また目が覚めた。もう起きたくない。いや、もう眠りたくない。

 それなのにどうして人間は睡眠を必要とするの? 疲れた脳を癒すため? むしろ、この状態の方が疲れてしまう。

 今日はどっちなのかな。もう、嫌な夢は、怖い現実は嫌だ。

 震える手で携帯電話を握り締める。

 ああ、振動した。メールだ。康太からの……

 ――お前、俺の彼女に何を言ったんだ。しばらく顔も見たくないから話しかけるな、とか……一番見たくなかった夢だ。

 どうしてこんなものを見ないといけないの。何で?

 でも、いいや。どうせ夢だもの。それならもう何をしても構わないでしょう。鳥井さんが康太に告げ口をしたのだったら、もっと、もっと、彼女に酷い態度を取ってやる。

 歯を噛み締めすぎて奥歯がじんっと痺れた。

 のろのろと身支度を終える。ここは水槽の中だ。

 金魚のように綺麗な尾びれなんて、僕にはないけれど。

 家の外に出たら――おかしいな。もう、空が赤い。

 赤い……違う、これは僕の視界が赤いんだ。だって道行くサラリーマンは、朝用と宣伝されている缶コーヒーを手にしている。自転車で、僕の横を通り過ぎた学生はよく朝にすれ違う子。

 ほぅら、やっぱりこっちが夢で正しいんじゃあないか。

 鳥井さんに対する憎しみが、どんどん、僕の中から掘り起こされてゆく。

 シャベルでそこからすくい出された土は、誰を埋めるのかな。

 夢とわかっていても、学校に行くのは億劫だ。でも、康太の顔が見たいから。どうしても見たいから。

 そこにどんな表情が張り付いていても構わない。だってここは僕の中の世界だもの。

 告白をしてやるんだ。そうしたらきっと、康太だってわかってくれる。今まで僕が、どんな風に、こんな夢を見続けていたのかを察してくれる。そうに違いないし、そうでなくてはならない。

 夢はコントロールできるだなんて、どこの馬鹿が言ったのか。そんなもの、夢だって気づいてからでないと無理だろうし、まどろんでいる脳をうまく操れやしないよ。

 ただ、たぶん今なら――少しは期待を持てるはず。

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