかィ?」
沖田さんがある一室の襖を開いて中に入っていった。私と銀さんもそのあとに部屋に入ろうとしたところで、部屋の中の空気にぎょっとした。
「うお」
「…!」
いつぞやの神楽ちゃんの時みたいに部屋の中に瘴気が立ち込めていた。土方さんは苦しそうな表情でこちらを見上げると目を見開いた。そりゃびっくりするよね。すみません。
「てっ、てめぇら…!」
「よォ、面拝みにきてやったぜ土方くーん」
「ふざけんじゃね…ェ…」
勢いに任せて体を起こしたからか、土方さんは布団の上で前方にぼすんと倒れ込んだ。かなり辛そうだ。お邪魔します、と内心つぶやいて土方さんのお部屋に足を踏み入れる。部屋の中は想像通り余り物はなくて、きれいに物は片付いていた。ほう、ここがあの土方さんのお部屋…。土方ファンに殺されそうだな。
「いたっ!」
「え」
足の甲に突然鋭い痛みが走って慌てて引き下がった。足元を見ると足袋が刃物で裂かれたようで、血がにじみ出ていた。
…まるで、この部屋に入るなと言われているよう。
「おまっ…どうした足…!」
「クセ者のお出ましかィ」
「だ、大丈夫です!かすり傷です!襖に足擦っちゃったんですかね!すみません!」
「バカか、結構血ィ出てんぞ!!ちょっとみせろ」
「うわわ」
銀さんに足を掴まれて咄嗟に襖を掴む。しばらく私の足を見ていた銀さんは沖田さんに手当てができるものが無いか尋ね、沖田さんは救急セットを取りにその場を離れてしまった。
「…瘴気つったか…?視えんぞ」
「…多分、その仕業です。どうやら土方さんに近づくなって言われているみたいです」
「なるほどな…」
「多分、本体がこの屯所のどこかにいるかと」
銀さんに縁側に座る様促されて、足袋を脱がしてもらう。傷口と足袋が血で貼りつかないようにするためらしいけど、めっさ恥ずかしいコレ。
『我の前で…許さぬぞ…!許さぬぞォォオ!!』
「「!!」」
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