その人たちのことを想えば

◼︎


「…あれ!?」
「どうしたァ!?」

五芒星の中央部へ向かってバイクで走っていると、段々かぶき町に似合わない巨大なカラクリが見えてきた。あれが…なんか見覚えが…。あれだ、ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲に似てるな。え、やだな…今からあそこに行くの!?
そこへ上空を駆ける一台のバイクが視界に入った。

――アイツ…!

「あのバイクに乗った天人…!アイツがこの地図持ってたんです!」
「ホントか!?どらァアア!!」
「ェエエエエ!?」

銀さんは迷うことなく木刀をぶん投げ、それは見事なくらいにバイクに乗った天人に直撃した。派手な音を立てて天人が落下。

「いででででっ!!な、なんだ!?」
「オイ、テメーか。江戸を吹っ飛ばそうなんて考えてやがる馬鹿モンは。メンドクセーからバカントでいいなお前」
「い、いきなりなんだ貴様は!?…ってお前…!逃げ出したかと思えば…!」
「…ぅ」

ギョロリとした目で睨まれてちょっと怯んで銀さんの後ろに隠れた。私たちが何をするのか察したらしいバカントは鼻血を垂らしながらニヤリとほくそ笑んだ。

「あぁ、止めに来たのだな貴様ら…。残念ながらもう遅い!既にエネルギーは8割までは溜まっておる…!ここまできたらもう放出するしか手段はないのだ!ぶわっはっはっは!オイ!いるか警備!ここに侵入者だ!片付けろ!」
「「!!」」

バカントがそう叫ぶとゾロゾロと天人の姿が現れた。か、囲まれた。

「名前、俺から離れるなよ」
「は、はい!」

都合よく近くに放置されていた鉄パイプを手に取る。こんなものでやり合えるとは思ってないけど、丸腰よりはマシだろう。

「行くぜ!うおらァァアアア!」

駆け出した銀さんの後を必死に追いかける。うわわわわわ怖い…!




「テメーらに構ってる暇はねーんだよコノヤロー!!」
「後ろのお嬢ちゃんガラ空きだぜェエエ!?」
「!?」

背後から聞こえてきた天人の声。反射的に身を固めた。途端に背中に感じた衝撃とさっきぶりに感じた三半規管が狂う感覚。



「ふべらっ!?」

地面にスライディングする勢いで私は転げた。え、今の!?慌てて起き上がると目の前にはつい先ほど私たちが見上げていたカラクリ。

「これ…っ、霊たちだ!」

アームストロング砲の左右の玉は透明になっていて、そのうち片方の中に沢山の霊たちが窮屈そうに閉じ込められていた。

「だ、大丈夫ですか?名前さん」
「ダブさん!?」

後ろを振り返るとそこには息を切らして地面に座り込んでいるダブさんの姿。

「なんで…!」
「向こうの世界に飛ばそうかと思ったんですけどね…貴方がこの状況をなんとかできるなら…協力させてもらうことにしましたよ…はぁ…」
「ダブさん…」

息を切らしながらそう言ったダブさんは、私の背後を一目見ると指を指した。

「、!名前さん、アイツは…!」
「あ!バカント!」
「ぎくっ!」

ダブさんが指差した先には先ほどのバカントが忍び足でカラクリの操作部分に近づいていた。私は駆け出す。

「させるかァァア!!」
「ぶべら!?」

鉄パイプっていうオプション付きの私のメンタルは中々強い。野球のバット感覚でバカントをぶっ叩くと、そいつは情けない叫び声を上げてすっ転がった。


…こいつ、弱い!!いける!!


「いってェエエ!何するんだ小娘ェ!」
「私の髪の毛返せ!!」
「ギャァアアアア!!」

鉄パイプで怯ませてバカントの胸ぐらを掴み上げる。

「これを止める方法を教えなさい!」
「ふふふっ…なぁ苗字名前計算は得意かね」
「…は!?…ぶっ!?」

突然殴られて身体が飛ばされた。ゆ、油断してた…!コイツ、戦えないわけじゃないのか!い、痛い…!

「名前!」
「ぎ、銀さん!」

アームストロング砲のエリアに銀さんが姿を現した。あの警備の天人たちを振り切って来れた様で、ひとまず安心した…。

「あぁ、高杉の古き友達かね。…まぁいい…、我々の一族は宇宙で有名な研究一族でな。中でも特に霊力に関する研究に長けていたよ」
「!」
「異世界人が霊力を持つと知ったのも、我々の祖先…!」
「異世界人…?」
「!」

銀さんがその言葉を繰り返し発した。私は無意識に目線を下に下げる。

「なんだ、知らないのか。その女が異世界人なことを。フフフッ、信用されてねェな貴様も」

「違う!」と言いたかったけれど、そうとも言い切れなくて、言葉に詰まった。

「昔は宇宙に数人しかいないテレポートサイコ天人をうまく奴隷にしたりして、異世界人を何人か連れてきたりしたものさ。懐かしいな…」
「…!あんた達はなんの研究したっていうの!」
「私の研究はいたってシンプルさ、1×-1の答えは知ってるかね?-1になるよな?」
「は…?」
「貴様ら異世界人の持つ霊力はいわばプラスのエネルギー、それとは対象に霊はマイナスのエネルギー!つまり、この2つの対象を掛け合わせれば巨大な爆発エネルギーが生まれる!答えはプラスだろう!!フフフフッ、ぶわははははは!!」
「な、なに言っ…!」


――刹那、白が駆け抜けた。


「ぶぉへぇええ!?」

バカントが宙に舞った。近くには木刀をゆっくり下ろす銀さんの姿。あの一瞬でバカントをのしたらしい。

…見えなかった。

「あ、ワリ。話終わった?」

いや、向こうの寿命が終わった気がする。しばらく地面に伏していた天人が顔を上げた。

「うぐぅ…っ!貴様らこんなことしてただいまで済むと思うなよォ…!!そんなに欲しいならくれてやる!!」
「っあ!」

バカントは私の髪束をアームストロング砲の左右の玉のうち、空っぽの方に投げ込んだ。途端に起こった地響きに立っていられずに地面に座り込む。

「ふふふっ、後もう少しだ!後もう少しで江戸は終わる!!」
「…させない」

絶対にそんなことさせない。鉄パイプをギュッと握りしめてダブさんの元へ走る。

「名前!」
「銀さんは安全なところに!」
「させるかよ!」

銀さんが私の動きを止めさせるために手を伸ばしてきた。

あぁ、この大きな手で色んな人たちを、この町を守ってきたんだなぁ。こないだは手のひらに運命線見つけたよ。銀魂ファンでも私しか知らないだろうな。


こっちの世界に来て、良かった。


「う、お!?」
「ダブさん!」
「…っ!」

銀さんに掴まれかけた手は、銀さんが地響きでバランスを崩したおかげで掴まれることはなく、私は不安定な足場を駆けて、ダブさんの元へ。

「お願いします!」
「…っ、わかりました!」

私は後ろを振り返り、地べたに這いつくばっているバカントに向かって鉄パイプを向ける。

「そこのバカント!1×-1がプラスになるって?そもそも計算式が間違ってる!」
「な、なんだと!?」


三半規管が鈍る感覚。


真下には霊達が押し込められた透明の丸い器。重力の関係で真下に落ちる私の身体。

「掛け合わせるんじゃない!混ぜ合わせるから1+-1は…ゼロだこのやろー!!」

鉄パイプを下に向け、そのカラクリをぶっ壊した。


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