24


「ここで死んだ人間にそれを聞くんですね。ディゴリーらしくありません。でも、まあ答えてあげないこともないですよ。理由として言葉にできるのは、人間関係が上手くいきすぎたからです。3人でいることが、ちょうどよかったんです。魔女にできるのはチョウとディゴリーを失うか、チョウとディゴリーがダメになるまで奪い尽くすかのどちらかなんです。だからわたしは死にました」

 言葉にできるものだけ。きっと、言葉では表しきれないたくさんの何かが、ノエルを自殺においやったのだろう。この天文台にはきっと何かがあるのだ。ノエルとセドリックが人の死に触れるような何かが。

(実際、ノエルはここで死んでしまったのだから。)

「手を握って下さい」

 セドリックはまずノエルの手に自分の手を重ねてから、ゆっくりと指を指の間にはさんだ。どちらが先に力を加えたかわからないくらい、それは自然にできた。久しぶりのノエルの手は死人になったせいか余計に冷たく感じられた。

「もし、わたしが人殺しだったら、こんなふうに手をあたためてくれなくなりますか?」

 セドリックはその言葉のせいでノエルの手が冷えた気がした。ノエルが人殺しでも聖人でもきっとこの手は冷たいままだ。血塗られていても、泥だらけでも、爪がはがれても、ノエルの手はきっと冷えている。自分は今、この手をあたためられているだろうか。明日からひとりぼっちになるノエルは、誰にこの手をあたためてもらうのだろう?

「変なことばかり考えてると、ディゴリーのこと嫌いになっちゃいますよ」

 びっくりしてノエルのほうを見ると、テンプレートのような小ばかにした顔があった。ノエルはいつだってセドリックで遊ぶ。セドリックはいつだってノエルのおもちゃだ。

「だって、わたしはディゴリーのことを嫌いになる余地があるくらい大好きなんですから。九割水の入ったコップは満たすよりこぼすほうが簡単なんですよ」

 セドリックは何も言わなかった。穴が開けばノエルはそこに必ず毒を塗り込む。だから、このまま黙っているほうがいい。どうせ何を言ったって自分はノエルを泣かすことなんてできないのだ。その真意はノエルにも届いたのか、ノエルも話題を変えてくれた。


- 24 -

*前次#


ともだち同盟 トップページへ