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亡くなったはずのあの人の瞳が私を捉えて手を差し伸べてくれる。あぁ、やっと私もそちらに行けるのですね。









中高一貫キメツ学園
この学校事務に応募したのはブラック企業で働いていて家に帰って寝てまた仕事に行く、そんな日々の繰り返しに嫌気が刺してしまい今度こそ定時で終わる仕事に就きたい!出来れば暗くなる前に帰りたい!その時にみつけたのがキメツ学園、風の噂で教師がクセ者揃いだと聞き何故か興味をそそられて応募した。
そう、ただ転職したかったのだ


「今日からよろしくお願いします。」

面接後、軽い適性検査があり無事合格出来た私は
この春からこのキメツ学園の学校事務員になる。
「よろしくね、まずは軽く学校案内した後に職員室に挨拶に行って月間スケジュールの説明させてもらうわね!」
ニコニコ顔の恰幅の良い先輩事務員さんと挨拶を交わす、職場の雰囲気は良さそうだし幸先は良さそう。


「学校の案内はこんな感じかな。最後に職員室に挨拶行くけど何か質問ある?」
「いえ、大丈夫です。丁寧なご説明ありがとうございます。」
「あらあらぁ!いいのよ〜!可愛い子が入ってくれて嬉しいわ!」

人の良さそうな笑顔に安心する。学校事務員がずっと一人だったらしく仕事量だけではなく同僚が居ないことを寂しく思っていたらしい先輩はこれからニ人になるということで終始ご機嫌で、学校案内中に「お菓子持ってきたから昼休み後に一緒に食べようね!」と言ってくれる何処か憎めない先輩のおかげですっかり気が緩んでいった。

「じゃあ最後に職員室に挨拶にいきましょうね」
「あ、はい!」

「(き、緊張する!)」

緩んでいた気持ちが引き締まる。何故か面接のときより緊張する、クセ者揃いと噂されるキメツ学園の教師だ。
どんな先生が待ち受けているのだろうか緊張と期待感で職員室の扉を開ける先輩の後に続く

なんだろう、この美男美女集団は・・・
名前は唖然とする、待ち受けていたのは容姿の整った先生達。本当に今まで事務員決まらなかったの?これは確実に人気職のはず
髪色が派手、胸元がはだけていて傷だらけ、首に蛇を巻いている、宝石を身に付けている、鼓を肩に背負っている等々確かにクセ者とは思うがとんでもない、美男美女揃い。

「不死川先生、この子が今日から事務員さんになりました苗字名前さんです。何かと用事を頼むことになるのでよろしくお願いしますね」
「苗字名前です、頑張りますのでよろしくお願いします!」
「不死川だ、よろしくなァ」
控えめに言ってもとても傷とか胸元とか堅気の人とは思えないが顔は少し童顔で整っている。
先輩は不死川先生に用事があったようでその間に他の先生にも軽く挨拶して回ることにした。


最初からずっと気になる先生が居た黄色と赤の綺麗な髪の毛、何でも見透かしてしまうのではないかと思うアーモンド型の大きな目、腰まわりは細いが鍛え上げられた身体
気になってしかたがない、あんなに特徴的な人を忘れるわけないが何処かで会ったことがあるような懐かしいと同時にとても哀しい気持ちにもなる。感情の整理がつかないままその御方への挨拶挨拶に向かう。

「あのー…」
「なんだ!」
「えと…苗字名前です、今日から事務員させて頂きます。よろしくお願いします。」
「そうか!俺は煉獄杏寿郎だ、科目は歴史、電子機器が少々苦手なもので何かと面倒をかけるかもしれん。よろしく頼む!」

ビクリと肩が揺れてしまう、その大きな声に吃驚してしまったが不思議と心が暖かくなった
私この人のこと知っている。何故思い出せないのだろう。

「煉獄先生」
「どうした!」
「私たちどこかで会ったことがありませんか?」
「………否!ないな!君の名前も初耳だし、面識も無い、この話はこれでお終いだな!」
「えぇ?!」

「ーーブハッ!」

煉獄先生の唐突な会話の終了に戸惑っていると急に後ろから笑い声が聞こえてきた
「大人しそうな顔してナンパの決まり文句かよ、そんなんじゃ煉獄は落ちねぇぞ」
「宇髄先生…?」

先ほど挨拶したばかりの宇髄先生がとても楽しそうな顔で近づいてきたと思えば腕を肩に回されて笑いかけられた、その整った容姿にドキドキしてしまう

「宇髄、女性にみだりに触れるものではないぞ」
「あ、あの、腕を…」
「ん?派手に顔が真っ赤だな、まぁ俺の容姿は派手に美しいからな」

平々凡々な人生を歩んできた私には刺激が強すぎる、真っ赤な顔を見られたくなくて顔を下に向けるとすぐ肩が軽くなる。煉獄先生が宇髄先生の手首を掴んでどけてくれたのだ

「嫌がってるぞ、やめるんだ」
「おいおい、なに怒ってんだよ煉獄」

今日初めて会ったが宇髄先生が面白がっているのは一目瞭然、だけど正義感が故か煉獄先生が助けてくれた事に胸がときめいてしまう、先程よりも顔だけじゃなく身体が熱くなるのを感じるこれは反則だ。

幸先の良い予感はしていたけど、初日で好きな人が出来るなんて思いもしなかった














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痺莫