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「ワルサーP38(9o口径、装弾数8発)、ドイツ軍が戦争の時に使っていた銃で、日本で最も一般的に知られている拳銃。アメリカ兵から『グレイゴースト(灰色の幽霊)』と呼ばれ恐れられるとともに、一種羨望の的となった。それをドイツ語読みしたのがグラオガイスト。そもそもグラオガイストは普通のワルサーとは違って、とある組織のとあるメンバー内でしか使われていない、幻のワルサーなんて呼ばれたりもしている。まぁ、それもそのはずだよね。その銃を使っていた軍人たちは、何年ものあいだ祖国の為に戦ったっていうのに、その祖国は軍人たちを裏切り戦争犯罪者の烙印を押したんだから。で、彼らは祖国に居られなくなって、今や雲隠れ。何処にいるのか誰にも分からない…………んだけど、二人の顔を見るに、灰色の幽霊を持った軍人たちは、今ヨコハマに居るらしい。……無言は肯定と取るけど?」
「危ないから、絶対に首を突っ込むなよ」
「ねぇ、織田作。この子、私の部下より使えるよ。ねぇ」
「頼むからやめてくれ」
「私は知ってることを言っただけ。サクさんのお知り合いみたいだし、タダでいいよ。でも、もし、もしグラオガイストが手に入ったなら……あぁ、いや……やっぱり……」
「君にプレゼントしよう。今の情報と引き換えに。これでどうだい?」
「ハラショー!!!取引成立だよ、太宰くん」

 思わぬ報酬は意外な所から降ってくるものだ。しかし、幻の軍人たちがサクさんの仲間に何かをしたのは間違いないだろうし、きっとこれは嫌な予感とか言うヤツだ。こういう場合の予感は大体当たる。虫の知らせではないけれども、このヨコハマに厄介な戦士が紛れ込んでいるのだろうと、直感的にそう思った。

「鼠が罠に掛かった……」

 太宰治という男の本性を垣間見た気がした。肚の読めない男だ。だが、ヨコハマの闇に染まった人間というのはみんなそうだろ?しゃべることの裏に必ず何かある。


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