いつもは騒がしい場所が珍しく静寂に包まれている。付近に誰もいないことを確認すると、ゆっくりと口を開いた
「最近の”鬼”の様子はどうだ」
険しい顔をして、妖良組総大将はカラスに問うた
「はい、最近も特に変わった様子は見受けられません。先日の四国との一件でも姿は確認できましたが、双方に関わることもなく今までのように観察しているだけのようでした」
ー先日の一件。
四国との戦いを終えて再び騒がしい日常が戻ったと思われていた。
妖良組総大将は最後のその時まで四国へ出向いていたのだが、帰ってきてから考え込むことが増えているように思う。
ここ数年警戒している”鬼”の存在…
警戒はしているものの、人間に対しても妖に対しても害を加えることは一切行っていないため大きく行動には出ずに様子を見ているだけに留めていたのだが、先日の四国の件以降から”鬼”に対してなぜか総大将は警戒をより強めているのだ。
「カラスよ、”鬼”が現れるようになってどれほど経つ?」
重々しく口を開いた総大将はカラスに言葉を投げかけた
「−−−正確には把握できておりませんが。我々が初めて”鬼”について認知致したのは、リクオ様が初めて覚醒された時でございます。」
そう、”鬼”が現れるようになって何年も経つのだ。
それなのに妖良組は一向にその存在を掴めていない。
「旧鼠、牛鬼、四国…全て奴は姿を見せている。が、様子を見てはすぐに姿を消しておる。現れるのは決まって”リクオ”に関わるときだけだ。カラスよ、これから先厳重に警戒しろ…四国で狸に聞いた、ただの噂話だ。確証はねえが…」
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四国にて、隠神刑部狸のもとを訪れていたぬらりひょんは
用は済んだ、リクオのもとに行くかと隠神刑部狸へ背を向けた。
その背に向かって、隠神刑部狸は閉じていた口を開く
「なぁ…ぬらりひょんよ、馬鹿息子の事でこんなこと言ってる場合じゃねえかもしれんがな。耳に入れておきてぇ話がある。
おめぇ…最近”大嶽丸”の話は聞いたか」
ぬらりひょんはその名に、隠神刑部狸の顔を見た
「”大嶽丸”…だと…?今更鬼神がなんだってんだ」
-------大嶽丸
日本で畏れられた日本三大妖怪の一角に数えられる、日本最強の鬼
ただの鬼ではなく、悪魔・鬼人とも呼ばれた”鬼人魔王”
「そもそも”大嶽丸”は今は亡き者。とんだ昔話をするなんて何のつもりだ」
今になって実は生きていて、畏れを集めるなんて言い出したとでも言うつもりか。俺もそんなに暇じゃねぇ、と言いつつもどうやら”鬼”の話に敏感になっているようだ。その先を促すようにぬらりひょんは視線を逸らさなかった。
妖良組で最近”鬼”について嗅ぎまわってるらしいじゃねぇか、と静かに息を吐いた隠神刑部狸は、ここからが本題だと続けた
「”大嶽丸”には子供がいた。経緯は知らねぇがそいつは人とも妖とも関係を断って鈴鹿山にいたって話だ。話してぇのはこれが本題だ。‥その子供が喰われて”いた”。」
----喰われて”いた”
そう、気付いた時には喰われてから何年か経っていた後だった。
いつ喰われたのか詳しくは分からないが、おそらく喰われてから10年も経っていない
これは早急に調べる必要がありそうだ、とぬらりひょんは唸るしかなかった。