裡側 捌






「杏寿郎、君は本当に凄い子だ。これからは柱として鬼殺隊を支えてくれるかい?」
「はい!」
「ああ、それとね・・・・」




炎柱の羽織を肩に掛け煉獄家に着くと
彼女は一番に顔をだし涙を流した、その綺麗な涙を拭い父上へ炎柱になったことの報告へ向かう。



















「これからは弱き人を助ける強き者になる、その決意は揺るがないものだ。それでも愛を誓ってくれるか」
「はい、誓います」

俺と名前は正真正銘の夫婦になった。
祝言を挙げたのは柱になってすぐで人前式は行わず簡易的に済ませ、その日も柱としての任務に向かわなければならなくなり彼女のことを考えると申し訳が無くはあるが火急をようする他ならない事情もあったので仕方がなかった。
でないとあの親類とやらの三男坊がどんな暴挙に出るかわからなかったからだ、愛が深いのは良いことではあるが名前に対してなのは御免被りたいところ。







『落ち着いたら必ず君を抱くと約束する』

そう申し出たが俺は今宇髄の任務の付き添いで遊郭に来ている、

上弦の鬼が潜伏していると予想されているがもう何年も尻尾を出されては隠されていて、何度も調査に入っていると聞き場所が場所だけに気が進まぬがこれも任務、潜入捜査に就いているというわけだ。
俺も目の前の遊女から情報をとしていたが、どうもこういった周りくどいのは苦手で会話がずれていった。

「手つきは優しく気遣い、行為は雄々しくでございますよ。」

心に決めた女が居るので馴染みになるつもりは無いと素直に申し出ると。
目の前の太夫は「珍しい殿方でありんすね」と笑い、お節介だとは思いますがと言いながらそのまぐわりにつて指南してくれた。男に聞くよりは意義があるだろうと思い耳を傾けていたが、内容は想像よりも遥かに生々しく名前の乱れる姿を想像し許されぬ事をしているような気分になった。

「その婦女が羨ましい限りでございます、殿方に一筋に想われるということは女としてとても幸せな人生でしょう」

そう呟くとその太夫は寂しげに瞳を俯かせた、何もしてやれる事は無いが君にもそのような相手が現れるだろうと申すとまた寂しげに笑う。
想像することは容易くは無いが過酷な環境ではあるのだろう、せめて鬼の恐怖からは救ってやりたいと思ったがここは宇髄の担当であるし彼ならばきっと彼女たちを救ってくれる。

「幸せが何かとは個人により異なるだろう、胸を張って生きていれば幸せは訪れる。誇りを忘れずに努めるといい。」

泣いているのだろうか、でもその涙を拭ってやるのはきっと己が役目では無いだろうと思い、見て見ぬふりをした。










・・・











柱になった際にお館様からの提案でお祝いに炎柱邸を頂くことになった。古くなった主屋ではあったが一ヶ月も経てば綺麗に修繕されて住めるようになったので、そろそろ名前にも話しておくかと生家に向かう。
あまり時間も無いが、名前の母のこともあるだろうし住めるかどうか確認しておく必要がある。


「名前!千寿郎!戻ったぞ!!」

久しぶりに顔を出すと二人共に顔を輝かせた。

「杏寿郎さん、おかえりなさいませ!」
「兄上、おかえりなさい!」

「うむ、二人共元気そうでなによりだ!」



炎柱邸のことを報告すると、最初こそ驚いてはいたが俺とそこに住んでくれると約束してくれた。
時間があまりなくゆっくりなど話が出来ないままにまた次の任務に向かう、次に会う時には彼女と二人きりで過ごせるだろうか。
少しだけ寂しい気持ちになったがその想いさえも強さに変えなくてはと鬼に刃を向ける日々が続いた。






「えらくご機嫌のようだな!」

またしばらく会えない日々が続き柱になってから初めての担当地区での非番の日。足早に新しい炎柱邸に向かうと彼女の鼻歌のような声が聞こえてきた、その姿が愛おしくて声をかける。


今宵はもっと愛おしい声が聞けるかもしれないと胸が高鳴った。





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痺莫