再会 - ロード・エルメロイII世
斎・羽柴はカルデア内の作業場で、いつものように礼装の作成や補修、点検といった仕事をしていた。
そういえば、今日は我らがマスター、藤丸立香が新しくサーヴァントを召喚する日だったな、と思ったその時、見知った魔力を感知した。それは新しく創り上げた礼装の最終チェックをしていた時だった。
今まで、新しいサーヴァントが召喚される度、そのサーヴァントが持つ魔力を肌で感じては、また厄介なのが来たな、と思ってきたが、今回のは、今までのとは少し訳が違うようだ。というか、本来なら召喚される筈のない人間のそれだった。
ここに居る筈の無い、もっと詳しく説明するなら、イギリスはロンドンの時計塔にて教鞭を執っている、 斎も短い間だが世話になった、よく知っている者の持つ、微弱な魔力を感じたのだ。その魔力がマスターと共にこちらへやってくる。あぁ、厄介だ。
「面倒なのが来た……というか、なんでサーヴァントになってるんだ?本来、人間はサーヴァントには成れない筈……」
あぁ、嫌だなぁ。会いたくないなぁ。などと言っても仕方がない。腹を括った。
「斎さーん、生きてます?新しいサーヴァントを紹介したいんですけど」
生きてますよ、残念ながらね。時計塔も実家も、何もかも、人間関係が面倒になって、態々こんな所にまで逃げてきたってのに。ここで会うとは、本当にイギリス人らしい嫌味なお方だ。
「紹介も挨拶も結構。元気そうで何よりです、ロード・エルメロイII世。それとも違う名前で呼ぶべきかな?」
「これは、これは。そちらも絶好調なようで安心したよ、ミス・羽柴。あぁ、初めまして、と言った方が正しいか」
「……名前を伺っても?」
「諸葛孔明と言う。是非、今までのように先生、と呼んでいただけると嬉しいよ」
立香が2人のやり取りを見て目を白黒させていたが、しょうがないのだ。これは。
「……知り合い?」
「教え子だった。途中まではね」
「教室に着いてるカーテンが嫌いだった」
「君が辞めたあと、どうなったと思う?」
「教師の給料削減?いつだって英国は氷河期から抜け出せない」
「喜ぶのはロンドン動物園のホッキョクグマくらいだ」
斎の家族は、両親と兄が居るが、父は代々続く魔術師の良家の出身で、母は資産家の一人娘だ。兄は魔術師に成らない代わりに、権力を手に入れた。秘密の多い職員のトップに立って英国を動かしている。所謂、サラブレッドとして育ったのだ。
羽柴の人間で、魔術師として生きている若い者は斎くらいだったので、親は大金を使って教育に力を入れていた。時計塔にもかなりの額を寄付していたようだが、斎が辞めてからはそれも無くなったらしい。
「来てくれて嬉しいよ、先生」
「ようやく授業の続きを始められそうだ」
取り繕った中身のない会話だ。マスターの表情筋が死んでいるのは気の所為じゃないだろう。
「その時はマスターも一緒に」
「勿論だ」
あのレポート地獄を1人で生き残れる自信がない。申し訳ないが、マスターには世界を救いつつ、共に地獄を味わってもらうとしよう。
「世界を救った後、どうなると思います?」
「君の実家の事か?羽柴家はいつだって賑やかだな。羨ましいよ」
「カルデアは国連が関係してる。私の兄が何処に務めているか、ご存知の筈でしょう?」
「……第三次世界大戦が起きない事を願うよ」
「戦争を回避する為の犠牲を我々が払う事になるかも」
「まさか」
「兄は私がここに居る事、知ってますよ」
「暗い部屋で尋問プレイ?」
「盛り上がってハードなSMプレイになるかも。拷問、殺人、なんでもありのね。ちなみに、相手は私の兄」
「鳥肌が立った」
「私は吐き気が止まらなくなった」
「君の兄には、結婚の許しを貰えそうにないな」
「教師と生徒と生徒の兄で、泥沼の三角関係とか……」
「特殊性癖にも程があるだろ」
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