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「ねぇ、あの、セドリック。あなたって、好きな子いた?」

 そんなことを言われてもセドリックは口ごもることしかできない。チョウの質問は予想がつかない。そして、どんな質問も答え方一つで運命が変わってしまいそうな危うさがある。

「別に試しているわけではないの。ただ、もし、好きな子がいるのに私に告白されたんだったら、その、災難だったろうなと思って」

 チョウは片手を振って、たいしたことじゃないとアピールする。けれど、どう考えたって、たいしたことだ。初めてチョウに会った時から、この距離感に慣れない。歯に衣着せないというか、すぐに薄皮一枚のところまで接近してくる。

「じゃあ、私のことは好きだった?」

 なんでそんなことばかり聞いてくるんだよ、とセドリックは文句を言いたくなる。セドリックは核心ばかりをつけるチョウの思考回路が分からない。ノエルが死ぬのに何日もかかる拷問器具だとしたら、チョウのは抜き身の刃だ。拳銃の弾のように目の前のものを打ち抜くことしか考えていない。セドリックにはそんな振る舞いはとてもできない。

「もちろん、嫌いじゃなかったけどさ」

 どうやって説明すればいいのだろう。考えれば考えるほど答えは遠のいていく。恋愛っていう意味では意識してはなかった。けれど、それはチョウに魅力が無いということではなくて、ずっと“ともだち”でいたかったからなのだ。同盟相手として二人に縋っていたかっただけなのだ。その二人に嫌われたら、自分という駒はチェス盤の上から退場するしかない。そのことを正確に伝えないといけないのに、上手く言葉にならない。

「わかってる。わかってる。なんで告白してきたんだって顔してるもの」
「ちょっと待って。確かにそうだったかもしれないけど、チョウに興味がなかったわけじゃなくて」

 チョウのペースにセドリックはなかなか追いつくことができない。半分も言い終わらないうちにチョウの言葉が投入されて、セドリックの気持ちはウソのままチョウに届く。こんな繰り返しでコミュニケーションは誤解の大海原に乗り出してしまう。

「わかっているのよ、セドリックはノエルのことが好きだったのでしょう。そうでないとあんなに仲良くしてないでしょう」


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