――胸が、冷えた。
何これ。一体どういうフラグなの。
まさか、彼方は僕が好きとか? 何で? どうして?
康太が僕を好きな夢、いいや、現実は一つだけなのに。彼方が僕を好きな夢がこれで二つになってしまうの?
いや、違う。違う、違う! そんなわけない。絶対に違う。
夢に近い方が現実かもしれないなんて。違うよ。絶対に認めない。
僕と彼方が付き合っている夢が、本当の今だなんてそんなの許せない。許さない。
康太が好きなんだ。触れたい。腕に、指先に、唇に触れたい。
伝わる体温を感じたいんだ。そこに確かな愛があるって実感したい。
「ほれ、俺に愚痴を吐いてみ?」
ゆっくりと顔を上げる。その、お洒落な外見を見つめる。着崩した制服から覗く鎖骨が妙に華奢だ。
「放っておいて」
短く吐き捨て席に座る。机に乗っていたお尻が退いた。
「まぁ、落ち着いたらまた話そうや」
と、ひらひら手を振りながら友人らの輪に入ってゆく。
康太に視線を向けてみた。
こっち、見ないんだね。
やだ、嫌だ。康太、ねぇ。僕は、ここにいる。
康太の彼氏はここにいるよ。康太の好きな人はここにいるよ。
キスした相手はここにいるよ。抱きしめた相手はここにいるよ。
見ているもの。歪んでいる。
ここは。水の。中だから。
僕は、尾ひれがない金魚。
泳ぐことだって満足にできやしない。
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