類友と同族嫌悪ってまさに紙一重
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「そーかそーか!貴方がファーストさんか!いやぁ、トシや総悟がいつも世話になってるそうで!」
その人は屈託のない笑顔で豪快に笑った。
「いえ、とんでもないです…!私の方がいろいろと巻き込んでしまっていて…!」
「なぁに、真選組は貴方のような市民を守るのが務め。ヤツらの怪我は謂わば勲章ですよ、勲章!」
「がっはっはっは」と引き続き豪快に笑っているのは、真選組の頭である近藤勇局長。ホムンクルスとの一件があって、一応真選組へ騒動の聴取を受けることになって今に至る。
「それにしても大変でしたな。何も元いた世界から不死身の化物が追いかけてくるとは」
「はい…。でもどちらかというと、相手が不死身だろうとも物怖じせずに立ち向かう彼らの方が心配でたまりませんでしたよ…」
横で胡座をかいて座る土方さんと沖田さんを少し盗み見た。基本的に長袖長ズボンを着用しているので怪我の程度は面からは見えなかったが、時折見られる彼らの傷を庇うかのような不自然な動きから察するにまだ完治はしていないだろう。
「オイオイファーストさんや、その口振りだとなんだか俺らが弱ェみてェな感じじゃねェですかィ?」
「えぇと…」
「総悟、客人をあまり困らせるんじゃないぞ」
「へーい」
ちょっと意外だった。あの捻くれ者の沖田さんがこの近藤局長に素直に応えているとは。彼の意外な面を見た気がした。
「アンタの方こそ怪我はもう良いのか」
「はい。元々そんなに酷い怪我でもなかったので。…真選組の皆さんには…特に土方さんと沖田さんには本当にご迷惑をおかけしました。もし修理依頼がありましたら、破格で受け付けます。なんなりとご所望くださいね」
「もう既に破格だっつーの。いつか破産するぞお前」
「そんときゃ土方の口座と暗証番号教えてやりやすよ。給料日は25日なんで、朝イチに銀行に乗り込んで全額引き落としてくだせェ」
「あぁ!?何で俺の知ってんだ総悟ォ!!」
抜刀して沖田さんを追いかけ回す土方さん達を見守る。怪我してるだろうに元気だなぁ。
「まぁまぁ、トシ。そこは煙草代が浮いたと思ってだな」
「浮くどころか消えるだろーが!煙草代とかそんなもんじゃねェよ!」
なんだかアメストリス軍東方司令部のマスタング大佐と最年少国家錬金術師のエドの、二人の歪み合いのようにも見えて、懐かしくなって少し笑えてきた。あの二人元気かなぁ。
近藤局長は少し眉を潜めながら私の右袖に視線を移す。
「それで…その、そちらの腕は先の戦いで…ですか?」
「あぁ、これは元々なんです。何年か前に……その、いろいろありまして」
簡単に事情を説明するにも錬金術のことはこの人は知らないだろうし…なんと説明したら良いのか言葉をつまらせる。どうやら近藤局長にはそれを触れられたくない話題だと思われてしまったのか、「あーいい!いいですよ!」と両手をぶんぶん振ってきた。
「いやぁすみませんな!人には色々事情があって当然だ。こいつぁ失礼な事を聞きました」
近藤局長を見ながら軽く顔を横に振る。
「説明が難しくてどうお伝えしようかなぁと悩んでいただけです。そうですね、簡単に言えば恋人を生き返らせようとして、失敗したんです」
「…は…ぁ…?」
「近藤さん、失礼しますよ」
やっぱりトンチンカンなことを言っていると思われるのは仕方がない。首を捻る近藤局長に苦笑いしていると、障子の外から声が聞こえてきた。
「あ、ザキか!入れ!」
四人がいる部屋に入室してきた人の顔を見て「あ」と小さく声が出た。それから目が合うなり互いに頭を下げ合う。
「ファーストさん、お久しぶりです。山崎です」
「ご無沙汰しています、ヤマザキさん」
前に怪我した時に真選組の救護班のところまで案内してくれた人だった。
「例のもの準備できました」
「おお、すまんなぁ!ファーストさん、これをどうぞ」
「…え、これって、」
山崎さんから差し出されたものを受け取ると、手中のそれに驚いた。それから近藤局長を見上げると、力強く頷いてくれた。
「ありがとうございます」
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「本当に家まで送らなくて良いのか」
「大丈夫ですよ、こんな私一人のことでお手を煩わせる訳にはいきませんから」
屯所の門に向かって土方さんと並んで歩く。
「その腕じゃあバイク乗れねェはずだろ」
「タクシーがありますから」
「あそこから来るってなると結構金かかんだろ」
坂田さんと同じことを言う土方さんに目を丸くしつつも、面白くなって吹き出し笑いするとジロリと睨まれた。
「何笑ってんだよ」
「それ、坂田さんも同じこと言ってましたよ。仲良いですねお二人とも」
「ふざけろ。反吐が出る」
たちまち不愉快そうな表情を浮かべる土方さん。…うーん、わかりやすい。
仲悪いって聞いているけれどあれだ、似すぎて仲が悪いやつなんだろうなぁ。同族嫌悪に近いそれの。
「「げ」」
門の外に出ると同時に声が二つぴったりと重なる。それを見てまた笑ってしまう。
「ンでテメーがこんな所にいんだ万事屋」
「少なくともテメーには用はねェよ。自意識過剰もほどほどにしとけや多串君よォ」
「チッ、オイファースト。やっぱ車乗ってけ。変質者が出たらいくらお前でも片腕じゃ対処しきれねェだろ。白髪か天パにされたくなきゃ素直に甘えてけ」
「え?なに?それほぼ俺のことじゃね?」
「テメーも自意識過剰はほどほどにしとけ」
ゴリゴリと額同士を押しつけ合いながら互いに睨め合う坂田さんと土方さん。「まぁ、お二人ともそのぐらいに…」とそろそろ本気で宥めに行こうと一歩踏み出した時だった。
「ーーファースト!!」
「えっ」
突然背後から飛んできたよく通る声、それから左手をぐっと掴まれて振り向かされると、視界いっぱいに赤と、黒と、それから金が広がった。
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