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 私は午前中、武器商人としての仕事が入っていた為、洋食屋を留守にしていた。その間はサクさんが見てくれるというので、彼に任せた。
 誰が悪かった訳でもない、何かが駄目だった訳でもない。ただ、たまたま、その日、私はその場に居合わせなかっただけの話だ。私の悪運の強さは死神のお墨付きらしかった。
 その日、洋食屋の店主と子供たちが殺された。サクさんは、ミミックとかいう奴らに復讐するために、単身、敵の本部に乗り込んだ。
 その場かぎりの些細なことだと思っていたものが、思いがけない出来事を連鎖的に引き起こしていくことがある。自分が選択しているのだと思い込んでいても、あらかじめ運命づけられた結末のピースをはめているにすぎないことが。
 母がポートマフィアだったこと、私が父の仕事を受け継いだこと、サクさんに引き取られたこと。その全てが、パズルのピースの一つ一つなのだと思った。
 私は洋食屋に火をつけた。この放火が原因で店主と子供たちが死んだ、ということになった。これで世間の目は誤魔化せたわけだ。異能力なんて、面倒なモノない方がいい。世界にとっても、人間にとっても。
 知らせを受けた太宰くんは、サクさんを助けるためマフィアから援護してもらおうとボスとの話し合いに向かったが、正直なところ、それでは遅すぎる気がした。
 ここで黙ってられるほど暗器大王は穏やかじゃない。全身の至る所に拳銃やら弾やらナイフやらを装着し、サクさんの後を追う。肩に掛けたカラシニコフ(旧ソビエト製AK74)が人を救えるのかどうかはわからない。が、自分の持っている機関銃の中で、一番スピードが速いのを選んだ。秒速800mが、未来予知を相手にどこまで通用するのやら。早撃ちの名人、ここでやらなきゃいつやるんだ?
 どうか間に合ってくれよ。でなきゃ、私が生まれ付いた意味がなくなってしまう。今が最悪の状態、と言える間は、まだ最悪の状態ではない。必ず、全員助けて最後に私が笑ってやる。
 燃え上がった洋食屋が背後で轟々と音を立てている。後ろは振り返らなかった。迷信なら迷信でいい。


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