ねぇ、振り向いて。 17















実弥も私の名前を呼ぶとゆっくりとこっちに近づいてきた。久し振りに目が合い、我慢していた気持ちが溢れ出してしまいそうだ。仲直り、出来るだろうか…そんな不安は顔を見たら吹き飛んでしまい私も小走りに実弥に駆け寄った。

「試験前にお詣りかァ?」
「うん、実弥も生徒達の祈願に来たの?」

私の質問にしばらく黙ると、切なそうな顔をしながら私の頭にポンポンと手を置いた。その行為でさえも懐かしく感じてしまい、泣き虫な私が涙を堪えることなんて…出来るはずが無かった。

「テメェの受験祈願に決まってるだろォ」
「さっ、さねみ…!」
「名前は頑張った、大丈夫だろォ」

涙をぼろぼろと流しながら大好きな実弥を見上げると少しだけ笑っていた、甘えるように洋服の裾を掴むとギュウっと抱きしめられる。
抱きついたことはあるが、抱きしめられるのは幼少期以来かもしれない…実弥の匂いが心地良くて、大好きで、私も抱きしめ返した。

「突き放して、悪かったァ。これ以上は名前の邪魔になっちまうと思ったんだ」
「ううんっ、私も怒ってごめんね」

長年一緒に居たからか、それ以上の言葉はいらなくて
実弥は私が満足するまで抱きしめてくれた。




穏やかな気持ちのまま合格祈願をし神社を出る。

「送ってやりてェが、これから学校にいかなきゃならねェ」
「受験するのは私だけじゃないし…しょうがないよ」
「あァ、じゃあな。終わったら連絡入れろよ」

…実弥は過保護だったんだな。
1回離れてみるとよくわかる、矢琶羽君のことも受験を控えている私を心配しての事だろう。受験するのはどっちなんだか、そう思わされるぐらいには実弥の瞳は揺れていた。

大好きな気持ちを今度は大切に胸に留め、神社を後にする。
ーーー神様、有難う御座います。頑張ってきます!
そう心で唱えるとスカートが揺れるぐらいの大きな風がふいた。恋愛の神様か受験の神様かはわからないが神風が後押しをしてくれるような気がした。































・・・

























「終わったーーーー!」

二日間の日程を経て、センター試験が終わった。
冬の空は真っ暗だが澄んだ空気が気持ちがいい、私は実弥という先生が居たから塾にも通ってないため終わってからは直帰だ。同じく直帰という矢琶羽君と合流して一緒に帰路に着いていた。

「結果次第だが同い大学に入れるとよいな」
「そうだね、私は第一志望が無理そうなら浪人かな」
「…驚いた、一択だったのか」
「あれ、言ってなかったっけ?」
「あくまで地元の国公立、かっこいいのう」

そう言えば聞こえはいいが、実弥と同じ大学に行きたい。地元にいたい。その二つが上手く合致しただけ…安直すぎて苦笑いする。決めたのは高校一年の頃だけど、ここ最近まで本当に実弥のことしか頭になかったんだな

大学に行けばもっと世界は広がるだろうか
年齢は無理だけど実弥の見ている世界をやっと見れるようになる、近づけると思えば凄くわくわくした。