ドS野郎に目をつけられたりするハメになった。

◼︎


「えっ、と…」

何これ壁ドン?

いや、よく考えたら背中にあるのタンスだから、タンスにゴン…じゃなくて、ドンされてるからタンスドンか。ほにゃららドンっていつの流行りのやつだよ。流行云々の話じゃなくて、イケメンならいつの時代でもアリか。

……じゃなくて!!何冷静になって傍観者決め込んでるんだ現実見ろ私!!目の前沖田くん!!しかもなんかいい匂いする!!そもそもなんでこうなった!?

おろおろ目が泳いでいると沖田くんに顎を取られて、上を向かされる。ッアァァアイケメンがいるゥウウウ!!っごほっ、ごっほ!!

「あああああああの!?おお沖田さん!?」
「……さっきの…他の隊士たちは記憶がすり替えられてるみてェだが…、アンタと旦那…一体 "何" と話をしていた?」
「な、なんの…!」

そこまで言いかけたところで、グッと手に力を入れられて声が詰まる。

「余計なこと喋ンのはよしなせェ。…首が繋がっていたけりゃの話だが」
「…っ!」

ヤバい!語彙力崩壊してるとけどマジでヤバい!恐れていたことが起きた。なんで!?沖田くんは記憶すり替えられなかったの!?ホワァイ!?ていうかまじでいい匂いだなこの人!!視覚からと嗅覚からの膨大な情報量のせいで絶賛脳内がパニック中であるわけだが、これだけは分かっている。下手したら地球強制追放。それだけは困る!!

なぜならこの夢小説終わる!!

「場合によっては色々と考えにゃならんのでねィ。特にウチに害があれば…の話だが」
「が、害なんて…!!そんなこと!」

ただ幽霊が視えて喋れるだけなのだ。それだけなのに。地球強制追放の文字が頭をぐるぐる巡って言葉が浮かび上がらない!

しかも沖田くんの顔が近くて頭も目もショート寸前だ。思考回路はショート寸前っ、金髪ツインテールの美少女戦士みたく呑気に歌なんか歌ってられるかァアア!!

「ーーそこまでにしとけって総一郎くん」

沖田くんの肩越しに伸びてきた手は 石鹸の香りを纏っていて、それは私の口元を覆った。ハッとちょい浮上した意識で其方を見上げると沖田さんのちょい隣に銀さんの姿。視界いっぱいにイケメン2人ロックオンンンンン!!目が幸せすぎて溶けるんじゃないのこれ。逆に目に毒なんですけど。

「なに?お前といい土方くんといい、女との距離近すぎじゃね?チューでもしたいわけ?男所帯だもんなー。欲求不満になっちゃうのもまぁ分からなくもねェけどさ、流石に公務中はイカンでしょーが」
「生憎女にゃ困ってやせんぜ旦那」

……な、なるほど?
土方さんと縁での出来事も、コレも、全部キス対策でやってくれてたのか。うっかりキッスして見えるようになっちゃったら大変だものね。ウン。

………って誰も私とキッスしたがる物好きなんていないと思うんですけどォオオオ!!!?

一人心の中でノリツッコミしてたら沖田くんが私を一目見てから銀さんを見上げた。

「…旦那は随分とこの女にお熱みたいですねィ」
「馬鹿言っちゃいけねーよ。誰がこんなちんちくりんに」
「…ハハハ、どうもちんちくりんです…」

さりげなく私貶されてるけど、なんだろうこの気持ち。嫌じゃない。あれ?さっちゃん?

