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「好きなの、付き合って」
「わかった」

 即答でセドリックは答えた。答えるしかなかった。考えさせてくださいなどと言おうものなら斬って捨てられそうな空気が三本の箒にたちこめられていた。チョウの不退転の決意をもって臨んだらしい告白は、セドリックの退路だってふさいでしまっている。承諾した時、魂が体の外に出ていたかもしれない。それくらい実感が沸かない。きっと自分で自分をコントロールできていないせいだ。自分で結論を出してしまったはずなのに、感情はついてこない。うれしいとか、悲しいとか、そういう気持ちが出てこない。大昔の結婚とか純血の家柄の結婚はこんなものだったのかなとセドリックは場違いなことを思った。ある日、年頃の子供に親が縁談が決まったぞと伝えるんだ。子供の気持ちは無視して。けれど、確かに自分の答えはチョウにも言葉として伝わっているのだった。

「ありがとう」

 まるで振られたみたいにチョウは泣き出してうつむく。周囲のテーブルから視線が集まる。その視線たちは何かの権利でもあるように遠慮なくテーブルをつつく。実際、このテーブルでは深刻な戦争が繰り広げられている。しかも戦略もなく、泥沼に陥っている。泣き止んでくれと言えば余計に泣かしてしまいそうで何も言えない。
 セドリックまで泣き出しそうになっていたところに、やっとノエルが外から戻ってきた。「あ、どうでした?」と聞いてきたことから察すれば、外の空気を吸ってくるというものも告白をさせるための方便に過ぎなかったのだろう。

「ノエル、騙したよね」
「騙した?人聞きが悪いですね。両手両足を魔法生物飼育学の教科書ではさんであげましょうか。わたしは『気分が悪いから外の空気を吸ってくる』と言って外に出ただけですが。そんなつまらないことで同盟を破るほどわたしは恥知らずではりませんよ。わたしがウソをつく時は、そうですね、液状の糊をスプーンにとって蜂蜜だと言って舐めさせるぐらいのことはします」


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