あれ。目が覚めたぞ。

 これは夢かな。現実かな。もうどちらでもいいけれど、夢ならばどの夢かは確認しておかないと。

 携帯電話を見てみると、康太からメールが入っていた。

 ――今日は二人きりだから安心してくれ。

 これは、僕の見たかった現実だ。

 心が浮き足立つ。ああ、早く会いたい。

 いつもより念入りに身支度をする。メールで着いたと連絡を受けて、家を出ると、そこには康太一人の姿があった。

 今日も綺麗に微笑んでいる。すごい、その熱の篭った視線が、胸をきゅるりと締め付けてくる。

「ごめん、待った?」

「いや、今いりゃーたところだし。今日も可愛いなおみゃあ」

 ……こてこての名古屋弁がうまくなってきている気がする。僕の為に一生懸命練習してくれたのかと思うと、嬉しくて飛び上がってしまいそう。

「こ、康太こそあの、今日も綺麗だね」

 顔が熱い。きっと真っ赤だ。

「照れくせゃーことを言うな」

 頬を掻きながらそっぽを向いてゆく。か、可愛い。男らしくて、でも可愛くて、そんでもって綺麗で……ああ、こんな人が僕の彼氏だなんて。

 もっと、もっと見たい。もっと、ほら、眼球に焼き付けないと。

 でないと、なんでか、見ているものが、どうして、こっちも、水の中にいるみたいに、揺れて見えるの?

 電柱、何でぐにゃぐにゃなの?

 嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘に決まっている。これは夢をまだ引きずっているからに違いない。そうでしょう?

「康太、好き? 僕が好き?」

 怖くなって、腕に縋り付く。

「好きに決まってんだがや? おみゃあが好きだがよ」

 怖い。凄く怖いよ。康太の、綺麗な顔が、その輪郭が歪んで見えて。

「ねぇ、どこが好き? どこを好きになったの?」

 康太が歩き出した。僕も、腕に縋り付いたまま横に並ぶ。

「テニス部の勧誘を受けていた時、さ。先輩の凄い形相に怯えながらも圭は、逃げなかっが? 何とか断ろうと必死になっていたその真摯な姿勢が眩しくて」

 真摯な、姿勢……って、僕は……僕は、こんななのに。本当は、この中身はこんななのに?

- 29 -

*前次#


ページ:



ALICE+