言いたい事 - 相澤消太 (男主)


「あの高校が出来る前、何があったんだろうってよく考えるよ」

 窓枠に凭れながら、眠そうな目でタバコを吸っている。いつもと同じ。

「つまり?」

 要領の得ない唐突な話に付き合い始めて、もう10年以上は経ったか。

「つまりは、そうだな。俺が死んだあと、俺を覚えていられる人間はそう多くないってこと」

 だから、この世界に一つでも多くの俺を残したいと思うよ。どこをどう取ったらその話になるのか、俺にはさっぱり分からなかった。声はどこか機械じみていて、気味が悪いと思った。まるで、自分がいつ死ぬか分かっているような。

「そうか」

 俺はどんな返事をすればいいのか見当もつかない。正解のない質問は嫌いだ。嫌いな癖に、こうして一緒に生きているのだから俺は馬鹿だと思う。

「君から見た俺がどんな服を着て、どんな風に生きているのか見てみたいな。それを知る頃には、俺は死んでいるだろうけれどね」

 ふざけるな、馬鹿なこと言うな。他にも何か言うべきなんだろうが、俺はいつも返事が出来ない。

「そうだな、俺も見てみたいよ。お前から見た俺が、どんな風に生きているのか」

 だから、こうして思ってもみないことを言うのだ。いつもと同じように。なぁ、斎。俺たちは、俺は、いつから言いたいことが言えなくなったんだろうな。


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