救えない嘘 - 烏丸京介


生温い風は嫌いだ。
それが例え、誰かの声だとしても俺は聴きたいと思わない。
俺は多分、くだらないことをしている。
何が正しい?
誰が正しい?
何が悲しい?
誰が悲しい?
神様が正しいって、誰が決めたんですか。

彼女は目を潰した。
最後に見た風景はあの人の後ろ姿だ。
俺じゃない。
俺は選んでもらえなかった。
ずっと忘れないようにって、目を潰した。
他に忘れない為の方法はなかったのだろうか。
なかったんだろうな、だから彼女は目を潰したんだし。
コクトー・ツインズの歌みたいな、悲しい空気を肺一杯に吸って、ゆっくり吐き出したら、生温い風になった。
ああ、嫌いだな。
ずっと貴方を騙していたから、今度は自分を騙し続けなければならなくなった。
嬉しいことも、悲しいことも、全部。
貴方のその狭い肩幅では誤魔化しきれない嘘も、動かない時計を撫でる指の温度も、ふとした時に左利きだと気付かされる仕草も、俺を選ばなかった貴方のことなんて、大嫌いだ。
全て叫んだ。
そして呆れるほどの、生温い風。

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