労い方違いすぎておかしい。

◼︎


うちの団長は頭がおかしい。

「…?」

ふと目を覚ますと、当たり前だけど寝る直前までと同じ体勢だった。右手にはアイハバペン、左手にはアイハバメニメニペーパー。目の前にはパソコンと山積みの書類たち。

そうだ、3徹してたんだ。そんできっと数分前に力尽きたんだ…、まずはここまでの状況を飲み込む。

「…何してるんですか団長」
「あ、起きた」

後ろで髪を弄られてる感覚があって、こんなことやる人なんて1人くらいしか心当たりある人いないから別に驚きはしない。後ろから我らが団長様の声が聞こえて頭が徐々に覚醒してきた。

「帰ってたんだ…おかえり」
「うん、ただいま。今回交渉決裂しちゃってさ。星丸ごとぶっ壊してきちゃった。脆すぎて慌てて船に乗って今帰ってきたところだよ」
「え」

今、なんつったこのバカ団長?交渉決裂?星ぶっ壊した?

「えええ阿伏兎ォオオオオオ!!!団長様が仕事増やしてご帰還なさったよォオオオオオ!!」

またあの莫大な量の始末書書かないといけないの!?私何も悪くないのに!?泣き叫ぶ私の後ろで「できあがり」とバカ団長の楽しそうな声。ピン、と前に弾かれた私の髪が視界のの右端に一瞬見えた。右肩に垂れているそれはバカ団長と同じように三つ編みに仕様になっていた。

「お揃いだネ」
「わーすごーいちっとも嬉しくない」

こういうとこ、意外と器用なんだよねこの人。綺麗に編まれた自分の髪を摘んで見たのちに後ろへ弾くと「いて」と団長の声。それどころじゃないんだこっちは。再び資料を手に取る。そんな私の横から団長がひょっこりと手元の資料を覗き込んできた。

「まだ終わらないの?そろそろ見飽きたんだけどなその背中」
「えぇ、どっかのバカ団長がいろいろやらかしてくれるんで、こちとら始末書パーティなんですよね」
「はははっ、その部下も大変だ」

チッ、完全に他人事だと思ってるよこの団長。早いとこ終わらせて久々に体動かす仕事したいなー。
ぐーっと大きな伸びをしていたら、不意に頭に何かが乗っかった。

「…?」
「よしよし」
「…は?」

グリグリと頭を撫でられて思考が固まった。というか、伸びた姿勢のまま固まった。驚きのあまりに心底思った言葉がそのまま口に出ていたのもまた驚いた。
横を見上げたら団長がキョトンとした顔で此方を見下ろしている。

「あれ?嬉しくない?女はこうされるの好きって阿伏兎に聞いたんだけど」
「いや…感情以前の話で…………何故に?」
「名前最近頑張ってるから褒めてあげてるのさ」
「だ、団長…大丈夫?」
「俺は元気だよ。あ、でもそうだな、ちょっと眠いかな?」
「ちげーよ!頭の話だよ!」
「え?名前の頭もげば良かった?意外とMっ気あったんだネ」

頭を抱えた。だめだ、話が通じない。誰か通訳。

「それ終わったら俺と一発殺り合おうよ。ストレス発散、喜んで付き合っちゃうヨ」
「ふざけんなクソ団長。こちとら連日デスクワーク三昧なんだよ。今の状態でアンタと乱闘ランデブーなんか身が持たんわ」
「つれないなぁ名前は」
「あ、そうだ、良ければ阿伏兎様にもやってあげてよ?彼めっちゃ喜ぶと思うんだよね。団長のこと大好きだし」
「えー阿伏兎の髪ゴワゴワしてそうだからヤダ」
「顎ヒゲは縮れててゴワゴワしてるかもしれないけど意外と触ってみたらフワフワかもしれない。偏見は良くないぞ物は試しだレッツゴーそんで仕事させてくれそのままどっか行ってくれ」
「名前最後本音見えてるよ。阿伏兎の隣にいていつも縮毛が靡いてるなーってたからなーなかなか行きにくいなー」
「おい聞こえてんぞそこ!書類で姿見えねェけど聞こえてるからね!!ついでに言うと俺フワフワだし!縮れてないからね!?聞いてる!?」

山積みにされた書類の向こうから阿伏兎の罵声が飛んできた。なんだよいんのかよ。
阿伏兎が立ち上がったらしく、書類の山の上から頭が見えた。ボキベキ体のありとあらゆる場所から関節の音が聞こえてくるあの人ももうそんな歳か。

「ま、ともかく俺も気が向いたら手伝ってあげるからさ。頑張ってよ」
「団長の気が向いたらって何十年後だよ」
「団長の気が向く頃に俺たちゃ生きてんのかも危ういな」
「確かに」
「やだなー2人とも俺への不信感すごいじゃん。これあげるから元気出して」
「なんだコレ」

ニッコニコの団長がくれた緑色のパッケージの袋を見る。阿伏兎と一緒にそれを見てパッケージの名前を読み上げた。

「…ドライ…フロッグ?」
「んなモンどこで買ったんだ団長」
「ほら、此間よく分からない星に行っただろ?その時に買ってみたんだ。たくさん買っちゃったからあげるね」

ガサ、と袋の中から一個指でつまんで取り出してみる。あらこんにちはカエルのミイラさん。

「ってカエルの干物ー!?ぎゃぁあ気持ち悪っ!!」
「うお!?こっちに投げんな!!団長アンタノリで買ってみたのは良いけど食べる気失せて他人に回す最悪のパターンじゃねぇかこのすっとこどっこい」
「あははっ、やだなー人聞きの悪い。部下を労うのは上司の務めだろ?」

にっこり笑う団長に3徹を迎えてる私と阿伏兎はもうそれ以上怒る気は無くなった。ていうかそれに労力使うくらいなら仕事に使ったほうがいい気がしてきた。

やっぱりうちの団長は頭がおかしい。部下の労い方ちげぇ。


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