15 - 坂口
政府機関が管轄している病院の前で、坂口くんと出会った。というか、待ち伏せされていた。
「なんと言ったらいいのか……」
「素直にありがとうと言えばいいよ」
「……いえ、もちろん感謝しています。ただ、あなたがあんな危険を侵さねばならない状態に持っていった自分が情けなくて」
「ふぅん。それって男のプライドとかいうヤツ?」
「そんなところです」
「そんなもの、私の弾丸が粉々に撃ちぬいたつもりだったんだけど。まぁ、心配してくれたのは普通に嬉しいね」
坂口くんは何も言わなかった。元々、寡黙な人なのだ。そうして、沈黙を守り秘密を作り、自分の首を自分で締めるような男。全く面倒である。
「まぁ、仕事が一つ減って良かったじゃない」
「何のことです?」
「私が洋食屋に火をつけたんだ」
ニヒルな笑みを口元に浮かべながら言った。
「……あなたは未来でも見えるんですか?」
「まさか。魔法使いじゃないんだし」
ポートマフィアでもなければ、政府の人間でもない。かと言って一般人でもない、ただの武器商人だ。
人の命を奪う武器を売るようなクズ。私の売った武器で何人の人間が死のうと、私は今日も生き続ける。そうして、背中にべったりと張り付いた死神は笑い続ける。
「そろそろサクさんの所に行かないと。あの人、私が遅れると子供みたいに拗ねるんだ」
「そうですか。私はこれから仕事なので、よろしく伝えておいて下さい」
「了解」
「それと、」
坂口くんはじっと私の顔を見つめた。
「男というのは、いつまでも子供のような生き物なんですよ」
坂口くんは心から安心したように、少し目を細めて笑った。なんだ、そんな顔も出来るんじゃないか。私は彼が車に乗り込むのを見ていた。無駄のない“滑らかな”動きだった。
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