神様とお糸


雷光大帝主神(らいこうだいていぬしのかみ):神様の頂点で神を統べる神様
糸(いと):(旧名:太一郎)純粋な心の持ち主で、国一番の神宮にお参りに行ったら神様が天界へ連れて行きたいからと召されることになった元人間。


 大帝主神のお胸元。基、雷光様のお家で秘書みたいな仕事をしている右ノ補佐神、通称右補佐が涙ながらにお世話させてもらっている上司の上司に涙ながらに訴えていた。

「だからー!本日は観音集会主催パーティの主賓だと申し上げてましたでしょー!?」

 何でここにいつまでもいやがるんですかー!?と、喚く右補佐に雷光は己の伴侶の腰を抱きながら彼に返した。

「めんどくせぇ」

 本当に面倒臭そうな顔をして答える雷光に「んなこと云ってねぇで、さっさと行ってくださいましよー!」とぎゃんぎゃん吠える右補佐。けれど、うるせぇと足蹴にされてしまう。パワハラだー!と訴えるが、雷光の耳になど届いていない。
 右補佐は毎度のことだが、泣くほどに困っていた。
 今日は絶対にパーティに参加させるようにと直属の上司に云われているのだ。何が何でも雷光様をパーティへ連れて行かねばと、雷光の隣で心配そうな顔をする雷光の伴侶――糸を見やる。

「今回の観音集会のパーティは重要だと、お糸様と一緒に説明しましたでしょう!?」

 そもそも、お糸様と一緒だったら説明聞くっておっしゃりやがったでしょう!?と訴えれば雷光は糸を見ながら。

「糸が可愛くて聞いてなかった」
「あんた本当何考えてんの!?」

 溢れる涙を流しながら突っ込む。
 もうダメだ、こうなったら…と、右補佐はターゲットを変える。

「お糸様!お糸様からも何か云ってやって下さいましよ!」

 ぶしゃー!と涙を流し訴えれば、神界の良心お糸は眉を下げてから優しい口調で呼びかける。

「雷光様」
「ん?なんだ、イト」
 呼ばれて嬉しそうに甘い雰囲気を出す雷光。
「本日開かれる観音様主催のパーティは…」
「ああ」
「とても、重要で…あの…」
「うん?聞いておるぞ?」
「出席しなければ…あの、雷光、さま…」
「イトは可愛いな」

 するりと糸の手を取ると指を絡める雷光。

「うぉおおおおおい!説明聞くのに指を絡める必要がどこにあるぅうう!!?」

 顔も近づける必要ねぇだろうがよぉおおお!!?
 敬語なんて無視して思わず云ってしまえば、雷光に睨まれ「チッ」と舌打ちされた。
 理不尽!
 右補佐の必死な努力は無駄に終わるのかと思えば、お糸様が「雷光様、右補佐さんが困っています。行って差し上げて下さい」と声をかけてくれた。
 その声に、雷光はすくっと立ち上がり。

「イトが云うからな、行ってくる」

 と、なんともまぁ、素直に光を纏って出発準備を始めた。
 いってらっしゃいませと、見送るお糸様に、「んーちゅ、イト可愛い」と、気持ち悪い甘えた声を出して、ついでにチューもしてやっとこさ雷光様はパーティへ向かわれた。
 残った僕は盛大に溜息を吐く。
 涙と疲労でぐったりの僕にお糸様は「お疲れ様です」と優しいお言葉をくれたのだった。



***
何か無性に書きたくなった。
たぶん、モデルは敦盛2○11を謳ったあのコンビから。


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