ねぇ、振り向いて。 10.5







『苗字名前は不死川先生が好きらしい』

たまに話す程度の組の女子
彼女について知っていることなど所詮はその噂程度のことで、先生を好きだとか夢見少女かとは思っていた。


『あれ、矢琶羽君も勉強?』

『わ、笑わないでよ!お昼も軽食だったからお腹空いちゃって…』

『矢琶羽君はさ、丸ちゃんの事を女の子として好きだったりするの?』


二人で話すのはこの日が初めてだったか、彼女は思ってるよりも何倍も“夢見がちな純粋な女の子”で心配にもなった。

純粋で可愛らしくもあるこの女子に協力してやろうとただそれだけだったのにのう…
気付けばわずか数日で彼女の沼に堕ちていた。


純粋で素直で期待した反応以上に可愛らしく染まる頬、優しく思いやりのある性格。仲良くなればどこまでも心を許してくれる彼女を好きにならない理由など無かった。
今まで男が寄ってこなかったのが不思議なぐらいに。それもまぁあの先生の牽制に違いない。
学校では何かと素気なく名前に接しているが、蓋を開けてみれば異様に固執している。あれで両想いではないのが理解できぬ。
案外世間の目を気にする性質なのか、それとも己の想いに気付いていないのか。十中八九、後者じゃな…なんとも可哀想な男ぞ





カフェーで勉強しながらそんな事を考えていると外に不死川先生が居るのが見えた。あまりに早い登場になんとなく釈然としない気分になり、悪性が働き名前の頭に自分の頭を近づけた。

ふわりと優しい匂いがする、彼女は儂が近付いていることに気付いていないようじゃ
ーーーこれは、あの不死川先生が心配するのもわかる気がするのう

どかどかと近付くその存在に軽くため息が出るが戦う準備は出来ている。




儂が勝ちをとれる可能性は極めて低い
精々お主は惚れられていると高見の見物でもするがよい、隙が出ればそこを突くまで。

名前の想いにとことん寄り添ってやろうと彼女にだけ微笑みを向けた