この世界に来たら毎日未知なる新しい自分に出会えてる気がしてるよ。おかーさんもびっくりするだろうな。娘、まだ成長してます。

「…ま、今回は旦那の顔に免じて黙っててやりやすが…次なんか怪しい動きしやがったら速攻でしょっ引いてやりまさァ」
「いててててっ」

顎を掴んでいた沖田くんの手が離れたかと思えば今度はぐにぃ、と頬っぺたを摘まれた。

マジでか。

地球強制追放の文字結構近くまで見えちゃったんだけど。真選組助けただけなのになんかしょっ引かれそうになってるんだけどなんなのこれ。さすがにあんまりじゃないの。
離れていく沖田くんに銀さんは私の口元から手を離した。

「あ、ありがとうございます、万事屋さん」
「とんでもねェドS野郎に目ェつけられちまったなお前」
「寧ろ警察様直々に目が届いてんでィ。平穏な日常生活が送れる喜びを噛み締めときなせェ」

むしろ平穏な生活ができなくなった感めちゃすごいんですけどね。


それから私と銀さんは屯所を後にすることした。ずっと背中に沖田くんの視線が突き刺さっていたのは言うまでもない。

足を切っているので、銀さんには申し訳ないけどお店まで原付で送って行って貰うことになった。
行きと同様に後ろに乗せてもらって、銀さんの肩を掴ませてもらい、その肩の逞しい筋肉感を噛み締めながら地球強制追放されたら後のことを考える。
とりあえず神楽ちゃんのお父さんでも探す?いやいや、こんな広い宇宙でどう探せと。

「なあ」
「なんでしょう?…うわぁ!?」

突然銀さんが路地裏に原付を走らせて止まった。ブレーキをきゅっとかけるもんだから、腕の力だけじゃ耐えきれずに銀さんの背中にコツンとヘルメットがぶつかった。

「す、すいません…!どうし…んぅ、」

…我ながら恥ずかしい声が出たもんだ。

銀さんがゴーグルを外しながらこちらを振り返ったと思ったら、するっと首の後ろに手を回されて引き寄せられた。

ふに、とあたる唇への感触。

「わりーな。連中が邪魔で前見えねーんだわ」

ソソソソソソウデシター。

ものすごい不意打ちのキスにやられた。あぁ、やられたな。やられたわ。
ボンっと真っ赤になる私に銀さんが頭をグリグリ強い力で撫ぜてきた。アイイタタタ!顔見られなくて済んだから良いけどね!

「うし、行くか」
「オネガイシマス」

再び走り出す原付。私は気を紛らわす為に周りをキョロキョロ見渡す。そういえば、ここの世界に来て乗り物に乗るのって初めてだな。元の世界ではよく車に乗って営業に回ったもんだ。

…懐かしいな。ふと思い出にひたる。

「…お前さんでも救えねェことってあんの?」
「へ?」
「さっき言ってたじゃねーか。手に負えないパターンってよ」

…んんん?………あぁ!そう言えば言ったような気がする?ていうか、言ったか。無理すぎてあの人の姿が思い浮かんだからね。

「もちろんありますよ。私、ただの視える聞こえる喋れるだけの人間なので…」
「三猿の逆バージョンかお前は。視える聞こえる喋れるで充分大物感あるからなお前」
「ピン子くらいでしょうか?」
「まだピン子ネタ引っ張るか」
「ふふっ…もしも私の手に負えなかったら、一応最終手段はあるんです」
「ほォ…?」

さっきもそうだったけど、最悪の場合はあの人に頼むつもりでいた。そんなこんなで縁のお店の前に到着した。銀さんにヘルメットを返す。

「おっ!名前ちゃんと銀さんじゃねェか!なんだなんだ、俺に言わずにデートでもしてたのか?」
「あ?その声は縁ンとこ……の……」

後ろから聞こえてきた店長の声に私と銀さんは振り返る。法衣姿に手に錫杖を持った人物は、托鉢笠を持ち上げるとニカリと笑った。

フム、紛れもなく、ウチの店長である。

「店長お疲れ様です。もう終わったんですね」
「おぉ!今回も楽勝だったぜ」
「…は?え?店長、サン?」
「今は店長じゃなくて、除霊師な」


「ハィイイイイイ!?」


銀さんの声が響き渡った。


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