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「人は自分を救済するために生きている。死ぬ間際にそれがわかるだろう」

 2人は、自分たちが死ぬことを分かっていた。だから、己の人生を、後悔を語った。お互いの目を見つめながら。その瞳孔に写る光は何色なのだろうか。似た者同士の二人は、相手に何を見つけたのだろうか。
 グラオガイストとベレッタの銃口が向かい合う。この瞬間を、息を殺しながら、ずっと待っていた。
 タイミングだ。それさえ間違わなければ、このドアの向こうの二人を助けられる。そしたらきっと、坂口くんも太宰くんも、私自身でさえも、きっと救われる。
 昔から、私の周りにいる人間はみんな早くに死んでいった。親も、親の知り合いも、一緒に暮らしていた子供たちも。これ以上、私自身の身の内に潜む死神が、私の周りの人を殺さないために。
 グリップを握る手に力が入る。部屋の中に一歩踏み出した。
 ほんの一瞬の出来事だった。未来予知などものともせず、音速を超えた速さで相手に弾が届く。カラシニコフから発射された銃弾は、アンドレ・ジイドの肩を撃ちぬいた。グラオガイストから放たれた弾は、ほんの僅かだが軌道がぶれ、織田作之助の肩を撃ち抜いた。

「スーパーヒーローは、遅れてやってくるものなんだってさ」
「……斎か」
「あぁ。きっと太宰くんももう直ぐやってくる。そっちの彼は大丈夫なの?」
「……何故だ。何故、邪魔をした」
「何故って、そんなの死なれたら困るからに決まってるだろ。だから救った。生きることは難しい。でも、生きているうちにやるべきことは、どんな時でも単純だ。素直になればいい。ただそれだけ」

 そこにやってきたのは、身なりを崩した太宰くんだった。

「織田作!!」
「大丈夫だよ。二人とも、弾は肩にあたって貫通。痛いだろうけど、死ぬほどでもない」
「…………そっか。助かったのか。助かったのか」
「スーパーヒーローになって助けてやる約束をしたからね」

 守れない約束はしない。自分は誰かを救うことで、初めてお前は生きてもいいと言われたような気がした。そして私はこの現状を見て思った。深く心に刻まれ、永遠に消えない悲惨な絵が、また一枚増えたらしい。
 太宰くんが呼んだらしい医療チームの足音が、どこか遠くの方で響いているように聞こえた。


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