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 ノエルのほうが三枚は上手だ。セドリックは反論を諦めた。言葉で人を打ち負かすには、人を傷つけてもかまわないという勇気がいる。それと人から傷つけられてもかまわないという勇気と。自分にはどちらもない。

「その様子だとOKのようですね。カップル成立おめでとうございます。むかつきます。いらっとします。熱い濃硫酸を顔にどばどばかけて、二人のきれいな顔を醜く変形させてやりたいです」

 いつものようにノエルは優雅に毒舌を使いこなす。テーブルで泳ぎ着かれた自分たちと違う。セドリックにはノエルが年長の保護者のように見えた。

「ディゴリー、ありがとうございます。休日にホグズミートでデートスポットをセッティングして、これでOKが出なかったらわたしは戦犯扱いでしたよ。勝算はありましたけどね。年頃の男の子なら、ある程度かわいい子に告白されて付き合わないわけがありませんから。そんな都合のいい事態を放っておくほど達観していたら、人類はこんにな増えはしませんよ」
「最悪な言い方だよね」
「『今が最悪の状態と言える間は、まだ最悪の状態ではない』というシェイクスピアの言葉をご存知ですか?」

 悪態をついたって、嫌味で返ってくる。ノエルはごめんの一言もなしにからからと笑うだけだ。ごめんなんて思っていないのだから当然か。白旗をはやく振らせてほしい。

「“ともだち”なんだから、それくらい大目に見て下さいよ」

 大義名分を突きつけられ、セドリックの追求もあっさり終わりになる。そう、自分たちはまぎれもなく、厳密な意味で“ともだち”なのだ。三人は『ともだち同盟』のメンバーなのだから。
 ノエルがおせっかいでよかった。と思う。傍若無人だろうとなんだろうと、ノエルというてこがなければ、自分は動けないままだった。
 なんだろう。自分はノエルに支配されたいんだろうか。そんなことを考えかけて、セドリックは首を振った。自分はチョウの彼氏にならないといけないのだ。立派な彼氏に。
 それしか自分が『ともだち同盟』の一員でいられる方法はないのだ。


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